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第四十八話 黒の覚醒


『……あれ?』


 暗闇だったはずの視界が、急に開けた。


 王宮最上階。

 崩壊寸前の玉座の間で、轟音と震動が響き渡っている。


(……戻ってきた?)


 終の目に映るのは、二つの巨大なエネルギー。


「タケっち、最終奥義――雷鳴武神斬!!!」


 タケっちが叫ぶ。

 大剣が雷を纏い、稲妻と光が眩く閃く。

 前に突き出された大剣から雷撃を纏った衝撃波が放たれ、空間ごと抉る勢いで一直線にラディウスへと向かう。


 

『ラディウス奥義――《黒焔終獄葬》。』


 ラディウスも低く呟く。

 両手をクロスし、召喚した巨大骸骨の口から地獄の業火のような黒焔が噴き出す。

 溶岩を思わせる黒い炎は、ドラゴンのブレスのように唸りを上げ、タケっちの雷撃と正面から激突しようとしていた。


(……洒落にならないな)


 二つがぶつかれば、王宮どころか王都ごと消し飛ぶだろう。


 終は小さく息を吐いた。


『……物は試しだ』


 そう呟き、手を前に出す。

 黒い魔力を解放すると、冷たい液体が血管を逆流するような感覚が全身を駆け巡り、背筋を這い上がる不快感が襲った。


 だが、迷っている暇はない。


 次の瞬間――


 二つの大技が、終の前で消えた。


 雷の奔流も、黒焔の業火も、すべて黒い魔力と共に終の体へと吸い込まれ、霧散した。


 一瞬の浮遊感の後、五感が戻る。

 手足を動かすと、いつも通りに動く。

 痛みもなく、体は完全に回復していた。


「なっ!! シュウやないかいっ!! お前な、男と男の勝負に割って入っちゃあかんでっ!!」


 タケっちが大剣を振り上げたまま叫ぶ。


『……我が主人。無様な姿をお見せし申し訳ございません。そして遂に力を制御されたご様子。さすがでございます』


 ラディウスは静かに頭を下げた。


 気づけば、二人の間に立っている自分がいた。


(感覚だけど、これは“不死の力”が発動したみたいだ。……なるほど、僕も結局手のひらの上ってことか)


 確実に死んだという実感。

 だが、怪我は回復し、体は完全復活している。

 この世界に来たときと同じ、超常の力の干渉を受けた感覚があった。


 思い出す。

 あの時、“黒い影”は渡そうとしていた。

 『魔王の力』とやらを。


(……なんか癪だな。僕が欲しがったみたいじゃないか)


 だが、目の前のタケっちとラディウスを見て思う。


(……いや、この世界には“魔王”に匹敵する存在がいる。だったら――この力も、僕がいろいろやって手に入れたんだから、僕のものだよね)


 終は小さく不敵に笑みを浮かべ、二人に向き直った。


「あはは。ごめんごめん。まだ力の制御が完璧じゃなくてさ。……でも、勝負は一旦お預けだよ。これからやらなくちゃいけないことがあるからね」


 タケっちは不満げに唸り、ラディウスは恭しく頭を下げる。


 そして――


 王宮での戦いは、静かに幕を下ろした。




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