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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎
プロローグ

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第十三話 手紙の中身

 メスイキという言葉を見てまー君はほんの少しだけ興奮しそうになってはいたけれど、すぐに気持ち悪い指のことを思い出して頭の中は冷静さを取り戻していた。興奮よりも気持ち悪さの方が若干勝ってはいたのだが、今まで幾度となく修羅場を乗り越えてきたまー君にとって慌てるようなことではなかった。

 それでも、あの指を普通に素手で触っているイザーちゃんには軽蔑心を超えて尊敬にも近い何か不思議な感情を抱いていた。ただし、彼女と同じようにあの指を使って麻生坊という気持ちにはなれなかったのだが。


「メスイキに心躍らせてるところ悪いんだけど、さっさと手紙を読んでもらってもいいかな。誰が何の目的で嫌がらせみたいな手紙を送ってきたのか気になるし。……もしかしてだけど、まー君って文字が読めないとかはないよね?」

「別に心躍らせてなんていないし。文字だって読めるし。でも、あの指に触れてた手紙を触るのはちょっと嫌だなって思っただけだし」


「そんなにキョドらなくてもいいって。別に私はまー君をバカにしているつもりはないんだよ。ちょっと指が気持ち悪いなって思っただけだし。イザーちゃんは平気で触ってるけど、作り物だとしても私は触りたくないなって思ってるし」

「そうかな。そんなに気持ち悪いとは思わないんだけどな。どっちかって言うと、ちょうどいい長さで使いやすそうだなって思うよ。ちょっとしわしわすぎて見た目は気持ち悪いかもしれないけどさ、良い指じゃないかな」


 しわしわなところが気持ち悪いのではなく、指が大量に入っていること自体が気持ち悪いのだと言いたかった二人だったが、そんな事を言っても今のイザーちゃんには通じないと思って黙っていた。何か言ってこの話題を広げてしまうと良くないことが起きるかもしれない。例えば、あの指をもっとちゃんと見た方が良いと言って自分の目の前まで持ってくるような予感がしていたのだ。悪い予感というのは、たいてい当たってしまうのでまー君もうまなちゃんも何も言わずに黙っていた。


「……じゃあ、手紙をまー君に渡すね。この国の文字っていろんな種類が混在していてよくわからないから。うまなちゃんはこの国の文字を完璧に読めるの?」

「私も微妙かも。漢字があれば何となく意味は分かるんだけど、ひらがなとカタカナだけだったら意味を理解するのに苦労しちゃうかな。だって、この国って同じ言葉で違う意味の言葉が多すぎるんだもん」

「だよね。話しててもよくわからずに笑ってごまかしちゃうときあるもん」


 いつまでも頭の中に残っていたメスイキという言葉に惑わされつつあったまー君ではあったが、うまなちゃんとイザーちゃんの会話を聞いて若干ではあったが手紙をちゃんと読むことが出来るのか不安になっていた。

 そして、イザーちゃんから手紙を受け取ったまー君は不安な気持ちが一気に増してしまった。


 手紙の一部に赤黒い染みが出来ていたのだ。


 それでも、まー君は自分の気持ちを押し殺して冷静に手紙を手に取った。


『拝啓 春らしい陽気となっていく文過ごしやすい季節となりましたが、体調など崩されてはおりませんでしょうか。私共は皆健やかに過ごしております。』

「私共はと言われても、いったい誰なんだ?」

「誰なんだろうね。手紙に書いてないのかな?」

「ああ、最後の方に書いてあるわ。そこまで読むね」


『 再挑戦者(リプレイヤー)であるまー君様は風邪など召されることはないとは存じますが、体調など崩されないようにお気を付けくださいませ。何せ、あなた様が風邪を召されますと契約を結ばれたサキュバス様お二人にも感染してしまう恐れがございます。重ね重ねにはなりますが、体調管理には十分にお気を付けくださいませ。』

「いやいや、まー君が風邪を引いたところでサキュバスである私たちには感染しないけど」

「人間の病気は私たちに感染しないもんね。性病だって感染しないから安心してね」

「その心配はしてないけど。まあ、続きも読むよ」


『単調直入に申し上げますが、あなた様が永久契約を結ばれたサキュバス様お二人のことに関して確認したいことがございますのでお時間をいただきたいと思っている次第であります。もしも、お時間をとれないという事でしたら、どんなに短い隙間時間であったとしてもこちらからお伺いいたしますので何なりとお申し付けください。』

「特にやることもないんだしお話ししに行ってみてもいいんじゃないかな?」

「まー君が寂しいって言うんだったら、私たちもついて行ってあげるよ?」

「それはなんか話がややこしいことになりそうなんで遠慮しとくよ」


『お手数ではございますが、下記に記してある電話番号にご一報くださると幸いです。日本魔法連合協会代表理事  零楼館乳首郎(れいろうかんちくろう)』

「日本魔法連合協会代表理事だって。まー君はとんでもないところの人に目を付けられちゃったね」

「多分、私たちのせいなんだけどね。じゃあ、お言葉に甘えてまー君一人で行ってきてもらおうかな」


 日本魔法連合協会がいったいどんな組織なのか存じ上げないのだが、うまなちゃんとイザーちゃんの表情や態度を見ているとろくでもない組織なのだという事だけは理解できた。そんなに危ないところに一人で行くのは嫌だなと思うまー君ではあったが、そんな危ないところに史上最高ランクのサキュバスであるうまなちゃんとイザーちゃんを連れて行くのはもっと危険なんじゃないかとも思っていた。


 仕方ないので一人で行くことに決めたまー君はさっそく連絡をしてみることにした。


 今からでもいいという先方の申し出を断って翌日の昼過ぎに直接伺うという事を伝えた。今晩でもいいという熱心な誘いをどうにかこうにか翌日の昼過ぎに伸ばすことが出来たのだが、そのやり取りだけでも精神的な疲労が溜まっているのを感じてはいたのだった。

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