幕間 リヴェルタ王国偉人伝〜魔剣姫エルリナ〜第一章
かつて、この小さな王国に、一人の姫がいた。
その名を、エルリナ・フォン・リヴェルタ。
リヴェルタ王国第二王女。
王家の血を継ぎながらも幼い頃から剣才に恵まれ、兄姉を差し置いて騎士団訓練に参加した。
貴族たちは嘲笑したという。姫が剣など、と。
しかし彼女は黙々と鍛錬を重ね、十歳を迎える頃には成人騎士を打ち倒した。
その才能は王都を越えて各地に知れ渡り、十五の時、隣国との国境紛争に自ら志願して参戦。
その場で魔獣をも斬り伏せるその姿に、人々はいつしかこう呼んだ。
──魔剣姫。
民から愛され、兵から慕われ、敵から恐れられる存在。
だが、その彼女を襲ったのは剣でも毒でもなく、一つの病だった。
王国はその事実を隠した。
しかし噂というものは、いつか漏れ伝わるものだ。
魔剣姫が床に伏している──と。
人々は神に祈り続けた。
どうか姫を救ってください、と。
けれど神は何も与えなかった。
代わりに現れたのは、一人の薬師だった。
黒髪の青年薬師。
彼が姫の病を癒やし、再び立ち上がらせた。
だが、運命は非情だった。
薬師は突如、暗殺された。
それから数日後。
灰色の雲が空を覆い、不気味な風が吹き荒れる夜──
地底から、無数の亡者が這い出した。
スケルトン、ゾンビ、骸骨兵。
人々は逃げ惑い、王都は地獄と化した。
そして王宮に現れたのは、王国騎士団長。
彼は王国の封印を解き放ち、魔王を復活させた。
国王は魔王に殺され、騎士団長もまた魔王に踏み潰された。
ただ一人、黒き冒険者が魔王に挑むも、その力の前に遙か遠くまで吹き飛ばされ行方知らずとなる。
王国は、魔王の支配下となった。
住人たちは魔王国の民となり、心を失い、操り人形として生きることを強いられた。
だが、希望は潰えていなかった。
魔王の支配を逃れ、地下へと身を潜めた者たちがいた。
王女エルリナもその一人だった。
そして彼女と共にあったのは、死んだはずの薬師。
彼は再び、王女の側に立っていた。
──王女は再び剣を取り、魔剣姫として仲間と共に冒険の旅に出るのだった。
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