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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎
人魔共闘の章

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第五話 天才魔法少女かいり登場

 社会の敵と認定されたまー君ではあったが、生活に関しては今までと何一つ変わらない平穏な日常を送ることが出来ていた。

 月曜から金曜の午前九時から午後二時の間だけ戦闘を挑むことが可能で、午後八時から深夜零時までの時間に限って誘惑することが可能になっていたのだ。これは、まー君と戦ってみたいと思うものがあまりにも多かったという事と、誘惑して童貞を奪ってしまおうと考える者がそれなりにいた結果なのだ。

 一対一の戦いを望む者が割合的には多かったのだが、複数人でチームを組んで戦うもの、複数人のチームが連合を組んで戦いを挑む場合もあった。しかし、まー君はもともと一人で魔王軍と戦っていたという事もあって、一対多の戦いに慣れていたので戦闘時間としては複数人で挑む方が短くなっている傾向にあった。そのため、まー君と戦うときはタイマンが一番良いのではないかという話が広まっていった。

 夜の戦いに関してはまー君はまんざらでもないと言った感じを出しつつも、女性が近付くと恐ろしいほどの拒否感を前面に出して圧力をかけていたのだ。過去に何度も女性経験があるとはいえ、今の肉体では全くの未経験だし、そんな何も知らない綺麗な体のままで史上最高ランクの評価を得ているサキュバスのイザーちゃんとうまなちゃんのテクニックを堪能したいという気持ちの方が強く出ていたのだ。

 でも、心のどこかでは男の場合は経験値を高めた方が気持ちよくなれるんじゃないかという思いもくすぶってはいたのであった。


 まー君は休憩無しで戦闘を繰り返していたのだが、本気を出さずとも負けることはなく、圧倒的な実力差を見せつけていた。あまりにも力の差がありすぎたため、本気で勝とうと思うものはいなくなり、戦い自体をキャンセルするものも数名現れていた。

 キャンセルをしたところでもうまー君と二度と戦えなくなるという事はなく、順番が遠くなるというだけの話で、一か月も戦いを繰り返しているとキャンセルだけで一日が終わるという日もあったりしたのだ。

 そんな中、予定よりも二週間ほど早く戦えることになった小柄な少女がまー君の前に堂々と立っていた。

 男性の平均くらいの身長のまー君の肩よりも少しだけ頭が出ているくらいの身長の少女。じっと見つめてくるその少女の視線を正面から受け止めるまー君。無言のまましばらく見つめあった二人はどちらともなく視線を逸らしていた。これは、相手のことを恐れたというわけではなく、単純に男女が見つめあって照れてしまっただけなのだ。身長的には子供と大人のようにも見えるのだが、こうして正面から黙って見つめあうのはなかなかに気恥ずかしいものがあるらしい。ましてや、衆人環視の中で見つめあうというのは想像しているよりも恥ずかしい気持ちになってしまうようだ。


「ちょっと、夜の部は午後八時からって聞いてないの?」

「まー君もそんなに真剣に見つめないでよ」


 永久契約中とはいえ、未成年のまー君と何もすることが出来ないサキュバスのうまなちゃんとイザーちゃんは暇を潰すという事もかねて一日中まー君のことを観察していた。一日中という事で、昼間の戦いだけではなく夜の戦いも観察していたのだが、まー君のことを誘惑して童貞を奪おうとする姿を超一流のサキュバスに見られるのは昼間の戦いよりも精神的につらいと話題にもなっていた。

 そんなこともあって、昼間でも誘惑しようとするものが時々やってくるので、小柄な少女もそんな中の一人だと勘違いしてしまったのだ。


「違います。私はまー君を誘惑して童貞を奪おうなんて思ってません。そんな事は私の仕事じゃないです。私の仕事は、この手と足でまー君をぶっ倒すことです」


 うまなちゃんとイザーちゃんに向かって声高々に宣言をした少女はまー君に背を向けると演武を始めた。

 その演武は全ての行動が繋がっているかのようになめらかで、一瞬の隙もない完璧なものであった。それを見た観客は,まー君をぶっ倒すと宣言するだけのことはあると認めたものの、その攻撃の全てが超接近戦でしか使えないような短いリーチしかなかった。小柄な少女なので手足も短いので仕方ないとは思うのだが、体重もまー君の半分くらいしかなさそうに見えるので攻撃が通用するとは誰一人として思っていなかった。


「どうですか、私のこの連続技を見て恐れを感じたでしょう?」


 よどみなく流れるように攻撃を紡いだ完璧な演武ではあったが、さすがに疲れてしまったのか少女は肩で息をしていた。


「恐れは特に感じてないけど、大丈夫?」

「大丈夫って、何がですか?」

「いや、そんなに疲れてるなら順番を変えてもらおうか?」

「何でですか。そんなに疲れてるように見えますか?」

「うん、すごく疲れているように見える。ほら、肩で息をするだけじゃなく膝に手を当てて今にも座って休みたそうに見えるでしょ。それに、君の体力ほとんど残ってないように見えるし」


「私にもあなたは疲れているように見えるよ。演武は凄くきれいだって見とれちゃったけど、そんなに体力使うんだったらやらないで本番にとっておいた方が良かったんじゃないかな?」

「そうだよね。そんなに疲れてるんだったら、まー君の言っている通りに順番を変えてもらったらいいよ。今日の最後の相手にしてもらうといいんじゃないかな?」


 まー君とうまなちゃんとイザーちゃんだけではなく、戦いを仕切っている零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)も観客たちもここは順番を変えてもらった方が良いと本気で思っていた。

 少し休めば大丈夫だろうと考えていた少女ではあったが、これだけ多くの人に見られる中での演武にはいつも以上のストレスがかかってしまっていたのか疲労度は今までにないくらい高いものであった。

 結論として、本日最後の戦闘相手にしてもらうという事を受け入れたのであった。


「じゃあ、日本魔法連合協会代表理事でありまー君の戦いの責任者でもあるこの俺零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)が戦闘順を変えることを承認する。えっと、名前を教えてもらってもいいかな?」

「ちょっと、私の名前を知らないって言うの?」

「いや、知ってはいるけど確認のためにお願いします。これも規則なんで」


「規則なら仕方ないわね。良いわ、私の名前を教えてあげる。私の名は“かいり”。地元では天才魔法少女と呼ばれていたセクシーなお姉さんよ!!」


 天才魔法少女と呼ばれたのに何で演武をしたのだろうという疑問もあったが、セクシーなお姉さんという事にどんな反応をすればいいのかわからない一同であった。

 ただ、自分でセクシーというだけあって女性が憧れるようなスタイルではあるのだが、それを認めてはいけないような危うさもあったのだ。

 大丈夫だとは思うのだけれど、万が一かいりが未成年だったら危ないと思うどんな時でも法令順守なうまなちゃんとイザーちゃんであった。

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