第十一話 人造魔王
再挑戦者が魔王を育てるなんて前代未聞の事態である。
まさに前人未到の出来事なのだが、自分が 再挑戦者としてやり直すためにそんなことをする者など今まで誰一人として存在しなかった。その理由として、そんなことをする理由が何一つとして存在しないからだ。
ただ、まー君の場合は他の者と置かれている状況が違う。魔王の誕生を待っているよりも自分が一から魔王を育て上げた方が早く戦うことが出来るし、他の 再挑戦者に魔王を討伐される心配もなくなってしまうのだ。
つまり、史上最高の 再挑戦者であるまー君は自分以外には絶対に倒せない魔王を自らの手で育てるという。他人から見ると何が目的なのかさっぱりわからない話ではあるが、まー君としてはそれ以外に最速でやり直す方法がないのである。
「まー君以外の 再挑戦者に魔王が倒されちゃったら意味無いってことだろうけど、まー君から横取りするような 再挑戦者っているのかな?」
「この世界にいるかはわからないけれど、俺は何回目かの強くてニューゲームをした時に油断して魔王を先に討伐されたことが三回連続であったんだよ。あの時は新し魔王が誕生するまでそれぞれ八年くらいかかっちゃったんだよ」
「新しい魔王が誕生するまでそんなに時間かかるもんなの?」
「あの時はそれくらい時間がかかったんだよ。なぜなら、通常の魔物にやられるような初心者が全然いなかったからな。新しい魔王が生まれる条件の一つに俺たち 再挑戦者がある程度倒される必要があるって話なんだよ」
「なんか、そんな話は聞いたことがあるかも。熟練の 再挑戦者が集まっちゃうとその世界は魔物よりも人間の方が強くなっちゃうことがあるんだもんね。仕方なく神様が再挑戦者たちを粛清して回るって話も聞いたことがある」
「もしかして、まー君も神様に粛清されたことあったりするの?」
「あるわけないでしょ。神に粛清されたら最初からやり直しになっちゃうんだよ。今更最初からやり直しなんてまっぴらごめんだね」
人類が誕生する以前からこの世界に存在している者を神と称している。
その姿を見たものは一般人には誰一人として存在していないのだが、 再挑戦者の中には遭遇したものはそれなりにいるらしい。
いるらしいというのには理由があって、神と遭遇したものは例外なく戦うことになるのだ。その戦いに敗れたものは強くてニューゲームではなく普通にニューゲームを強制的に選ばれてしまう。ただ、知識だけはそのままの状態でやり直すことが出来るので少しだけ初心者よりも優遇されているように思われるのだが、知識だけが先行して肉体的に成長が追い付いていない状況になるのでそのギャップに精神を追い込まれてしまうものも多いそうだ。
うまなちゃんやイザーちゃんのようなサキュバスが神に出会うことはまず無いので心配することは何もないのだが、永久契約を結んでいるまー君が神と遭遇して普通にニューゲームをすることとなってしまうとサキュバス娼館の損失は計り知れないものになってしまうだろう。
そうならないためにも、まー君が魔王を早めに倒して強くてニューゲームをする権利を手に入れておいてほしいのだ。一度その権利を手にしておけば神に遭遇することはないと言われているので、うまなちゃんとイザーちゃん個人としてもサキュバス娼館側としても魔王を育てること自体に反対はないのだ。
だが、魔王を育てるという事に対していくつか懸念事項があることも忘れてはならない。
「魔王を育てるって簡単に言うけどさ、そんな事をして本当に大丈夫なのかな?」
「人造魔王が人を襲ったってのは前に聞いたことがあったんだけど、その世界にいた 再挑戦者はみんな神の怒りを買って粛清されたって聞いたことがあるんだけど」
「そういう話は俺も聞いたことがあるけど、俺が作る魔王は俺以外を襲わないようにするから大丈夫じゃない?」
「そんなことが出来るの?」
「自分に攻撃してきた相手とだけ戦うようにすればいいだけだし。先手必勝一撃必殺ってわけでもないけど、必ず先手が取れるってのは良くないかな?」
「一撃で死ぬような魔王は魔王じゃないと思う」
人造人間を誕生させる過程で偶然誕生した人造魔王が存在した世界。
その世界には多くの 再挑戦者が存在していたのだが、たった一人の狂人によって世界のバランスは崩壊し、無数の人造魔王が解き放たれることとなった。
人造魔王の多くは 再挑戦者達によって倒され事なきを得たのだが、討ちもらした人造魔王は 再挑戦者ではなく一般人も襲うようになっていった。
そのことを重く見た神はその世界に誕生した人造魔王を全て滅ぼし、それと同時に 再挑戦者を粛清していった。
そんな伝説をサキュバスたちは聞いたことがある。
「私もちょっと気になることがあるんだけど、自分で育てた魔王を倒しても強くてニューゲームを選べるようになるのかな?」
「それは大丈夫。魔王を自分で育てて倒しているやつを何回か見ているから。みんなは自作自演だってバレないようにしてたみたいだったけど、一人だけ怪しいやつがいたな。そいつと魔王の攻撃パターンが全部一緒だったから自作自演だろうって思ったわけだね。でも、それに関してとやかく言うやつは誰もいなかったな。魔王を倒したってことにはかわらないわけだからね」
「じゃあ、まー君が魔王を育てるってことは問題ないってことだね。でも、それって神の怒りを買ったりするんじゃないかな?」
「それに関しては何の問題もないと思うよ。そんなのはどうでもいいし」
「どうでも良くないよ。もしも、まー君が魔王を育てる事を神様が良く思わなかったらどうするのさ?」
「大丈夫だって。神がやってきたってどうってことないさ。今まで一度も俺は負けたことが無いからね」




