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ep37 フェエル・ポラン(フェエル視点)①

 夢は、国家魔術師になること。


 それはぼくの夢で、大好きなおじいちゃんの夢でもある。

 だから、いくら学校に行くのが辛くても、ぼくは休まずに通うんだ。


 もっともぼくの場合、小さい頃からよくからかわれてきたので、多少なにかを言われたりされたりすることにはもう慣れている。

 耐性っていうのかな。

 それが自然と(あるいは不自然と?)ぼくには身についていた。


「おい、ザコフェル子」


 気がついた時には、トッパーくんたちにそう呼ばれていた。

 気がつけばパシリのようなことをさせられていた。


「なにがいけないんだろう」


 昔はそんなことも考えたけど、今ではもう考えもしない。

 きっと理由なんかあってないようなもの。

 だから、何も考えず、何も感じないようにするのが一番。

 それで痛みは消えないけど、自分なりに誤魔化すことはできる。

 あとは卒業するまで、ただただ時間が過ぎていくのを耐え忍んでいればいい。

 そう思っていたんだけど......。



「フェエル。なにか良いことでもあったのかい?」


 家でおじいちゃんにそう訊かれた時、ぼくは驚いた。

 そんなふうに訊かれたこと、リュケイオンに来て初めてだったから。


「そ、そう見えるかな」


「気のせいでなければな」


「実はね?と、友達ができたんだ」


 言ってからハッとした。

 この言い方だと、今まで学校に友達がいなかったことがバレちゃうじゃないか。

 それがバレれば、イジメられていることもバレかねない。

 そんなことになったら、おじいちゃんに余計な心配をかけちゃう。

 

「あっ、ええと」


 ぼくがあたふたとしていると、

「そうか。良かったな」とおじいちゃんは嬉しそうに顔を(ほころ)ばせた。

 その笑顔を見たらもう細かい葛藤は全部吹っ飛んでしまった。


 それからぼくは、(せき)を切ったようにヤソガミくんの事をおじいちゃんに話した。

 とんでもない魔法で教室に洪水を引き起こしたこと。

 しゃべるウサギのこと。

 他愛もない会話で笑い合ったこと。

 

「おもしろい友達だな。でも良い奴そうじゃないか」

 

「うん!そう思う!」


 やがてベッドに横になり、目を(つぶ)る。

 明日の学校が楽しみになるなんて、いつ以来だろう。

 トッパーくんたちの嫌がらせがなくなるかはわからない。

 でも、ヤソガミくんのおかげで、ぼくの学校生活は変わるかもしれない。

 そんな期待に胸が高鳴るんだ。

 そう思っていたのに......。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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