表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

十九章 目覚めた悪女と、四角関係の始まり

ご都合主義、独自設定が多々あります。ゆるい気持ちでお楽しみください。

ザインが、釈放されたリリアナを連れてギルドに戻った時、事務所の中は奇麗に片付いていた。壊れた扉は頑丈なものに交換され、床には血の痕一つない。エルマとアイラが、黙々と働いた結果だった。


「…おかえりなさい」

エルマが、複雑な表情でザインを迎えた。その隣で、アイラはリリアナの姿を認めると、その目に再び冷たい光を宿した。

「…あなた」

「…あなたが、アステリアのパートナーの方…」

二人の女の間で、見えない火花が散る。


その緊張を破ったのは、事務所の奥の部屋から聞こえてきた、か細い声だった。

「…うるさいわね。人が寝てるっていうのに」


全員が、息を呑んでその部屋を見た。

ゆっくりと開かれた扉の向こう、ベッドの上で半身を起こしていたのは、アステリアだった。その顔はまだ蒼白だったが、その瞳には、紛れもない、いつもの悪戯っぽく、そして全てを見透かすような光が戻っていた。

「アステリア!」

アイラが、泣きそうな顔で彼女に駆け寄る。

「…あら、アイラ。心配かけたわね」

アステリアは、パートナーの髪を優しく撫でると、その視線をザインに向けた。


「…で、どうなったのよ、ザイン」彼女は、まるで昨日の続きでも話すかのように、軽やかに言った。「私のいない間に、ちゃんと『お仕事』は片付いたんでしょうね?」

ザインは、呆れてため息をついた。

「ああ、おかげさまでな。お前が盛大にぶちまけた厄介事を、俺が綺麗に掃除しといてやったよ」

「あら、感謝するわ」


アステリアは、ベッドからゆっくりと立ち上がると、リリアナの前に立った。

「あなたが、リリアナ嬢ね。私を出し抜いて、殺そうとした。大した度胸じゃない」

「ひっ…!」

リリアナが怯えて後ずさる。

「でも」アステリアは続けた。「そのせいで、ザインが本気を出すことになった。結果として、私も助かった。だから、今回はチャラにしてあげる」

彼女はそう言うと、今度はザインの胸に、ぽんと拳を当てた。

「それから、あなた。ザイン。私のために、帝国と警備隊の両方を敵に回して、嘘の物語をでっちあげたんですって? …ふふ、あなたって、本当にどうしようもないお人好しなのね」


彼女は、ザインの耳元で囁いた。

「でも…そういうところ、嫌いじゃないわよ」


こうして、事務所には、四人の女が集結した。

ザインを裏切り、事件の引き金を引いた、悪女①のアステリア。

そのアステリアを殺しかけた、悪女②のリリアナ。

復讐と欲望のためにザインと手を組んだ、悪女③のアイラ。

そして、そんなダメな男たちから目が離せない、お目付け役のエルマ。


ザインは、自分を取り巻く四人の女たち――聖女の仮面を被った殺人未遂犯、裏切り者の相棒とそのパートナー、そして口うるさいが忠実な事務員――を見回し、殴られた頭よりももっと深い頭痛を感じた。


彼は天を仰ぎ、心の底から深いため息をついた。


「……わかった。もう、わかったから」


そして、うんざりしたように、しかしどこか諦めたように、こう宣言する。


「家賃は、四人で割る。依頼の取り分は……もういい、後で決める! とにかく、誰か酒を持ってきてくれ! 一番強いやつをだ!」


彼のやけくそな声に、四人の女たちはそれぞれの思惑を秘めた顔で互いを見つめ、そして、同時にくすりと笑うのでした。

ザインの、混沌として、危険で、そしておそらく退屈とは無縁の新しい日常が、今、始まろうとしていました。









最後までお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも『面白い』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ