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苦手な方はご注意ください。

魔猫と人の子 時々、 番外編 新年から七日目

作者: 原田 和





 「せり」


 「にゃ」


 「なずな」


 「にぃ」


 「ごぎょう」


 「なぅ」


 「はこべら」


 「ぶにゃ」


 「ほとけのざ」


 「にゃむ」


 「……足りないね」


 「んにゃー」


王都裏山に、木々に隠れるようにある古びた小屋。

見た目は古いが中は手直しされ、狭くとも快適な空間が広がっている。此処がパクたちとファスの家…もとい、巣だ。

冬でも暖かいこの巣で、今日も一人と六匹は仲良く過ごしている。

今は倉庫にあった薬草を広げ、本とにらめっこしながら目的のものを探している。新年から七日後の今日、七草がゆというものを食べる風習があると知り、食べてみたいというパクたちの要望に応えるつもりであったのだが……。二つほど、足りない。


 「すずな、すずしろ。これってなんだろう……」


図鑑をめくり、全員で目を凝らすが、絵が無い。


 「にゃ、にゃーにゃ」


パクがある一文を見つけた。すずなはカブ。すずしろはだいこんの事、とある。

カブなら、倉庫にある。


 「だいこん……」


 「にー……に?にゃん」


だいこんについての記述がないか、ソラが必死に探す隣で、しらゆきが見つけた。

七草はその時々によって変遷がある、と。


 「じゃあ…こだわらずに、あるもので七草がゆにしてもいいってことかな」


にゃあ!と全員が揃った。

探してなければ、代用したらいい。ファスは頷いた。

ならばあと一つはどれにしようか。カブが入っているのなら、根菜を入れてもいいかもしれない。

材料からして胃に優しそうであるから、邪魔をしないものがいいだろう。ファスはじぃ、とテーブルを見渡す。


 「じゃあこれをいれて、七草にしよう」


ファスが手にしたのは、三つの小さな葉があるヤマミツバ。これで揃った。

小さな台所に立つと、お米を火にかけ、早速洗って刻んでいく。とんとんと音を立てていると、爽やかな香りが漂う。

お米が沸騰したらかき混ぜ、火を弱めて少しお湯を足し、まずはカブ。そして七草を入れてコトコト煮込んでいく。味付けは様子を見ながら塩を入れる。

初めて作るものだから、ファスの目は真剣だ。見守るパクたちも、つられたようにきりりとした顔。


 「……どうだろう…」


小皿によそって、一口。お米の甘味と塩加減は丁度いい。ふわりと香る七草もいい……と思う。ファスは待っているパクたちにも味見を配る。


 「どう……かな」


 「………にゃ!」


パクたちは空の小皿を掲げた。気に入ってくれたようだ。ファスはにっこり笑うと、もう一品、と作り始めた。パクたちは薬草を片付け、テーブルを拭き、お皿を運びセッティング。わくわくと席に着いた。

すると……戸を叩く音。

向こうの知った気配に、耳を動かしていたはやてとダイチが出迎える。やはり、冒険者三人組であった。


 「こんにちは、来てくれたんですね。寒かったでしょう」


 「こんにちはファスさん!パクちゃんたちも!」


元気印のうらら、鼻の頭を赤くしながらも笑顔で挨拶。もふもふたちにも手を振っている。


 「ファスー!会いたかったー!!」


カイはがばりとファスに抱き着く。彼らは依頼先での年越しとなってしまい、こうして会うのはひと月ぶりであった。お疲れ様です、とファスは少々赤くなりながらも、疲れている友人たちを労わる。そして、トオヤにも挨拶しようとしたのだが……彼だけは随分と疲れた様子で。

そういった部分はあまり外には出さない性格なのだが、今は取り繕う余裕もないらしい。一体何があったのか。ファスはカイを見上げた。


 「あー、多分メシだな」


 「え?」


 「あのね、私達依頼自体はすぐ終わらせたんだけどさ、向こうで盛大にお礼されちゃったんだよね。もうすんごい、すーごいごちそう。領主さんが大盤振る舞いしてくれちゃって」


 「呑めや食えやのどんちゃん騒ぎが続いてさ。元々祭り好きなんだろうな、それが二週間ぶっつづけ」


 「二週間……?!」


それぞれ己のペースを守り続けたものの、ほぼほぼ肉三昧酒三昧な食事に、トオヤの胃はやられたらしい。帰りは魔物が現れても、溜めなしのえげつない攻撃で即殺していたそうだ。八つ当たりである。


 「トオヤほどじゃねーけど、まぁ俺らもちょっとなー……」


 「うん…。今まで感じた事がない疲れがあるよね…」


それは確かに、疲れるだろう。ファスは三人にまずは薬草茶を出した。そしてお鍋を確認。おかわり分も用意していたので、なんとか人数分はありそうだ。おかゆをよそい、持っていく。


 「これ、七草がゆを作ってみたのでよかったら…。食べられないようでしたら、薬湯用意しますので」


 「助かる。ありがとう」


 「トオヤ大丈夫…?」


トオヤは強い力で、がしりとお皿を掴んだ。求めていたのはこれだと言わんばかりに。うららが心配気に声を掛ける。今日まであまり食べていなかったらしい。しかし、彼はゆっくりと食べ始めた。なんとなく見守っていたパクたちも、スプーンを持っていただきます。


 「うまい……」


 「しみる……」


 「やーさーしー……」


にゃあにゃあと、パクたちにも好評だ。ファスは安堵し、優しい笑顔を浮かべる。

今年も、こうしてみんなと過ごせますように。そう願いながら、台所へ戻る。きっと足りないだろうから、何か作っておかなくては。

ごはんを作るファスは、いつも楽しそうだ。パクたちは顔を見合わせ、ゴロゴロと喉を鳴らし合った。






事故がありました。

あれ、数時間前にこれ見たぞ…?しかも長編設定で。という方、完全にこちらの操作ミスです。

設定間違えておりました……

慌てて直しましたが、またやらかしていたらスミマセン

最後のチェック、大事ですね



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