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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎


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第四話 一つ目の失敗

 失敗した経験が大きな財産になると誰かが言っていたが、今回の人生で挽回することが不可能な失敗を財産と呼べるほどまー君の心は成熟していなかった。


「確認させてもらうけど、俺と君たち二人は永久契約を結んでオプションもつけてるってことだよね?」

「そうだよ。私たちはまー君が死ぬまで専属契約を結んでるよ」

「死ななくても強くてニューゲームを選んだら契約は破棄されたことになっちゃうけどね」

「少なくとも俺はそのどちらも選ぶつもりはないんだけど、そう言うことを言ってる場合ではないってことでいいのかな?」

「うん、そうなっちゃうね。契約はもう結ばれているからすごく心苦しいんだけどね」

「私もうまなちゃんも今すぐにでも大丈夫なくらい準備をしてきたんだけど、今すぐってわけにはいかなくなっちゃってるんだよね」

「俺が未成年だってことはそんなにダメなことなの?」

「当然だよ」

「当たり前でしょ」


 サキュバス娼館にとって客との契約は絶対守らなければいけないものであり、契約を破ることは決して許されるものではない。それなりにペナルティが課せられる場合もあったりするのだ。

 だが、重要な契約よりも優先すべきことがある。

 それは、この世界に施行されている法律を守らなければいけないという事なのだ。


「俺が未成年なのはこの世界に生まれてまだ十六年しかたってないってだけの話であって、今までいろんな人生を歩んできてるんでトータルしたら三百年くらいにはなると思うんだけど、それでもダメなのかな?」

「ダメに決まってるじゃない。まー君がどんな人生を歩んできたのかわからないけど、今ここにいるまー君は十六歳で間違いないんだからね」

「確かにまー君が 再挑戦者(リプレイヤー)だから色々な人生経験を重ねているんだろうなってのはわかるんだけど、私たちにはまー君がどんな人生を歩んできたか確認する手段が無いんだよね」

「でも、こんなに魔力だって肉体だって強いんだよ。ちょっとくらいごまかしてくれてもいいんじゃないかな?」


 サキュバスのうまなちゃんとイザーちゃんは困った子だという表情を浮かべたまままー君を見ていたのだが、そっと取り出した液晶タブレットに今まで未成年者とことに及んでしまったサキュバスの末路を示した動画を見せることにした。

 これを見ればごまかしてほしいなんて思うことはないだろうと考えたからだ。

 聡明なまー君は二人の思いをくみ取ってわがままを言わないと心に誓ったのだ。


「未成年をしただけで同じ娼館に所属しているサキュバス全員が殺されるってのはやりすぎだと思うんだけど、これってみんな納得してることなの?」

「まあ、本音を言えば納得なんてしてないよね。間違って未成年を相手にすることはあるかもしれないから強く言えないし」

「だよね。うまなちゃんは過去に何人か未成年の子を美味しくいただいたことあるもんね」

「あの時は私も知らなかったからね。知らなかったなら仕方ないってことにしてもらえたし」

「それだったらさ、俺のことも知らなかったって言って一回だけでもどうかな?」


 聡明なまー君もこれだけ魅力的なサキュバス二人を前にしては欲望を抑えることは出来ないようだ。強くてニューゲームを前回した時であれば多少は我慢できたのかもしれないが、今回に限っては今までの積み重ねてきた苦労が報われるという状況なのだ。

 そんな時に我慢が出来るはずがない。


 だが、うまなちゃんとイザーちゃんはいたって冷静だった。


「私たちもそうしてあげたいのはやまやまなんだけど、まー君の身分証も確認しちゃったし契約書のデータももう送っちゃってるんだよね」

「気持ちはわかるけど、そんなに悲しい顔をしてもどうすることも出来ないんだよ。私たち二人だけが罰せられるならまだしも、三万人の仲間がみんな処刑されちゃうってのは耐えられないかな」

「だから、ごめんね」


 何度も楽しめるから若い方が良いと思ったまー君は十六歳の誕生日に冒険に出てからすぐにサキュバス娼館と契約を結んだのだ。

 未成年とすることが出来ないのであれば契約を結ばなければいいのにと思ったのだが、サキュバス娼館側としてもまー君ほどの強大な魔力保有者との永久契約を結ぶことが出来る機会をみすみす見逃すはずはない。

 そもそも、サキュバス娼館としてもまー君が未成年であるのに契約を結ぼうとしたのは全て理解したうえでのことだと思っていたのだ。

 今回のミスに関してサキュバス娼館を責めることは出来ないし、当然永久契約を結んだうまなちゃんとイザーちゃんの事を責めることも出来ない。そうなると、まー君は自分のことを責めるしかないのだが、自分だけを責める気にはなれなかった。誰かのせいにしたいところではあるが、その責任を押し付ける誰かが見つからなかった。


「じゃ、じゃ、じゃあ、こういうのはどうかな? 俺が今から魔王を倒して強くてニューゲームをするんでもう一度契約しよう。それだったら問題ないよね?」

「私たちとしてはそうしてもらってもいいんだけど、そうなるとまー君側の契約不履行になっちゃって私たちを指名することは難しくなっちゃうかも」

「永久契約は最低でも満三年以上経たないと解約時に罰則が設けられているんだよね。今回の場合は、永久契約の期間がおよそ七十年と計算されているんでその三倍経たないと指名できないことになるかな」

「その時にはもううまなちゃんは新人サキュバスじゃなくなっちゃってるね」

「二人ともベテランになっちゃうよ」

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