表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/162

ep57 理由②

「えっ??」


 俺もフェエルも思わず面食らう。

 ギャルお嬢のエマがジェットレディに憧れて国家魔術師を目指していただって?

 いやそれはギャルへの偏見だ。

 それに大事なのはそこじゃない。

 

「目指していたってことは、今は目指していないのか?」

 

 ミアは気まずそうにエマへ視線を向けながら(うなず)く。


「そうだよね?エマちゃん」


「あーしは......」


 エマは目を伏せながら独り言のように口をひらく。


「挫折したんだ」


「何かあったのか?」


「ヤソガミ。オマエは知らねーだろーけど、あーしはもともと特別クラスの生徒だったんだ」


「!」


「でも、すぐにまわりのレベルについていけなくなって、特異クラスで拾ってもらったんだ」


「そうだったのか......」


「特異クラスは不良クラスって聞いていたから、ガチで不安だった。けど、レベルが低い分あーしでもやれんじゃないかって、頑張ろうって思ってた。最初は」


 エマが顔を上げる。


「なのになんでだよ?学級委員長とかセリクとか、なんであんなヤツらまでいんだよ?あいつらの魔法を見てたら、一気にやる気が失せてった。あーしには才能がないんだって」


 再びエマは(こうべ)を垂れた。


「あーしの魔法は珍しいらしいけど、珍しいってだけだ。リュケイオンに入る前から薄々気づいてはいたけど、入学してから完全に思い知らされた。あーしには国家魔術師になるのは無理だって。ちっちゃい頃からの憧れだった、あーしのヒーローだった、ジェットレディ様のようになるのは絶対に無理だって」


 くっと下唇を噛むエマ。

 そんな彼女にミアが言う。


「だから、ジェットレディのスカウトで入学してきた特待生のヤソガミくんが憎かったんだよね」


「......そーだよ」


 そういうことか。

 やっと合点がいった。

 トッパーたちとは仲間っていうより、利害が一致したって感じか。


「そして憎かったのはヤソガミくんだけじゃない」


 さらにミアは哀しそうな目をして言った。


「わたしもだよね?エマちゃん」


「......」


「国家魔術師になる夢を諦めないわたしのこと、気に入らないんだよね?」


「......」


「友達になったばかりの頃のエマちゃんは、今とはまったく違ってた。明るくて優しくて前向きで、わたしの大好きなエマちゃん......。でも、いつからかエマちゃんは全然変わっちゃった。授業はサボるし、来てもまともに受けようとしない。気がつけばトッパーくんたちと仲良くなっていて、一緒にフェエルくんをからかって笑ってた」


 ミアはうっすらと悲しい笑みを浮かべる。


「わたしにも自分と同じようにグレて欲しかったんだよね?国家魔術師の夢なんか諦めて。でも、いくら一緒に授業をサボらせようと、わたしは国家魔術師を目指すことをやめなかった」


「あーしは......そんなミャーミャーのことがムカついてたまらなかった。だから、ミャーミャーんちのパン屋の経営が困ってるって聞いて、利用できるって思った。あーしに逆らえなくさせることができるって」

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ