ゴミ屋敷と子供
私が立っているのはごみの上、ぐちゃぐちゃで粉々でそうとしか言えないゴミの山。
臭いが全くしないせいか、もしくは鼻が慣れてしまったせいか
不快感は感じない。
見慣れてしまったせいか、もしくは私が幼稚であるせいか
違和感は感じない。
床同然のゴミの山。
「ぐちゃぐちゃ」
そんなのしかない私の周りで、どこにいたっておんなじことなのに、私は動き出していた。
うねうねと。
ずりずりと。
はたから見たらイモムシでしかない、けれど今は私しかいない。
むくむくと這いずっていた。
そんなおかしなことは、しかし私にとってはいつものことであるから
さしてきにすることでもない。
そう、日常。いつもどうり。
普通でないことを上げるとしたら、私が二足歩行してもよい年齢であること。
そして、確かに2年前までは人間らしい動き方をしていたはずであること。
突然ゴミしかないはずの下から音が鳴った、
「ぐぎゅ~~~」
おなかの音
久しく聞いていなかった、嫌な音。
私の下に、もうゴミしかないから出てしまった
体からのとても大きな知らせ。
頭からも悲鳴が上がる。
「早く食べたい」
「たらふく食べたい」
「何でもいいから食べたい」
そんなことを思ってしまったら、
枯れに枯れてしまっていた生存欲が、
奥に奥にしまっていた心が、
喉から
目から
腕から
足から
あふれ出てしまう。
「UeeeeeeeeeeeeN」
年頃の子にふさわしい、
痛々しくも愛おしい音が響いた。
誰かに助けを求めるかのように、
家中に、
この子をこんなにしたゴミ屋敷のいたるところに。