196-200
196遠近法
麻縄でできた身体の隙間から
枝葉が伸びてきて
夏らしい
麻縄は解けかかっていて
引っ張ればするすると
抜けていって
人の身体を保てないほど緩い
周りに生えている
草木と同化する
足の下はすでに根を張っている
イモムシが地面から足に這い上がってきて
蜂は枝葉から咲いた花に纏わりついている
夕空が流れて
夜空に星が光り
真夜中の時計を秒針が告げる
息をすることのない自分の口の形をした
何かが何物でもないように
何物でもない何かが
幾何学造形物であるように
曲線と流線が交わる数学的国語
挨拶と方程式が接触する国語的数学
0の並びに1が一つだけある
それは遠近法という名の二進法
取っ手のついた言葉
宇宙のスープですする素麺
麻縄でできた身体の外は世界の樹
197メタリックカラー
シャボン玉が
メタリックカラー
自動車が有機的迷彩色
未来の世界に生きている
過去の世界では死んでいる
恐竜は懐かしむ
かつて人造人間だったことを
198関係ない人
宇宙の理論という
地平線上のバイオハザード
バイオハザードという名の
おせち料理のレシピ
おせちよりお雑煮が好きで
カツオと海苔をたっぷりかける
関係ない話を
関係ない人にする
絵画的会話
199明日の昨日
米俵と米粒を天国行きか地獄行きかの天秤にかける
君みたいな動物は研究の吐瀉物
美人になろうとそれは詐欺広告
沈沈亭昏々の演目はらくだ
多数決で一人を決めてその一人で多数を選ぶ不公平
紅茶に麦茶を混ぜて麦紅茶クックパッドに載っている
言葉は時として無情な有機化合物
鬼太郎の同人詩集は在庫だらけ
置き手紙に書かれた購入予定リスト
作り置きしておいたカレーが腐って祠で祀る
林が微妙に足りてない
憧憬は足元にある真理
口と口を結ぶストロー
赤をルーン語でレッドという
橋本環奈は可愛くない可愛いどちらかの壁を抜ければドブ
明日の昨日の今日の晩ごはんはゼリーで決まりだね
200アコースティックなギターなカスタネット
アコースティックなギターなカスタネットの弦が震えているような声で語る時事問題の恋愛事情はバスの中で時間を過ごす自由な不動尊のお祈りを教会の鐘がなるごとく数式が解けないまま論文に掲載される自明の理科実験のフラスコを揺らすとこぼれるコーヒー豆の大きさは地球規模のお部屋掃除で見つかる0の数が那由他の彼方にあってDQNか厨ニかを決める会議に遅れる新人社員の恋愛事情は時事問題で語る声の震えは弦のようにカスタネットを鳴らすロックな音楽でもギターはアコースティック