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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎
人魔共闘の章

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第一話 関係性

 人類と魔物は敵対関係にあるという常識はたった一人の男によって覆された。

 今や、人類も魔物も共通の敵をどうにかするという目的のもと、共闘するという信じられない事態になっていた。


 共通の敵として認識されたのはまー君であるが、そうなったきっかけを作った悪い男の名は零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)という。

 この男は自分の持っているものすべてを投げ売ってでも、まー君がサキュバスと結んだ永久契約を破棄させようとしているのだ。


 日本魔法連合協会でまー君と零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)の会談が行われてから一か月が経ち、それまで何一つ変化がなかった世界情勢が急速に変化したのは零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)が全世界の全生命体に向けて演説を行ったからである。

 まー君がサキュバス娼館と交わした永久契約を巡って定期的に行われていたお話合い。あくまでもお話合いなので会談ではなく、場所が日本魔法連合協会の応接室であったり理事室であったり、時には食堂で行われたりもしていた。

 この日も何の気構えもなく気軽に遊びに来た程度の認識だったまー君。それにたまたま付き添い出来ていたうまなちゃんとイザーちゃん。その三人は前もって演説があるという事を聞かされていなかった。零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)の演説内容を聞いてから初めてだまし討ちにあったという事を知るのであった。

 お話合いをする場所がやたらと開放的なテラスだったという事で気付くべきだったし、いつもは零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)の隣に座っている愛華がまー君の隣に座っているという事も気にしておくべきだった。

 だが、そんな事を後悔しても、もう遅い。


 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)が片手を高く上げて合図を送ると同時に日本魔法連合協会を囲っていた塀が地面に収納されていった。そのことを皮切りに周りに集まっていた人達が一斉に敷地内へとなだれ込んできた。

 ざわめきが落ち着くと、零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)はいつの間にか用意されていた演説台に立ち、観衆を確認するように視線をくまなく送っていた。


 そして、この時から世界は大きく変化していくのであった。


「多くの方がご存じだとは思うが、私のことをまったく知らない方もいらっしゃるとは思うので簡単に自己紹介をさせていただく。私の名は零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)と言い、以前は八代目零楼館夜光(れいろうかんやこう)という名でも呼ばれていた男だ。今でも私のことを八代目と呼ぶものもいるのだが、好きな方で読んでくれて構わない。日本魔法連合協会の代表理事を務めさせていただいているのだが、これから私が述べる条件を満たしたものにその全権を譲ってもいいと考えている。たとえ、その条件を満たしたものが魔法連合協会の会員であれば嬉しい事ではあるが、仮に会員でなかったとしても条件さえ満たしてくれれば喜んで譲り渡そう。その条件を満たすものが人間ではなかったとしても私は構わないと思っている。なぜなら、その条件を達成するために討たねばならぬ敵は人類だけではなく全生命体にとっても敵となりえる男だからだ」


 この世界で零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)のことを知らない者が存在するのかはわからないくらいに有名なのだが、強くてニューゲームを選んでこの世界にやってきたものは知らないかもしれない。そのような者がいるのかわからないけれど、零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)は万が一のことを考えてあえて自分の名を名乗ったのだ。

 そして、絶対的な権力者の象徴でもある日本魔法連合協会の代表理事という立場を譲ってもいいという事はこれ以上にない衝撃的な発言だった。しかも、その対象は日本魔法連合協会の会員以外でもいいという事だし、人類であるという必要もないという事だ。魔物がその権利を勝ち取ったとしても零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)は何の躊躇もなく譲ってしまうのだろう。零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)が一度交わした約束を決して違えることはないという事を誰もが知っているのだから、その言葉を聞いたモノは皆同じ方向を向くことになるのである。


「あまり長引かせるのも申し訳ないと思う。諸君らの関心は、いったい私がどのような条件を提示するのだろうという事だろう。だが、その答えを言う前に一人の男を紹介させていただきたい。愛華君、よろしく頼むよ」


 全員の視線が零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)から愛華に移っていた。今日の愛華は人前に出るという事もあっていつものコスプレ衣装ではなく本物の軍服を着ていた。丈夫な素材で出来ているので本物の軍服なのかもしれないが、階級を示すものは何一つ見当たらなかった。

 まー君は手を握られたまま抵抗することも出来ずに一緒に演説台の横まで歩いて移動させられた。

 注目をされることに慣れているはずなのに、いつもよりもその視線はきつく感じていた。愛華に手を握られていることで生命力が失われているからなのかもしれないが、一斉に向けられている敵意にも似た好奇心が強すぎたからなのかもしれない。


「諸君らの多くはこの男が誰なのか知らないかもしれない。知っている者がいたとしても、それはこの男の今現在の情報ではなく過去の伝説なのだろう。この男こそ、世界最強の生命体と言ってもいい存在であるまー君なのだ。強くてニューゲームを幾度となく繰り返し、一対一で対等に戦えるものなど私以外には存在しないレベルまで成長しているのだ。人類はもちろんのこと、魔物であっても一対一で勝てるものはいないかもしれない。神や悪魔と呼ばれる存在ですら、彼と戦って無事で済むことはないだろう」


 観衆から上がる戸惑いを含んだざわめきが大きくなっている。人類のために存在している再挑戦者(リプレイヤー)であるまー君をこのタイミングで紹介することに特別な意味があるという事はわかっているのだが、零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)があげるであろう条件に関わってくるのかと思うと、やはり誰もが戸惑ってしまうのも無理はない話だ。


「そう、賢明な諸君らはもうお気付きだろう。この男こそが、我々共通の敵である」

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