ep48 ミア・キャットレー(ミア視点)③
昼休み。
わたしはエマちゃんを連れ出して、裏庭にある倉庫へ向かう。
「ヤソガミの奴を完全に追い込めるってハナシ、ガチなんだろうな?」
「本当だよ。トドメの一撃になると思う」
「ふーん」
よっぽど特待生のことが気に入らないんだろうな。
エマちゃんは訝しがりながらも一人でわたしについてきてくれた。
ここまでは計画通り。
フェエルとも協力する手前、トッパーたちがいたら説明がめんどくさいなと懸念していたけど、運良く今日アイツらは学校に来ていない。
「じゃあ、入るよ」
倉庫の扉を開ける。
先に待機していたフェエルともうひとり、小柄な女の子が待っていた。
「フェル子ちゃんと...そのコだれ?」
エマちゃんは不機嫌そうに首を傾げた。
「ヤソガミとカンケーあんの?」
それは当然の疑問。
即座に当人が口をひらいた。
「はじめまして。あたしはヤソミです」
「あーしはエマだけど......アンタなんなの?」
「あたしは......ヤソガミの元カノです」
「ふーん、そーなんだ。......はっ??ヤソガミの元カノ!?」
さすがに面食らったエマちゃん。
わたしたちはとりあえずエマちゃんが落ち着くまで待ってから、ひと通りを説明した。
エマちゃんはひとしきり考えてから、ニヤリとほくそ笑む。
「そーゆーことね。だからこんな裏庭のキッタネー倉庫にまでわざわざあーしを呼び出したってわけか」
「ど、どうかな。エマちゃんのためになるよね?」
「ミャーミャーのくせにやるじゃん。いーよ。やろーぜ」
やった!エマちゃんが乗ってくれた。
これでヤソガミをいち早く完全に排除できる。
わたしはさらにエマちゃんの役に立てる。
いよいよ平和な学校生活を取り戻せる。
うまくいったぞ!
「じゃあヤソミ。アンタを使って衝撃映像を作ってやんよ」
エマちゃんは折り畳み式の手鏡を出して得意げにニヤッとした。
「あーしの〔改変〕でな」
「な、なにができるんですか?」
「あーしの鏡魔法には、この鏡を使って映像を撮る〔記録〕と、その映像を映し出す〔公開〕がある。けど、それだけじゃないんだな〜」
エマちゃんは手鏡をパカっと開いた。
「〔遠隔〕で、あらかじめアクセス設定しておいた別の鏡からも魔法を発動できるんだよね〜」
「す、すごいですね」
「でしょでしょ?あとさ?これがとっておき。〔記録〕した映像を、いじることができるんだ〜」
「いじる?」
「それが〔改変〕だよぉ〜。つまり、あーしは撮った映像を〔改変〕でアレンジすることができるってわけ」
「す、スゴイ!そんなことができるんですね!」
ヤソミは子どものように目をキラキラと輝かせて感動する。
エマちゃんは自慢げでとても気持ち良さそう。
「できちゃうんだな〜!」
「あの、ひょっとして、ヤソガミの映像も、その能力を使ったとかですか?」
「そうそう!ホントはさぁ?ヤソガミの奴、睡眠薬入りのクッキー食わされてミアにもたれかかっただけなんだどさぁ?それを〔改変〕で衝撃映像に仕立て上げたってわけ!ザマァーっしょ!」
エマちゃんはけたけたと笑い転げた。
わたしもつられてクスクスと笑ってしまう。
その時。
「これはこれはオモシロイ話だね〜」
倉庫の窓の隙間から、誰かが顔を覗かせていた。
わたしたちはドキッとして振り向く。
「セリクくん!?」
彼は窓を開けてするりと中へ入り、スタッと着地した。
「どーぞどーぞ、ハナシを続けてよ」
「オイ!セリクがなんでここにいんだよ!?」
エマちゃんがわたしを睨みつけてた。
わたしだってわけがわからない。
「わ、わたしは知らないよ!」
「じゃあフェル子!オメーか!?」
フェエルはセリクに視線を投げる。
「やっぱり来てくれたね。セリクくんは」
「それは来るに決まってるじゃないか。白ウサギがボクのところへ来た瞬間、ピンときたよ。オモシロそうなハナシだってね」
セリクの発言に合わせて窓から白ウサギがぴょーんと飛び込んでくる。
「うまくいったようじゃな」
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