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ep81 デート

 *


 魔法病院を後にすると、俺たちはカフェに寄った。

 休日の午後、ギャルお嬢とお茶する俺。

 よくよく考えると、今までの俺にはありえないシチュエーション。


「でさぁー!マジウケるっしょ!きゃっはっは!」


 陽気にぺちゃくちゃと喋ってくるエマに、俺はひたすら愛想笑いで返す。

 それしかできない。

 ギャルとの会話を盛り上げるスキルなど、俺は持ち合わせていない。


「てか、あーしのハナシちゃんと聞いてる?」


 案の定、エマが怪訝(けげん)な眼差しを向けてきた。


「それ、ホントにデートだったらアウトだぞぉ?」


 エマはぶーっとふてくされてみせた。

 いざこうやって打ち解けてみると、エマは実に表情豊かで親しみやすい女の子だった。

 生意気で気は強いが、嫌味はないし、案外気取ったところもない。

 などと考えている俺をエマがじ〜っと見つめてくる。

 

「ほんとヤソガミって、ヘンなやつだよな」


「俺はフツーだと思ってるけど」


「だいたい魔力ナシってなんだよ??イミわかんね〜」


「それには俺もびっくりしているけど」


「魔力の弱さで悩んでたあーしがバカみたいじゃん」


 エマは参ったとばかりに両手を上げてから、姿勢を戻して微笑を浮かべた。


「でもさ。おかげで完全に吹っ切れたし」


「悩んでるのがバカらしくなったか?」


「うん。それにさ?ヤソガミのアイディアで、駅前の池を使って鏡魔法やったじゃん?」


「あれは良かったよな」


「あんな発想、あーしにはなかった。それで思ったんだ。やり方次第で可能性は広がるんだなって」


 少女のような顔になって、エマは遠くを見る。


「やり方次第で、あーしも国家魔術師になれるんじゃないかって」


 それから彼女は俺に向かってニカッと快活に笑った。

 ここで、ふと気づく。


「そういえばエマの髪の毛の色って、紫が入っているよな」


「そーだけど?」


「ひょっとして、ジェットレディを意識してるのか?」


「なんだよ、今さら気づいたのかよ」


「本当に大好きなんだな」


「あーしにとっては憧れのヒーローでありアイドルでもあるから」


「そのわりにはドクター・ベルリオーズに対しては意外となんともなかったよな」


「なんでベルリオーズ先生が出てくんの?」


「だってあの人、ダイヤモンドクラスの国家魔術師なんだろ?憧れないのか?」


「はあ?ジェットレディ(推し)以外キョーミないし」


「なんとも潔い答え......」


「それにあーし」


 エマはおもむろに頬杖をついて意外なことを口にした。


「あういう完璧イケメンって、なんか苦手だし」


 青天の霹靂(へきれき)だ。

 てっきりギャルはみんなイケメン好きでそれ以外には興味がないとさえ思っていた。

 ギャル好きのフツメン及びブサメンが聞いたら朗報中の朗報じゃないか?


「もちろん見た目もあるけどさ。やっぱり心というか、優しさというか、いざとなった時に頼れるとか、そーゆーのが大事じゃん」


 訊いてもいないのによく喋るな〜なんて思っていた矢先、エマがふんっと鼻を鳴らした。


「ヤソガミはどーなんだよ」


「え?なにが?」


「タイプだよ」


「タイプ?」


「ああーもうっ!ニブイな!好きな女子のタイプだよ!」


「えっ」


 思わず口ごもった。

 なんでそんなこと訊いてくるんだ?

 まさか......いや、ただの会話の流れか。

 よくよく考えたら、ここまでの会話のすべてはエマが広げてくれているよな。

 なんだか急に、申し訳ない気持ちになってきた。

 

「なんだよ。あーしには言いたくないのか」


 エマは()ねてプイッとそっぽを向いた。

 これ、恋愛SLGだったら好感度下げちゃったんじゃね?

 なんて考えている場合じゃない。

 フォローしなければ。


「ええと、俺のタイプは」と慌てて言いさした時。

 店の扉がカランと開いて、一組の男女が入店してきた。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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