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ep88 魔術演習

 *


「あははは。ライマスくんらしいね」


 苦笑いするしかないフェエルに、エマが呆れながら毒づく。


「心配して損したし。てか、あーしらに失礼な態度したこと謝れよアイツ」


「エマちゃん。それはしょうがないよ。事情が事情だもん」


 店を助けてくれた一人であるライマスに対してミアは寛容的だ。


「ライマスくん、余裕がないんだよ」


 みんなと会話しながら、ちょうど教室に入ってきたハウ先生へとぼんやり視線を転じた。

 数秒後。先生の口から飛び出してきたトピックに、まだ喋り続けていた俺たちの意識は一挙に持っていかれる。


「来週、特別クラスとの合同魔術演習を行います」


 クラス中のほとんどが、虚を突かれて「えっ」となる。

 特異クラスではこれまで、まるで自習時間のような魔術演習しか行っていない。

 ここに来ていきなり「特別クラスとの合同魔術演習」などと言われても当惑せざるをえない。


「先生。具体的に何をするのですか?」


 ユイミ・テレジア・ジークレフがいかにも学級委員長らしく冷静に質問した。

 彼女は相変わらず凛として美しく、まったくもって動じていない。


「合同っていっても、まさか一年生全クラスではないですよね〜?」


 紅髪のイケメン男子、セリク・クレイトンが笑みを浮かべながら質問を重ねた。

 彼も同様に平常どおりで、むしろ面白がっている雰囲気すらある。


「詳細はまた追ってお伝えします」


 結局、ハウ先生から返ってきたのは、木で鼻をくくったような回答のみだった。

 学級委員長とセリクを除く全員が、不安な面持ちを(にじ)ませる。

 こういう時に限って、真っ先に文句を飛ばしそうなトッパーたち不良連中はいない。

 

「そういえばアイツら、最近学校に来てないよな」


 エマの証言により、俺のわいせつ冤罪事件の関与を暴かれたアイツらは、ハウ先生の厳重注意に留まった(エマとミアも同様)。

 ヤツらが裁かれないことに対して思うことはある。

 しかし、ヤツらが裁かれるとなると、必然的にエマとミアもそれ以上に厳しい処罰を受けることになる。

 だから、もうこの件について、俺は考えないことにした。

 今となってはアイツらのことはどうでもいい。

 迷惑さえかけてこなければ、こちらからは何もない。

 今はそんなことより......。

 

「特別クラスとの合同魔術演習、か」


 これをなんとか乗り切らないと。


「何を怖気付いておる」


 イナバが机の上から俺の頭にぴょーんと飛び乗ってきた。


「お主の魔法で全員溺れさせてやればよいじゃろう」


「そんな野蛮な!てゆーかそれ黒歴史だからな!」


「思い出の黒歴史だね」


 フェエルはクスッと吹き出してから、気持ちを改めて前向きなことを口にする。


「内容にもよるけど、ぼくはまたこの前みたいにみんなで協力できたらいいな。ジェットレディにも褒められたしね」


 それは先日の『キャットレーパン工房ねこパンち!集客大作戦』のこと。


「たしかに。楽しかったもんねー」


 同調して顔を(ほころ)ばせるエマとミア。


「授業でもあんな感じでやれたら最高かも」


「でもそのためには......」とフェエルが何かを言いたそうに俺へ視線を投げてきた。

 即、ピンと来る。

 だけどそいつは無理なご注文。


「授業でヤソミにはならないからな」


 みんなの顔はやや残念そうだけど、それはできない。

 モニュメントをぶっ壊して意味不明な啖呵を切った〔狂乱の破壊姫〕は、もはや学校では有名人だ。

 これまで色々あったけど、もう悪目立ちはしたくない。

 俺は平和な学園生活を送っていきたいんだ。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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