表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/83

第三十五話 蠢く悪意


 気味の悪い、ねっとりとした空気が地下空間を支配していた。

 この淀んだ邪悪さは、祭壇から漏れ出す何かのせいだろう。

 重く淀む空気を吸い込み、終は仮面の奥で息を吐く。


 

 テントの奥から現れたグラディウスは、嫌悪感を覚えるほどに下劣な笑みを浮かべていた。

 そしてその隣で、同じく醜悪な笑みを浮かべる司祭が声を上げる。


「この者が誰かはわかるな? 貴様らドブネズミなどひとたまりもないわ」


 終とバンを見下ろすように言い放つ司祭。その隣でグラディウスが低く笑った。


「まあ待て。こいつらがドブネズミなのは否定しないが……無駄な喧嘩は俺の趣味じゃない。今日は大事な取引の日だからな」


 グラディウスの余裕のある声色と、司祭の興奮した声が空間に響く。

 だが終は返答しない。仮面越しの視線だけで圧を返す。


「……そんなに睨んでも怖くはないぞ。さあ、例のモノを出すのだ」


 催促するように司祭が言った。

 終は舌打ちをし、胸元から小瓶を取り出す。


 赤黒く光る丸薬が入った瓶。

 それを奪い取るようにして受け取る司祭。その目は、獲物に飢えた獣のように血走っていた。


「これが……!」


 恍惚とした表情を浮かべる司祭は、肥えた体からは想像もできない俊敏さで祭壇へと駆けていった。


 

 その背を眺めながら、グラディウスが低く笑い終達に声をかける。


「“本物”かどうか……お前達も見ていけよ」


 そう言うと、近くにあるテーブル席を顎で指す。

 終とバンは無言で椅子に腰かけた。そこは祭壇を真正面から見下ろせる、まるで観覧席のような場所だった。


「始まるまでに時間がある。少し……喋ろうじゃないか」


 自慢げに語り始めるグラディウス。その声には、得意げで傲慢な響きがあった。


「これから何が起きるか、わかるか?」


「……貴様らのいう神とやらを復活させる儀式だろう」


 バンが低く返す。

 だがグラディウスは「復活? まあ、ある意味ではそうだが」と含み笑いを零すと、腕を組み、顔を上げた。


「実際は違う。あの司祭は神が降臨すると信じて疑わないが……御伽噺に過ぎんよ」


 バンの瞳が怪しく光る。


「じゃあ……何が起こる?」


「まあまあ、慌てるな。今日までの俺の苦労話を聞いてくれよ。……あの王女、エルリナが体調不良だったことは知っているな?」


 ぞわり、と終の背に冷たいものが走る。


「あれは……俺達が仕組んだことだ。この空間に蔓延る邪悪な魔力……感じてるだろう?」


 グラディウスは満足げに喉を鳴らす。


「俺達は儀式のため、魔獣や魔物、魔人すらも生贄に捧げ続けた。祭壇にあるあの壺、見えるだろう?」


 指差す先には、禍々しく黒光りする壺があった。


「この祭壇は、邪悪な魔力を集める性質を持つ。だが、留めておける容量には限界がある……わかるか?」


「……まさか」


 終の声に、グラディウスが嗤う。


「その“まさか”だ。魔力を留めておく器が必要だった。そしてそれが……あの王女だった。運がいいことにな」


 終の奥歯が軋む。


「準備は順調だった。だがある時、計画が狂う。どこぞの薬師が現れ、王女に溜まっていた邪悪な魔力を逃がしちまった」


 視線が終へと突き刺さる。


「計画は振り出しに戻った。だが運命は俺達に味方した……お前達の持つ、あの“超魔薬”。それを代用できる……と、司祭は信じた」


 静寂が落ちる。

 やがてグラディウスが、冷たい笑みを浮かべながら告げた。


「俺か?俺は無理だと早々にわかった。……だからそれを逆手に取ったんだ。目的が達成できなくても、別の形で利用できるんじゃないかってな。……さっきの問いの答え、聞きたいか?」


 終もバンも、無言でその続きを待つ。


「……“悪魔の召喚”さ」


 グラディウスの声が静かに響く。



 

▼お読みいただきありがとうございます!

ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります!

感想や活動報告へのコメントも大歓迎です。


毎日21時更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ