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第五十一話 白影の邂逅


 ――真っ白な世界。


 色も、匂いも、温度すら感じない。

 夢の中のようでいて、現実味がある。自分の体があるようで、無いようでもあった。


 その空間に、ぽつりと影が浮かぶ。


「……君は?」


 終が問いかけると、その影は微かに揺れた。


「ワレか?……名乗るほどノ者ではないヨ」


 影は白く淡く、そして輪郭が滲む。声だけがはっきりと届くが、どこか胡散臭く軽い響きだった。


「……僕は死んでないと思うんだけど」


「んー、そうだネ。でも“ノーコンティニュー”ではナイだろう?」


 終は無言でその言葉を噛みしめた。

 黒い影に出会ったときと同じだ。こういう存在は、人の常識では測れない。


「……見てたの?」


「ウン。じっくり、バッチリ、はっきりと、ネ」


「……それで何の用かな?」


「つれないナー。もう少し驚いたり怖がったりしてクレないカナ?」


 白い影はくるりと宙で回り、ひらひらと手を振った。

 その戯けた仕草を、終は無言で眺める。


「はぁ……わかったヨ。じゃあ本題ニ入るケド……君、“魔王の力”を手に入れたネ?」


「……否定する意味はないから、そうだとしか言えないね。それで?」


「君サ、もう少し素直になったラどう? その話し方、嫌われるヨ」


「……」


 終は無言のまま睨みつけた。お前に言われたくない、と心の中で毒づきながら。


「……わかってると思うケド、その力、使いこなせてないヨ?」


 嘲笑うような、しかし底知れぬ響きを孕んだ声。


「……じゃあ、どうしろと?」


「フフッ、力の“本質”を理解することサ。……教えてあげようカ?」


「……ああ」


 面倒くさそうに返事をする終に、白い影は喜ぶように小さく拍手した。


「君が今回手に入れたのは“従属操作”。この世界に存在する超常の力の一つサ。黒い魔力や圧倒的なフィジカルパワーは……おまけみたいなものダネ」


「従属操作……?」


「ウン。悪魔を召喚したダロ? でもネ、それだけじゃナイ。……他にも召喚できるし、誰かが支配している魂を奪い、自分の配下にできるヨ」


 終は薄く目を細めた。

 情報を与えることで、何かを引き出そうとしているのか――終は探るように黙り込む。


「ソウソウ、超常の力は一つじゃナイ。この世界の“古い場所”……例えばダンジョンとか、ソウイウところに眠っているヨ」


「……ダンジョン」


「ウンウン。だから次はダンジョンに行ったらイイんじゃナイ? ……あ、王女と一緒に神聖国に行くのはやめといた方がいいヨ。神聖国には超常の力を持つ人間がいるカラサ」


 影はくすくすと笑った。

 終は無言のまま、その影の軽薄な笑みを睨み続ける。


「……あ、そうだ。一つ教えてクレないカナ? “王国の秘密”。結局なんだったノ?」


「……見てたんじゃなかったの?」


「ワレはそんなに暇じゃないんダゾ」


 終はわずかに肩をすくめ、最低限だけを告げた。


「……王国の秘密は至ってシンプル。王国の誕生前は戦争が絶えなかった。兵器開発のために人の体を使った古代の禁術が研究され、力が暴走してその国は滅んだ。……その研究が暴走するように手引きしたのが、敵国だった王族の先祖さ。そして彼らが新たに王国を建てたってわけ」


「ナルホドッ!! ソウダッタノカッ!!」


 大げさすぎる反応に、終は苛立ちを隠さない。


「……わざとらしい」


「ハハッ、ソレデ王女に呪いが遺伝していた……そういうことネ?」


「……さあね」


 白い影は満足げに頷き、そして口を開いた。


「ヨシ! じゃあワレの用事は終わったカラ、帰るヨ」


 そして消えかけたその時、白い影が唐突に言った。


「ソウソウ。君以外にモ、転生者と転移者ガ――」


 言葉の途中で景色が反転する。


 次の瞬間、終は現実へと引き戻されていた。




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