天国の住所が分からない
死んだ友達が突然目の前に!その時ワタシは!
「は?」
目の前の男の突拍子も無い言葉に言葉を失った
あんた何言い出してんのと
「いや、だから天国の住所が分からないんだよ」
男は、私の中学生の時の同級生、久我英雄
通称クーガー
同じ音楽部に在席し共に音楽を奏でた仲間だが
何よりトランペット担当だったクーガーが
吹く時に力み過ぎて毎回白目を剥いて吹く姿に毎回
恐怖した思い出の方が強く印象に残ってた友達だ
クーガーの話は、こうだ
自転車で通勤中に車に衝突され即死。瞬間に背に羽が生え
頭上に天使の輪が現れたと。確かに彼の頭上にはプカプカと
浮かぶ輪っかがあった。クーガーが続ける。
「イメージでは、このまま浮上して天国行くんだろうなって
思ってたんだよ。なのに何時まで経っても行けねーんだよ」
そう話すと私が出した珈琲を口に運んだ。
「てか何で私のトコなのよ。中学卒業して一度も会ってないし
連絡すら取ってなかったのよ。」
出した茶菓子の袋を開ける
「お前しか居なかったんだよ友達。部活の友達もな」
そりゃそうでしょうよ、白目剥いてトランペット吹いてる奴と
仲良くしたい奴なんて、そーそー居ないわよ。
「だからって私んトコ来られても困るから。何も出来ないから」
濡れ煎餅を口に運び茶で胃へ流し込んだ
次の瞬間閃いた。というか気が付いた
「それさ、天国の住所が分かる分からないの前に地獄行きだから
天国行けないんじゃないの?」
「へ?」
私の突拍子も無い言葉にクーガーが言葉を失った
「だ・・だったら何で羽や輪っかあんだよ?天国行きだからだ
ろうよ」
クーガーの訳分からない強気発言と同じタイミングで声がした
「お待たせしました」
声の持ち主は、天使の格好をした可愛い少女だった。
「なっ、なっ?やっぱりそうだろ。俺天国行けるんだろ?」
クーガーが少女へ駆け寄る
「いいえ、残念ですが地獄行きです。輪っかも羽も死んだ人間
皆様へ特典として差し上げてるものなんです。」
少女は、可愛らしい笑みを浮かべクーガーの腕を掴んだ。
そんな特典あるんかい、私が心の中でツッコミを入れるか入
れないかのトコでクーガーは、天に召されたのだった。
いや、正確には地獄へ落っこちたと言った方が良いだろう。
部屋に1人取り残された私は、何事も無かった様に沈黙を
茶で胃へ流し込んだのである。
結局どうしてもギャグ作品に仕上がってしまうのが私の短編です。