第二十五話 コスプレ女
この世界に存在する全生命体の中で最強を争うことになる二人の間に少しずつではあるが良からぬ空気が漂っていた。お互いに意識はしてないはずなのだが、まー君は自分よりも先にイザーちゃんのテクニックを堪能していた 零楼館乳首郎に対して嫉妬心を抱きつつあったし、 零楼館乳首郎はこれから幾度となく自分が味わうはずだったイザーちゃんのテクニックを独占するまー君に対してどす黒い感情を抱いていた。
そんな二人の様子を冷めた目で見ていた愛華はいつの間にか着替えていたチャイナドレスをひらひらさせながら太ももを少しだけ見せつけるように部屋を一周して出て行った。その行動に何の意味があったのかわからないが、まー君と 零楼館乳首郎が短い時間ではあったが同じ気持ちになっていたのだ。むっちりとした足は素晴らしいという思いが二人の頭に残っていたのである。
「一つ提案なんだが、一日に三時間だけでいいんでイザーちゃんかうまなちゃんと遊ばせてもらえないか?」
「それって、普通にゲームをしたり鬼ごっこをしたりって遊びじゃないよな?」
「もちろん。俺は年齢的には不能と思われても仕方ないような感じではあるが、まだまだ若い者には負けないくらいの元気と角度があるからな。お前だって毎日毎時間毎分毎秒二人の体を堪能しているってわけでもないんだろ? それくらいの器量を見せてくれてもいいんじゃないか?」
まー君は悩んでいた。
ここで 零楼館乳首郎に恩を売っておくことで得るものは大きいだろう。この世界だけではなく、別の世界に行ったとしてもその恩恵が失われるという可能性は限りなく低そうなのだ。
なぜなら、深く関わりは持たなかったものの零楼館という名前はどの世界でも頻繁に聞いていたし、場合によってはまー君も零楼館に所属していたことがあったのだ。
ただ、まー君が強くてニューゲームを選んでいた最大の目標である“史上最高ランクのサキュバスと永久契約を結ぶ”という事を達成した今、新たに強くてニューゲームを選ぶ理由があるのだろうか?
恩を売っておけば、 零楼館乳首郎がこの世界の法律を変えてくれて成人年齢を引き下げてくれるかもしれないし、特例法を制定してまー君を成人として認定してくれるかもしれない。そうなると、まー君が魔王を育てる必要もなくなるし、成人として認められる世界が選ばれるまで強くてニューゲームを選ぶ必要もなくなるのだ。
その可能性は非常に高いと思われるのだが、まー君には一つだけ我慢出来ない理由があった。
まー君はネトラレに否定的な考えを持つ女に対しては独占欲の強いワガママな男なのだ。言葉を選ばずに言うと、自分の女を他人と使いまわすことなんて絶対に無理であり、それがどんな人であれ例外は存在しないのだ。ただ、自分と知り合う前の過去のことは気にしないという。
「申し訳ないが、その提案には乗れない。理由はちょっと言えないんだけど、そういう事なんで諦めてくれ」
「あんたにとっても俺にとっても悪い話じゃないと思うんだがな。あんただってバカじゃないんだから俺に恩を売ることのメリットも理解して断ってるってことなんだろうな。なるほど、愛華の言った通りの性格なんだな」
「女に対して誠実と言えば綺麗に聞こえるけど、自分以外に穴を使われたくないってだけの独占欲丸出しなだけだよ。でも、この人はその穴をまだ使わせてもらうことが出来ないんだけどね。ね、そうだよね?」
お色直しなのかチャイナ服からアイドル衣装に着替えた愛華は再び足をアピールしながら 零楼館乳首郎の背後からスッと現れた。
誰にも言っていないことをなぜか愛華が知っている事にまー君は驚愕して声が出てしまいそうになっていたのだけれど、何とかそれを我慢して真実ではないとでもいうような態度で接していた。
だが、そんなまー君の嘘を 零楼館乳首郎は簡単に見破って嬉しそうにニタニタと笑っていた。
「そうか、そういう事か。よくよく考えてみればそうだよな。あんたはまだ未成年だもんな。未成年に手を出してしまったら、イザーちゃんとうまなちゃんだけの問題で済まなくなっちまうか。最悪、サキュバス娼館自体が取り壊しになってサキュバスの活動が制限されて管理されちゃうってことになるもんな。そうなってしまったら大変だな」
「それが理由でまー君は魔王を倒して強くてニューゲームを選んで自分が成人年齢になっている世界に行こうとしてるみたいだよ。でも、そのためには新たに生まれる魔王を待つ必要があるし、せっかく待った魔王がほかの 再挑戦者に倒されちゃったら大変だもんね」
「でもよ、それだったらこいつが魔王を育てる必要なんてなくないか?」
「そうでもないんだよ。魔王の力が強ければ強いほど、自分が新しくいく世界が自分にとって都合よくなる可能性が高くなるんだよ。これは 再挑戦者の中でもごく一部の物しか理解していないことなんだけど、最強と呼ばれる魔王を倒した次の世界は今の 零楼館乳首郎よりもずっと権力のある状態で活動することが出来るようになるんだよ」
「ってことは、成人年齢に達していなかったとしても、法律を変えちゃうことも出来るってことか。そりゃ、自分以外に誰も魔王を倒せないくらい強く育てたくなっちゃいますな」
愛華と一緒に高笑いをする 零楼館乳首郎。
動揺していないように冷静に冷静にと考えるまー君ではあったが、首から下は滝のような汗をかいていた。
そんな中で一つだけではあるが、まー君は光明を見つけていた。
零楼館乳首郎の権力があれば法律を変えることも出来る。
それはとても重要な事であった。




