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ep86 魔法学園

 *


 

 ようやく魔法学園生活に慣れてきて気づいたことがある。


「魔法学園というからには、もっと魔法の扱い方を手取り足取り教えてくれるのかと思ったけど、そうでもないんだな」


 俺の率直なレビューにまずリプをくれたのは、教室では常に俺の隣に座るフェエル。


「うーん、先生にもよるんじゃないかな?ぼくには特別クラスのことはわからないけど」


 これを受けて、元特別クラスのあの人が口をひらいた。


「たしかにハウ先生の魔術授業は、特別クラスとは全然違うよ。なんてゆーか、自由?」


 エマの言うとおり、たしかに自由だ。

 基本的にハウ先生は生徒たちに得意な魔術を自由にやらせて、あとは見ているだけ。

 これで本当に国家魔術師になれるんだろうか?

 

「本当にこんな授業で大丈夫なのかなって思うことはあるよね」


 俺が持つ不安をミアも口にした。

 

「自由なのは良いことだとは思うけど......」


 それゆえにトッパーたちのような不良にとって居心地の良い場所になっているんだろう。

 そこまでミアは言わなかったが、否定できない事実だと思う。

 得意クラスが不良クラスと言われる所以も、そこにあるのかもしれない。


「まっ、あーしらはあーしらで頑張ってくだけじゃね?」


 沈みそうになったムードを吹き払うようにエマが明るく言い放った。

 グレていた人間が言うと説得力あるな、と言いかけたが、喉元で抑えた。


「なんだよヤソガミ」


 俺の微妙な様子を敏感に察したのか、エマが怪訝な眼差しを向けてくる。


「おまえが言うなって顔してんな?」


「そ、そんなことないぞ」


「いーよ。自分でもわかってるし。でもあーしは改心したんだ」


 えっへんとドヤ顔を決めこむエマ。

 正直ツッコミたいことはあるが、エマの明るさは気を楽にさせてくれる。

 みんなも同じ気持ちなんだろう。


「エマちゃんの言うとおりだね」


 フェエルとミアから笑顔が(こぼ)れた。



 放課後。



 四人揃って校舎から出ていくと、前方にトボトボと歩く知っている男子の背中が見えた。

 

「あれ、ライマスくんだよね」


 フェエルも気づいたところで、みんなでいって声をかけた。

 ところがライマスの反応はやけに鈍い。


「あ、ああ、君たちか」


 言い方が引っかかった。

 もともと独特な言葉使いをするライマスだが、俺たちに向かって「君たち」なんて言ったことはない。

 これはコイツの個性から来るものじゃない。

 ただ単によそよそしい。


「どうしたんだ?」


 すかさず俺が(たず)ねた。


「なんかあったのか?」


「な、なんで、そんなことを訊くんだ。べ、別に何もないぞ」


 言いたくないってことなのか?

 何もなさそうには思えない。

 とはいえ、こんな場所で無理に問いただすのは配慮に欠ける。

 ここはさっさと引き下がっておこう。


「そうか。ならいいけど」


「わかったなら、こんな所であんまり話しかけないでくれ」


 まるで俺たちを忌避するようなセリフを吐いたライマスは、逃げるように立ち去っていった。


「なんだよ?アイツのあの態度」


 遠ざかっていく彼の背中を眺めながらエマが毒づいた。

 

「きっとなんかあるんだよ」


 フェエルとミアがフォローするが、ふたりも何か引っかかっている様子。

 

「寮に帰ってから小僧が訊ねてみればよいじゃろうて」


 イナバが俺の肩の上から言った。


「どうも人目を避けておるようにも見えたしな」


 それは俺も気づいた。

 あまり面白くない推測が立つ。

 もちろん本人に聞くまでは推測どころか憶測に過ぎない。

 あとで確かめよう。

 できれば思い違いであって欲しいが。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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