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八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった  作者: 根立真先
入学編

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ep31 魔術演習

 *


 午後の授業が始まる。


 昨日と同じように設けられた教壇のスペース前に生徒たちが集まった。

 言うまでもなく、トッパーたち不良どもは壁際の奥に座ったまま。

 ギャルどもも同様。

 やはりコイツらはまともに授業を受ける気がないらしい。


 なんでわざわざ魔法学園に来ているのだろうか?

 それ以前によく入学できたよな?

 俺みたいな特殊パターンでなければ、試験とか受けているんじゃないのか?


 疑問は尽きないけど、そういう輩はどこにだっているのかもしれない。

 アイツらを気にしていたってしょうがない。

 授業に集中しよう。

 と御神札(おふだ)をぎゅっと握った矢先。


「ヤソガミ君。申し訳ありませんが今日の魔術演習は他の生徒を優先しますので」


 さっそくハウ先生に言われた。

 昼にフェエルが冗談半分で言っていたとおりになってしまった。

 でもこれは仕方ない。

 俺とフェエルは視線を交わして苦笑した。


「では、〔魔法媒介装置(アルマ)〕を所持している生徒から魔術を披露してください。ひとりひとり視ていきます」


 先生は数人の生徒を見まわした。


「最初はジークレフさん、お願いします」

 

「はい」


 学級委員長のユイミ・テレジア・ジークレフがみんなの前に出た。

 彼女はおもむろにフルートを構えると、穏やかな音色(ねいろ)を奏でる。


「〔エステ荘の噴水(ヴィラ・デステ)〕」


 美しい旋律に従って、宙に浮かんだ水がパァァァァッと発生する。

 完全にコントロールされた水は彼女の周囲に(きら)めく噴水を見事に描く。


「綺麗だな」

「そうだね。ユイちゃ......ジークレフさんは本当に凄いよ」


 あらためて目を奪われた。

 見慣れているはずのフェエルも、俺と同様に魅入られていた。

 

「以上です」


 適当なところで学級委員長は魔術を解除。

 水は教室内の何を濡らすこともなくスーッと消える。

 まさしく完璧なコントロール。


「さすがジークレフさん。魔力の扱いがさらに上達していますね。繊細な技術は相変わらず素晴らしい。その調子で引き続き向上に励んでください」


 先生も賞賛した。


「それでは続いて......クレイトン君。お願いします」


 次はイケメン男子のセリク・クレイトンが当てられる。

 学級委員長が退()がると、セリクは相変わらずニコニコしながら前に出た。


「それじゃあ控えめに」


 セリクは俺のことをチラッと一瞥(いちべつ)してから、右手に指輪をはめて前に出した。


「〔火遊び(イグニス)〕」


 次の瞬間、彼の掌からボウッと火の玉が出現する。

 それからセリクは、ボウッ、ボウッ、とさらに火の玉を作り出した。

 彼は合計三個の火の玉を手に置くと......なんとそれでお手玉を始めた。


「え〜なにそれ〜!」

「ウケる!」


 どっと笑いに包まれる教室。

 セリクは楽しそうにしばらくお手玉を続けてから、やにわに火の玉の一個をぶんと高く放り投げた。

 

「これでおーしまい」


 続けて残りの二個の火の玉も素早く投げ上げた。

 三個の火の玉が空中でバチッと接触。

 その瞬間、すべての火の玉は互いに相殺しあって消失した。


「おあとがよろしいようで」


 手品師のように礼をしてセリクは退がっていった。

 クラスメイトたちからはわあっと拍手が沸き起こる。

 俺はセリクの芸当に素直に感心した。

 一見フザケているように見えるが、それが確かな技術を要するだろうことは俺にも容易に想像できる。


「クレイトン君は本当に器用ですね。決して簡単ではないことをさらっとやってのける技術は流石です。それでは次、ポラン君。お願いします」


 先生に当てられてフェエルがびくんとした。


「や、やっぱり、ぼくもやるんだよね」


 不安そうに俺を見てくる。


「俺はフェエルの魔法を見てみたいかな。まだ見たことないし」


 笑顔で返した。

 彼を(おもんぱか)っての言葉でもあるが、これは本音だ。

 俺は純粋にフェエルの緑魔法とやらを見てみたい。

 フェエルは「そ、それなら」と言って前に出ていった。

 

「ん?」


 ふと視線を感じて振り向くと、ミアが不思議そうに俺を見ていた。


「ミア?」


「あっ、いや、その、なんかいいなぁって」 


「?」


「な、なんでもないよ!」


 にゃははと微笑むミア。

 なんとなくぎこちない笑顔に感じるが、気のせいか。


「じ、じゃあ、やります」


 フェエルが、左手に剪定(せんてい)バサミ、右手に植物の葉っぱを一枚出した。

 彼は左手のハサミで右手の葉っぱにチョキっと切れ目を入れる。


「〔太陽の花(ヘリアンタス)〕」


 葉っぱからピカァーッと緑色の光が放たれた。

 そこからわずかな間に一枚の葉っぱがむくむくと巨大な向日葵(ひまわり)へ変貌を遂げる。


「おお!すげえ!」


 思わず俺は驚嘆の声を漏らした。

 フェエルは恥ずかしそうに向日葵を床に置く。


「も、もう戻してもいいですか」


「いいですよ。ありがとうございました」


 先生の許可を得ると、フェエルはすかさず向日葵の一箇所へチョキッと切れ目を入れた。

 すると再び緑色の光が放たれ、巨大な向日葵は元の一枚の葉っぱにしゅるんと戻った。

 その時。窓際の奥から下品な笑い声が上がる。


「ギャーハッハッハ!花咲かせるって!何度見てもウケるわ!ギャッハッハ!」


 振り向いて確認するまでもない。

 トッパーとマイヤーだ。


「ちょっと〜あんまり笑ったらカワイソーじゃん」


 ギャルがけらけらと愉快そうにふたりを注意した。

 不愉快だな。

 俺はこういう連中の使う「カワイソー」が嫌いだ。

 あれは同情でも憐れみでもない。

 ただ見下して優越感に浸っているだけだ。

 そもそも本当に「カワイソー」だと思うなら、傷つけるような言動と行動を意地でも止めさせろよ。

 

「ヤソみん!ぼ、ぼくは大丈夫だから!」


 フェエルに腕を掴まれてハッとした。

 気づかないうちに俺は御神札を構えていたらしい。

 そんな自分に自分でびっくりした。

 俺ってそんなに気が強い人間じゃないんだけどな。

 ずっと陰キャだったし。

 魔法がそうさせるのか、異世界の学校だからなのか、わからない。

 ただ......もう昔みたいに、ああいう連中には負けたくない。


「ヤソみん。今日は大人しくするんでしょ?」


 フェエルの言葉に、仕方なく頷いて、御神札を下げた。


「そうだよな。大人しくします」


「うん。でもありがとね、ヤソみん」


 フェエルは嬉しそうな面持ちを(にじ)ませた。

 ......フェエルがいいなら、俺はそれでいい。

 大人しくしていたいのは本当だし、今日の目標でもある。

 そんな中。

 また俺はミアの視線に気づいた。

 彼女の大きな目は、なんだろう、どこかさびしそうに見える。


「ミア?」


「あっ、ううん。なんでもないよ」


 ミアは微かに微笑んだ。

 その笑顔も、どこかかなしそうに見える。

 気のせいだろうか。

※作者メモ

設定イメージ(画像のみAI)

挿絵(By みてみん)

セリク・クレイトン

彼もユイミ同様、能力に合わせたカラーリングにしました。

炎を使うキャラはファンタジーにおいて王道中の王道。

しかもカッコイイ奴らばかり。

そんな激戦区の中、セリクは一味違った炎キャラにできればと考えております。

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