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ep82 恋バナ

「あっ、ヤソミん。エマちゃん」

「ヤソガミくん。エマちゃん」


 待ち合わせをしていたフェエルとミアが、予定通り集合する。

 助かった〜、と思った。

 正直、まだ俺にはエマとの二人きりの時間は難易度が高過ぎる。

 ただでさえ家族以外の女子とふたりきりで出かけたことなどないんだ。

 一応バッグの中には白兎がいるけど、こういうときに限ってイナバは寝てしまっている。

 もはやフェエルとミアが救世主に映った。


「病院はどうだった?」

「ダイヤモンドクラスの医療魔術師の先生なんだよね?」


 ふたりが席に着く。が、エマはお構いナシ。


「で、ヤソガミのタイプはどーなんだよ」


 思わずフェエルとエマが「え?」となる。


「ふたりはなんの話をしていたの?」


 フェエルが訊くなり、エマが喰い気味で答えた。


「好きなタイプはなにかってハナシだよ」


 それを聞いたフェエルとミアは、なぜか心なしかぎこちなくなる。

 え、なに、この感じ。

 なんだか答えなくちゃいけない空気になっている?

 ならば何か言わなくては。


「ええと...」


 途中で言葉を引っこめる。

 なぜって、やけに三人とも耳を澄まして聞こうとしているから。

 いやいや言いづらくなるからやめてその感じ!


「あ、あの」


 ここで意外な人物が口をひらいた。

 ミアだ。


「ヤソガミくんって、その、気になるヒト、いるの?」


 この瞬間、話題のジャンルが完全に恋バナへと移行する。

 それは俺にとって、さらなるハードルの上昇を意味する。


「き、気になるひと?」


 誤魔化すように鸚鵡(おうむ)返しをしたが、聞こえてんだろ!というツッコミすら入らない。

 三人ともただ黙って聞く姿勢を崩さない。

 どうしよう。困ったが、よくよく考えると、さっきの質問より簡単なことに気づいた。

 いない、と答えれば済むからだ。


「そんな人いない...」と答えかけた刹那。

 俺の声をかき消すように何者かが割り込んできた。


「ヤソガミ氏の気になる人はただひとり、ジェットレディ(巨乳)だろう!」

 

 その男は、いつのまにか音も立てずに俺たちのそばに立っていた。

 

「ライマス!?」


 三人がびっくりする中、俺だけ冷静に問う。


「お前、ひょっとして、ずっとこっそり店にいた?」


「なっ!」


 ライマスはぎくりとしてわたわたとする。


「や、ヤソガミ氏は気づいていたのか!」


「いや、そうなんだろうなって思っただけだけど、図星だったか。なんで声かけて来なかったんだよ」


「そ、それは、ヤソガミ氏がリア充全開を見せつけるからではないか!」


 もちろん彼が店にいたのは偶然ではない。

 フェエルとミア同様、ライマスも予定通りの合流だ。

 今日、この後みんなで打ち上げをするため。

 先日の『キャットレーパン工房ねこパンち!集客大作戦』のお疲れ会だ。


「じゃあ、メンバーも揃ったことだし、行くか」


 流れを断ち切るように俺は立ち上がった。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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