第二十六話 太ももの魅力
何度やっても勝てない相手というのは確実に存在するのだが、それと遭遇することは基本的にあり得ないことなのだ。
自分よりも強い生物が現時点で存在するなどまー君は思っていないし、実際にまー君よりも強い生物など違う世界線を巡ったところで出会うことはないだろう。だが、今現在まー君の目の前にいる男には真正面から戦っても、裏をかいて奇襲をかけたとしても素直に勝てるという未来が見えないのだ。自分よりも強いとは言えないこの男に対しては、なぜか勝てないというイメージしかわいてこないのであった。
しかし、同時に負けるという未来もイメージすることが出来なかった。
つまり、戦うとしてもかなり面倒くさい嫌な相手であると言い切ってしまって問題ないのだ。
そんな相手がまー君に対して絶対的なマウントを取り出した。
通常であればそんな事を歯牙にもかけないまー君ではあるのだが、 零楼館乳首郎を相手にするという事を考えるとどうすればいいのかわからない。
その上、隣には全体的に細身なのにもかかわらず腰回りと太ももがムチムチしているコスプレ女がべったりくっついているのだ。まー君は 零楼館乳首郎の事ばかり集中してみるわけにはいかないという、きわめて深刻な状況に置かれているのだ。
思わず思いのたけをぶつけてしまいそうになりながらも、最後のところで冷静になれたまー君は八対二の割合で視線を動かしながらどうするべきか考えていた。
「どうした。そんなに愛華の事ばかり見てるけど、何か気になったのか?」
「いや、そういうわけではないが。なんでこの部屋に戻ってくるたびに違う衣装になってるんだろうって思って」
「それはね、あんたを楽しませようって思いと、純粋に私がコスプレ好きだからってのがあるのよ。全部が全部手作りってことでもないんだけど、市販品をそのまま使っているってのはないからね。最低でも五か所くらいは手直ししたり素材を変えたりしてるんだよ。何か好きな衣装とかあったら言ってね。たいていの衣装は用意してあるんだけど、あんまりきわどいのは駄目よ。坊やには刺激が強すぎるかもしれないからね」
坊やなんて言われたのはいつ以来だろう。まー君は遠い過去のことを思い出そうとしていたが、一瞬目を離したすきに愛華の衣装が変わっていたことに気付いてそんな事はどうでも良くなっていた。
網目の大きいタイツが少しだけ食い込んでいる太ももから視線を外せなくなってしまっていた。
それに気付いた愛華はまー君に対して見せつけるように足を少しずつ開いたり閉じたりして挑発しているのだが、体勢を少しだけ崩して大きく足を開いた時には思わずパンツが見えないように両手でしっかりと隠していた。自分と目が合わなくなったまー君を見て、少しだけ満足してしまった愛華は姿勢を正すと 零楼館乳首郎にそっと耳打ちをして部屋から出て行った。
「で、どうする?」
「どうするって、何が?」
「あんたが成人になるまでの間、俺がイザーちゃんとうまなちゃんの二人と遊んでもいいのかって聞いてるんだよ?」
「いや、それは嫌だって言ってるじゃない。そういうネトラレみたいな気持ちになるのは好きじゃないから」
「好きじゃないって、そんな経験もしてない童貞なのによく言い切れるもんだな。実際に経験してみると興奮するかもしれないぞ」
「この体では童貞かもしれないけど、強くてニューゲームをしているときに何回もそういう経験はしてるし。そのうえでネトラレは耐えられないんだよ。俺が知り合う前にしていたことに関しては何も言わないけど、俺が知り合ってからの人生で俺以外の相手を経験するような人とは上手くやっていけなくなっちゃうんだ。武器だって盾だって鎧だって兜だって何だって俺は中古なんて嫌なんだよ」
「こんな言い方したら嫌な奴って思われるかもしれないけど、イザーちゃんもうまなちゃんもサキュバスなんだからそういう経験は普通の人間以上にしてるだろ。何だったら、一日に何人も相手をしたことだってあるかもしれないんだぜ。それって、中古だなんだって事よりも耐えられないんじゃないか?」
「それに関しては問題ないと思う。さっきも言ったと思うけど、俺と出会う前に何をしてたかなんて気にしないし、その経験があったからこそ楽しめることだってあると思う。何より、俺自身もある程度遊んでいるんだからお互いに潔癖である必要はないと思ってるんだよ」
「なんて言うのかな。世界最強の魔法使いであり純粋な肉体の強さも素手でなんでも破壊するような技術も極めている男がそんな風に考えているなんて思わなかったな。正直に言っちまうと、もっといけ好かない野郎なのかとも思ってたよ。何せ、お前は俺とこうして話してる間もずっと愛華の太ももばっかり見てるからな」
まー君は思わず視線を外して 零楼館乳首郎の顔を見たのだが、その表情は先ほどまでとは違い敵対心のかけらも見えなかった。
だが、スキニーパンツをはいている愛華の太ももを見たい気持ちを抑えることが出来ず、その表情の意味を細かく読み取ることは出来なかった。
「じゃあ、あんたのその気持ちを汲んで俺もちょっとだけ話をさせてもらおうかな」




