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第七十七話 メモリー


 黒い力を操るのにも慣れてきていた。

 いつものように魔力を操る。

 自然と意識を集中させる――意識の片隅に違和感を感じた。


(ふふ。このタイミングでやってくるあたり、流石としか言いようがないよね)


 コツコツと石畳を叩く靴音が響く。

 それは自らの存在を誇示するかのように。

 そして、逃げも隠れもせず勝負するために。

 その人物は現れた。


「やあ、バンさん。こんな夜更けにどうしたのかな?」

「……ふ。変わらねえな。その堂々とした態度。一貫性があるのは嫌いじゃないんだがな」


 路地の角から煙を纏って現れたのは、白髪の男――バン・ヴァルター。わずかな灯りの中、サングラスに遠くの街灯が小さく反射する。


「……僕もバンさんのことは嫌いじゃないよ。むしろ、唯一好感を持てる人物とも思ってるくらいには」

「……そうか。それはどうも」


 バンの咥えるタバコの先端が赤く光り、灰になる。


(まあ予想はしていたけどね。周囲も囲まれている……か。 ザミエルくんは上手く姿を隠したみたいだね。さて、誤魔化すこともできるけど、どうしようかな)


 ザミエルの姿はいつの間にか消えていた。

 バンやその配下にザミエルの姿を見られたかは、わからないが、話していけばわかるだろうと判断した終はバンに笑みを向ける。


 サングラスをかけているバンの表情は読み取りづらかった。タバコの煙も邪魔していたのが余計に。

 そのため、終は反応が遅れてしまった。


 

 バンは手に持っていたタバコを放り投げた。

 次の瞬間――

 背中から鈍い痛みを感じた。

 

「うっ……」


 微かに銃声が聞こえた気がした。

 それは近くの建物の屋根の上から。

 前のめりに倒れながら、チラリとその建物の屋根上を見ると闇の中に人影があるように見えた。


(その位置は気づかなかったな。……いや、わざとか)


 周囲を取り囲むバンの配下の位置はわかっていた。

 いや、わかりやすくしていたのだろう。狙撃手を隠すために。


「……ふむ、意外だな。こうも容易くやられてくれるとは」


 見下ろす形で感想を述べてきたバン。

 そんなバンに終は苦しそうなくぐもった声で言葉を返した。


「……僕だって……人間、なんだから……死角から、撃たれたら……やられるに……決まってるさ」

「そうか。それは悪かったな。……実際、人間じゃないと思った節もあったんだが。……まあ、人間でよかったと心底安心しているよ」


 シュポッとライターでタバコに火をつけるバン。

 ライターの灯りで僅かに見えたバンの表情は険しく、安心したと発言する人間の顔ではなかった。


「……くっ。……力が」

「気づいたか。……打ち込んだ弾丸。それは魔力の動きを阻害するというもの。……特別製だ。ダンジョンに現れる強力な魔物に対して使われるものを改良した」

「……僕が、何をしたって……言うんだい?」

「……悪いな。こうでもしないと聞き出せないと判断した。……苦しいだろうが、このまま話させてもらうぞ」


 ゾロゾロと現れるバンの配下達。

 地面に転がっていた終は担がれ、近くの建物に運び込まれた。



 椅子に縛りつけられた終。

 目の前にはバンとその配下が数人。

 見知った顔もある。だがその顔は、どこか敵対的で気安く挨拶を交わしていた間柄とは思えない様子だった。


(ふふ。勢揃いだね。さて、何を聞きたいんだろうね。……いや、それはわかりきっているか)


「さて、場所を移した。……時間をかけて聞いても良いが、ワタシとしても友人をこのような姿で長時間拘束をしておくのも忍びない。……手短に済ませようと思う」

「……ふふ……解放……してくれる……気が、あるの……かい?」

「ふむ。それは答えによる」

「そ、っか……じゃあ……良い答え、を……しなきゃ」


 唇を震わせながら声を出す終の姿を見つめるバン。

 その視線が持つ感情は、哀れみか悲しみか。


「……不自然なのだよ。……王国の陥落や、各国の対応がな。……魔王が復活したというのに動きがまるでない。……そしてその不自然さは、あの王女。エルリナ王女だ」


 バンの鋭い視線が終を射抜く。

 足を組みながら話すバンは、思い返すかのように言葉を続ける。


「王女は王国を復興させるために旅を始めた?各国に協力を要請した?……可笑しいと思わないか?……そんな対応では魔王に時間を与えるだけでしかないと」

「……」

「王女が出したという手紙は、裏の情報を使って入手した。そこには重要な情報が何一つ書かれていなかった。敵の規模や脅威度、王国が滅ぶに至った経緯。……リヴェルタ王国の隠された歴史を知る王女ならば、今回の敵は何で、何が起こったかわかっているはずだ。……だが、まるで何もわかっていない。本人に会って確信したよ」


 バンは、つまり、と言葉をまとめる。


「……終。お前なんだろう?……王女から王国の情報を聞き出し、教団や騎士団長の仕業に見せかけて魔王を復活させたのは。……そして不可解な記憶消失。なんらかの力を使って、王女の記憶も消した。……そう考えると、全ての辻褄が合う。……終……王女の力となるフリをして、お前は次に何を狙っている?」

「……」


 誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

 

(そうか。さっきの言葉は、僕が魔王かどうかを心配していたんだね。うんうん。やっぱりバンさんは優秀だよね。でも残念だな。流石にこの状態から協力関係には戻れないからね)


「……バン、さん。……わかった、よ。……本当のことを、話す……ね」


 苦しそうに口を開く終。

 そんな様子を緊張した面持ちで見つめるバンとその配下達。


 

「……僕は、――

 


 薄暗い部屋だったのがよくなかった。

 バン達は自分達に迫っている黒い靄に気づくことができなかった。


 


 ――、僕が魔王さ」





▼お読みいただきありがとうございます!

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ここまでが第二編の前編となります。


そして約2ヶ月の間、「なろう」と「カクヨム」で毎日投稿を行ってきましたが、ここらで一旦お休みをさせていただきます。


どちらも一日のページビューが100を超える日が何日かあり、個人的には、多くの方に読んでもらえたことに驚きと感謝の気持ちを持ちました。


再開に関しては、ある程度書き溜められたらと思っていますが、実生活で転職をして少し多忙だということと、評価が芳しくないということ、別の作品も書きたいという気持ちがあることから、ちょっと未定です。すみません。


お休み期間中に評価が上がったり、催促が来たりしたら、気合を入れて続きを書くかもしれませんが、そこまで望まれていないと思っているので‥‥。

‥というより、自分の筆が未熟なだけなんですけどね。実力不足で申し訳ないです。


終達の冒険をここで終わらせてしまう?お休みにしてしまう?のは、無責任に感じますが、新作に終達みたいな登場人物を出せたらとも思っています。



この2ヶ月間、ありがとうございました。

またお目にかかる機会がありましたら、よろしくお願いいたします。


へのへのしゃもじ

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