ep79 集客アップ魔法大作戦③(ミア視点)
*
怒涛の忙しさ。
途切れないお客さん。
足しても足しても見る見るうちに減っていく商品。
後からヤソミちゃんたちも戻ってきて手伝ってくれたけど、それでも足りないぐらいの忙しさだった。
「よ、余は、何をすれば...」
「君はさがってて!」
絵を描く以外てんでダメダメなライマスくんは早々に退がっていたけど。
でも、ライマスくんの描いたポップとチラシはとっても可愛くて、特に子どもたちへの評判が抜群だった。
みんなが助けてくれた。
ヤソガミくん。エマちゃん。フェエルくん。ライマスくん。そしてジェットレディ。
みんなのおかげで、この日の売り上げは、過去最高を大きく更新した......。
「つ、疲れたぁ〜!!」
閉店した途端、みんなぐったりと崩れた。
本来の閉店時間より三時間も早い。
「ヤソミちゃん。エマちゃん。フェエルくん。ライマスくん。本当に今日はありがとうね」
「ここまでの凄まじい大盛況は店を始めてから初めてだよ。本当にありがとう」
お母さんとお父さんは心の底からみんなに感謝した。
みんなは「いえいえ」と遠慮しながらも、自分のことのように嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ミャーミャー」
店のカフェスペースで休みながら、エマちゃんが隣のわたしだけに聞こえるように話しかけてきた。
「今日のこれって、結局ヤソガミのアイディアなんだよな」
「すごいよね。ジェットレディまで呼んじゃって」
「あーしさ。なんでヤソガミがジェットレディにスカウトされた特待生なのか、その本当の意味がわかった気がする」
「うん。わたしも」
ヤソガミくんは不思議な人だ。
自分を貶めようとした、敵だったはずのエマちゃんとわたしを、救ってくれたんだ。
ヤソガミくんのおかげで、エマちゃんは踏み外していた道から戻ってくることができた。
鏡魔法の新たな可能性まで見出した。
ヤソガミくんのおかげで、うちのお店はなんとかなりそうな希望が見えた。
おかげでわたし自身も、こうやってエマちゃんと普通に話せるようになっている。
わたしの心が晴れたのも、結局はヤソガミくんのおかげなんだ。
それだけじゃない。
ヤソガミくんは、トッパーくんたちからフェエルくんも救っているんだ。
「ねえ、エマちゃん。ヤソガミくんが編入してきてくれて良かったよね」
本音だった。
本当に心からそう思うから。
エマちゃんの反応はというと、誤魔化すように目を逸らしてもじもじしている。
でも、エマちゃんだってきっとそう思っているはず。
ひょっとしたらわたし以上に。
そんな時。
「おつかれっ!後輩くんたちよ!」
仕事に行っていたはずのジェットレディが店に舞い戻ってきた。
彼女は店に入るなり、すっからかんになった店の棚を見まわした。
「どうやら、うまくいったようだなっ!」
「ジェットレディ!本日は本当にありがとうございました!」
お父さんとお母さんがバタバタと勢いよく謝意を示した。
ジェットレディは「いいですいいです」と、快活な笑顔で返した。
「ジェットレディ。今日は無理言ってすいませんでした」
ヤソミちゃんがそそくさと駆け寄ってきて言った。
「おかげで大成功でした」
ジェットレディは会釈を返してから、わたしたち全員に視線を送る。
「実はな?駅前の様子、ちょっと見ていたんだ」
え?ジェットレディがわたしたちのことを見ていたって?と驚いたのはわたしだけじゃない。
みんなびっくりしている。
「素晴らしかったぞ」
ジェットレディは優しい目を滲ませた。
「今日の国家魔術師の魔法は、〔ゼノ〕と戦うための武器としての技術となりつつある。でもな?君たちがやったような『人を喜ばすための魔法』だって、もっとあったっていいんだ。少なくともアタシは好きだぜ、あういうの」
今をときめく国家魔術師からの思わぬ賞賛。
皆一様に照れくさくも嬉しくなり、同時に誇りに思った。
そんな中でもライマスくんだけは、ジェットレディの胸元に視線を集中させていた。
数秒後、ヤソミちゃんに頭を叩かれていたけど。
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