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第五十話 世界への報せ


 リヴェルタ王国滅亡の報せは、瞬く間に世界を駆け巡った。


 それはあまりにも唐突で、信じられないという声をあげる国もあった。

 しかし同時に届けられた情報が、人々に現実を叩きつける。


 ――魔王ラディウス


 と名乗る異形の怪物が、リヴェルタ王国を魔王国として支配したという。

 崩れ落ちた王宮、黒い軍勢に蹂躙される街、そして絶望する王国民の姿を語る生存者の証言が、各国の恐怖を確固たるものにしていた。


「和平を申し込むべきだ」

「いや、一気に叩き潰すべきだ」

「まだ様子を見るべきだ」


 三大国をはじめとする各国の判断は割れた。

 しかし共通していたのは、“魔王”という存在がこの世界において現実味を持ったということだった。


 王国から逃げ延びた僅かな住民は震えながら語る。

 王都で繰り広げられた、魔王と“黒き冒険者”の戦いを。


「まるで世界が終わるかと思った……」


 そう口にする者の顔には恐怖と絶望が刻まれ、聞く者の胸にも黒い影を落とした。


 だが、逃げられなかった王国民は魔王国の住民として生きているという。

 後日、魔王国から戻ってきた商人が言った。


「以前と変わらず穏やかに暮らしていましたよ」


 しかし別の者はこう語った。


「いや、あれはおかしい。魔王の悪口を言ったら、あんなに優しかった彼が烈火の如く怒り出した。家族を失ったはずなのに、むしろ“感謝”していると言っていた……まるで……亡霊か何かに取り憑かれているみたいだった」


 不気味な噂は広がり、各国は非常事態宣言を発令する。

 そして情報収集に奔走する中、一通の手紙が発見された。


 封蝋には、確かにリヴェルタ王国の紋章。


 差出人は――


 エルリナ・フォン・リヴェルタ。

 リヴェルタ王国第二王女。

 

――

 私達は王都の地下に潜伏しています。

 戦える者を募り、王国を取り戻すための組織を編成しました。

 魔王国民となってしまった者は悪魔に取り憑かれ、自分を見失っています。

 ですが、組織にいる薬師が作った治療薬で、正気を取り戻すことができます。

 しかし……私達には物資も、戦力も圧倒的に足りない。

 どうか……助けてください。

――


 各国は困惑した。


 本物か。

 罠ではないのか。


 ――だが。


「我ら神聖国ラエルディアは、神の教えに従い救いの手を差し伸べよう」


 唯一神ラエルディアを信仰する宗教国家、神聖国ラエルディア。

 彼らはこの手紙を信じると宣言した。


 魔導国ラゼリス。

 帝国ヴァルラグナ。

 そして神聖国ラエルディア。


 三大国が動き出す。


 リヴェルタ王国陥落は、一つの国の終わりではない。

 世界の均衡を崩す大きな序章に過ぎなかった。


 

 ――そして、物語は次なる舞台へ。


 第一編《王国編》 完





 これにて第一編とする王国編は終了になります。

 次回、幕間を挟みまして、第二編を始動していきます。

 よろしくお願いいたします。



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