第四話 抜け道
サキュバスたちにとってまー君の童貞を奪うことはそれほど難しい事ではないと思われるのだが、この世界にはサキュバスたちが守らなくてはいけない法律が存在している。それを無視して行為に及んだとしたら、その責任は本人だけにとどまらず全ての関係者にも降りかかってしまうのだ。
どんなにイケイケなサキュバスであったとしても、自分だけではなく同胞全てに迷惑が掛かってしまう。いや、迷惑などという軽いものではおさまらない程の罰が自分の身内にまで影響してしまうという事を考えると冷静になって立ち止まってしまうしかないのだ。
だが、そんな事を避けるための抜け道があるとサキュバス娼館支配人代理は言い切った。
「私たちサキュバス娼館の物が未成年者に対して性行為に及んだ時には物凄く思いバツが与えられるという事はわかっているよねぇ?」
「それはわかってます。この子だってさっきまで軽く考えていたみたいだけど、事の重大さを理解した今となっては考えを改めてくれたみたいですよ」
「それならいいんだけどぉ。じゃあ、どうしたら私たちみんなに迷惑がかからなくなっちゃうと思うかなぁ?」
「どうしたらって言われても、私には全然わかんないです」
「私もそんな抜け道があるなんて思えないんですけど、どんな方法があるって言うんですか?」
「そうだねぇ。可能か不可能かで言うと限りなく不可能な話になるんだけど、まず一つ目はこの世界に施行されている法律を変えるかまー君がその法律の適用範囲外だと認定してもらう事かなぁ。これはまー君も目指している事なんで協力し合えば可能な話になるのかもしれないんだけど、とても大きな問題点があるという事がわかるかなぁ?」
法律を変えてまー君が未成年ではなくなるとなれば罰則を受けることもなくなるのではないかとサキュバスたちは思った。そうなれば誰が手を出しても問題なくなるという事になるし、誰にも迷惑をかけなくて済むという事になる。
だが、それにどんな問題があるというのだろうか?
法律自体を変更するかまー君を適用外にするのかという事も、全員の力を合わせれば深野ではないような気もする。少なくとも、まー君の味方になるような人は数えきれないくらいいるだろう。
「支配人代理はまー君のために世界中の人が力を合わせることが出来ないって言いたいんですか?」
「うーん、今すぐには無理だとしても、来年の春には可能なんじゃないかなって思うよぉ。でも、それじゃダメなんだってわからないかなぁ?」
「わからないです。誰かわかる人いる?」
誰一人として反応するものはなく、声をかけたサキュバスもなぜダメなのかわからず答えに窮していた。まー君に手を出すことが合法になるのだから問題なんて無いとは思っているのだ。
「やっぱり誰もわからないかぁ。そうだよねぇ。きっとそうだと思ってたよぉ。でも、これに気が付いたのは私もちょっと前だから仕方ないかなぁ。私たち知的生命体は自分たちにとって都合のいいものが見えちゃうと、都合の悪い部分には目が向かなくなっちゃうんだよねぇ。だから、そんなに申し訳ないって思わなくても大丈夫だよぉ。みんな、私の言うことを聞いて納得してくれると思うんだけど、それに対する解決策を見つけてくれると嬉しいなぁ」
支配人代理が空中に映し出した映像の中央にまー君がいる。その姿を見ただけでサキュバスたちは少し興奮したのか室温と湿度が少しだけ上昇していた。
「まー君の姿を見せてくれるのはありがたいんですけど、これを見てどうしろって言うんですか?」
「まあまあ、最後まで見てよぉ。まー君が未成年じゃなくなったとして、いつも一番近くにいるのは誰だかわかるかなぁ?」
「誰って、うまなちゃんとイザーちゃんだと思うんですけど。それがどうかしたんですか?」
「うんうん、それがわかっててどうしてわからないのかなぁ。って、私もコレに気付くまでは少し時間がかかっちゃったんだけどねぇ。誰か、私が言いたいことわかる人いるかなぁ?」
それぞれ顔を見合わせているサキュバスたち。その誰もが支配人代理の求めている答えがわからずにいたのだが、ひときわ小さいサキュバスが控えめに手を上げていた。
それを見逃さない支配人代理は小柄なサキュバスに近付くと、何がわかったのか質問をした。
「あなたは何がわかったのかなぁ?」
「間違っているかもしれないんですけど、まー君の近くにはいつもうまなちゃんとイザーちゃんがいるんですよね?」
「そうだねぇ。そう言うことになるんだよぉ。だって、まー君は二人と永久契約を結んでいるんだから、何も出来なかったとしても一緒にいることになるんだよねぇ」
「一緒にいるのがうまなちゃんとイザーちゃんだったら私たちにとって良くないと思います。いや、最悪と言ってもいいんじゃないでしょうか」
「どうしてそう思うのかなぁ?」
「だって、そんなに凄いサキュバス二人が近くにいつもいるんだとしたら、絶対に他に目移りなんてしないですよ。まー君はすぐに二人とエッチしちゃうと思うし、うまなちゃんもイザーちゃんもエッチできるってなったらすぐにやっちゃうと思いますから」
「うん、そうだよねぇ。あの二人が据え膳逃すはずがないからね。私たちが手を出す好きなんてどこにもないってことになるよぉ。みんなはそれを聞いて理解できたかなぁ?」
自分たちだけが手を出すことが出来ると思いんでいたサキュバスたち。
冷静に考えると、自分たちよりも近い場所にいるうまなちゃんとイザーちゃんが何もしないなんてありえないとわかるはずなのだ。
だが、自分たちにだけ都合がいいように解釈してしまっていたサキュバスたちはその事実を知り、多くのものが意気消沈してしまった。
「だからね、そうならないようにもう一つの方法を教えようかなって思うんだけど、みんなは聞いてくれるかな?」
再び真剣な表情になったサキュバス娼館支配人代理。
彼女は小柄なサキュバスを自分の近くに呼び寄せると、その小さな体を包み込むように優しく抱きしめた。
「ありがとうね。みんなに迷惑をかけずにまー君を快楽の海に溺れさせる方法。それは、このサキュバス娼館と無関係なサキュバスを送り込むことだよ。頭のいいあなただったら、私が言っている意味がわかるよね?」
小柄なサキュバスは支配人代理に抱きしめられていい気分になっていたのだが、その言葉の意味を理解すると同時に全身を冷たいものが駆け巡っているのを感じ取った。
「破門されるってことですか?」
「そう言うことだよぉ。でも、安心してほしいなぁ。あなたが捕まっちゃったとしたら、私も一緒に捕まることになるかなぁ。破門したことでサキュバス娼館とは無関係になるんだけど、私とあなたの間で交わされている契約は無効にならないんで連座制の対象になっちゃうんだ。だから、あなたは一人で捕まるわけじゃないからね。もちろん、他の子が挑戦したいって言うんだったら、私は支配人代理として責任を取るからね」




