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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎
プロローグ

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第十六話 大きな男と小さな茶室

 零楼館邸に着いたまー君は案内人の後をついて行ったのだが、屋敷からはどんどんと離れていき小さな小屋に通された。

 手紙をもらった時から感じてはいたが、歓迎されていないという事をここまで露骨にあらわされるのは多少なりとも考えることがあった。このまま怒って帰ってしまっても文句なんて言われないのではないかと思いつつも、まー君は中身は十分に大人なので余裕を見せることにした。


「少し窮屈かもしれませんが、こちらからお上がりくださいませ」


 窮屈にもほどがあるだろうと思ったまー君ではあったが、過去に何度か体験した茶道の時にもこのような小さく低い扉をくぐったことを思い出して冷静かつスマートにその扉を開けて部屋の中へと進んでいった。

 外から見ていた印象と何も変わることがない茶室の中は無駄なものが何一つないお茶を楽しむためだけの空間として機能していた。

 ただ、その場に似つかわしくない派手な着物を着た大男が深々と頭を下げているという事を除けばの話だが。


「本日はこのような場所までわざわざご足労頂ありがとうございます。本来であれば私どもの方から出向くのが筋というものでしょうが、私一人いないだけでこの家も連合協会も何も出来なくなってしまうというありさまでして、お許しいただければ幸いでございます」


 丁寧でありつつもどこか威圧感を出している言葉の強さはあった。それよりも、頭を下げている状態なのにもかかわらず自分より大きく見えてしまうのはどういうカラクリなのだろうか。魔法を使っている様子も何かの術を施している様子も見受けられない。そんな事はないと思うが、自分よりも倍以上の身長がある人間が存在するのだろうか?

 仮に自分の二倍は身長がある大男が存在するとしても、この小さな茶室にどうやってもおさまりきらないと思うのだ。そう考えると、何か気付いていないトリックがあるはずだ。それはいったい何なのか、直接聞いてみてもいいのかもしれない。


「申し遅れましたが、わたくしはこの邸宅の主でもあり連合協会の代表理事でもある 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)でございます。このような巨体には似つかわしく無い茶室での出迎えにさぞ驚かれたのでしょうが、この巨体ゆえにこの狭い空間では何もできないというアピールにもなると思いましたのでご容赦くださいませ。何せ、わたくしは一度興奮してしまうと見境なく暴れてしまう性質でして、それを避けるためにもこの狭い空間で身も心も落ち着かせる必要があったのです。何せ、まー君さんにはどうしても言っておかなければいけないことがあるんですからねぇ」


 柔らかの物腰だった 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)ではあったが、話を聞いていると徐々に圧力をかけてきているのが感じられた。その圧力は自分を殺そうと向かってくる強者のそれにも似ているように感じたのだが、そこまで恨まれるいわれはない。そう思ったまー君は 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)の話をいったん最後まで聞いてみることにした。


「そんなに怒るほど何かしましたかね?」


 まー君は冷静に話しかけていた。それは 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)のことを落ち着かせようとする意志の表れでもあったのだが、その言葉を聞いた 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)はほんの少しだけ冷静さを欠いていしまった。


「あなたにとっては些細な出来事だったのかもしれませんがね、こちらとしてはどうしても看過できない事態なんですよ。それを何かしましたかね? なんて聞くのは男としてどうなんでしょうかね。一つご自身の胸に手を当てて聞いてみてはいかがですか?」


 本当に胸に手を当ててはいないが、まー君はいったい何に対して怒っているのか考えていた。

 まさか、自分の手で魔王を教育しようとしていることがばれたのだろうか?

 それは普通の人には看過出来ないことだとは思うのだが、自分が倒すまで他の者に手を出させないようにちゃんと見守るのだからいいとは思っている。魔王がこの世界に誕生して野放しに好き放題去れるようりは何倍もマシだと思うのだが、そういう理屈は通らないくらい魔王を育てるというのはタブーだと考えているのか?


「俺がこれからやろうとしていることがマズいってことですか?」

「まあ、そう言うことになるでしょうね。あなたのやっていることは誰もが一度は考えることだとは思いますが、それを実際にやっちゃうってのは良くないんじゃないかなぁ。平等の精神ってものがあんたにはないんですかね? まあ、誰だってそうしたいって気持ちはあるだろうし、それをグッと堪えて毎日毎日汗水たらして頑張って入るんですよ。その気持ちを考えてみたら、まー君さんのやってることは非道と言っても言い過ぎじゃないと思うんですがねぇ」


 自分だけが倒せる魔王なんて誰から見てもズルいと思われるだろう。

 自分の力が魔王を倒す鍵になっているのもおかしいと思われるかもしれないが、世界平和のためにも一番被害の少ない方法だとは思う。

 それでも、平等ではないと言われればそれまでだ。


 頭をずっと下げていた 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)が状態を上げると今にも天井に頭がついてしまうのではないかと思うくらい大きかった。

 思わず膝立ちになったまー君よりも頭の位置が高いという事を考えると、本当に自分の身長の倍はあるのではないかと思えた。

 片膝立ちの自分を見下ろすほどの大男の圧力に負けたのではない。純粋に 零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)の力が強いと感じて身を引くことにしたのだ。

 普通に戦えば負けることはないとわかってはいるが、そうすることが出来ない何か強いプレッシャーがまー君の身を包み込んでいた。


「まあ、そう気を荒立てないでください。 再挑戦者(リプレイヤー)の力は十分にわかってるつもりですし、まー君さんが他の 再挑戦者(リプレイヤー)とは比べ物にならないくらいの経験を積んでるのもわかります。でも、今この場ではワシを倒すことは不可能ですからね。それに理由なんて何もないんですが、そういう決まりになってるんですよ」


 おそらく、この場で 再挑戦者(リプレイヤー)が力を使うことを禁じられているのだと思う。世界には何か所か 再挑戦者(リプレイヤー)が能力を何も使うことが出来ない地帯が存在しているのだ。

 一般現地民でも簡単に 再挑戦者(リプレイヤー)を殺すことが出来る場所。

 そんな限られた場所の一つがこの茶室なのかもしれない。



 でも、まー君にとってその場所の制約は対象外だったりするのだけれど。

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