ep28 ギャル
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「あっ、ヤソみん、おはよ...て、どどどうしたの??」
教室で顔を合わすなりフェエルが驚いた。
「ね、眠れなかったの?」
そういうわけではない。
寮の部屋は実に過ごしやすいものだった。
ルームメイトがいるとはいえ、居室内にそれぞれの自室もあるからゆっくりできた。
できたけど......。
「同部屋のライマスが変なヤツでさ......」
「そ、そっか。寮あるあるだね......」
げんなりしながらフェエルと並んで席に着いた。
ぞろぞろとクラスメイトたちが入ってくる。
トッパーたちもダルそうにやってきた。
「よぉ、ザコフェル子ちゃ〜ん」
ヤツらはさっそくニヤニヤと絡んでくる。
「お、おはよう」と会釈するフェエル。
それは明らかに無理して作った笑顔。
トッパーはさらにズイッと迫ってきた。
「今日の昼なんだけどよぉ?ちょっと色々と頼まれてくんねえかなぁ?」
「ど、どんなことなのかな」
「ああ?そんなのイロイロとだよ。イロイロと」
俺はトッパーのいやらしくニヤついた面をじっと睨んでいた。
その視線にトッパーがはっと気づく。
「な、な、なんだよ」
「......」
俺は無言でヤツを睨みつけながら、それとなく鞄の中から御神札を出すフリをした。
直後、みるみるうちにトッパーの顔色が変わりはじめ、
「ま、まあいいや」
それだけ言って壁際の奥の席へと去っていった。
「クッ!くそ!」
悔しそうにツレのマイヤーも続いていった。
ヤツらが席に着いたことを確認してから隣へ振り向くと、フェエルと目が合った。
俺がそれとなく微笑すると、フェエルは嬉しそうに微笑んだ。
そんな中。
「うぃ〜す」
ふいに見たことのない生徒が教室に入ってきた。
紫色の入った長髪をサイドテールに結んだ、生意気そうなギャルっぽい女子。
彼女は、背の低いツレのギャルを伴って、他の女子たちとチャラい挨拶を交わしながら壁際の奥へ進んでいく。
「昨日はサボりか?エマ」
「それがさぁ?イイ感じの店見つけてさぁ?ミャーミャー連れて行ってきたら学校来んの忘れちった」
「いつも気楽なやつだなーお前は」
「トッパーにだけは言われたくねえわ」
エマという女子はツレとともにトッパーたちが占拠する席へ着くなり、髪の毛をいじりながら教室を見まわした。
「あれぇ?ミャーミャーは来てないの?」
「まだ来てねえな」
そんな彼女を横目でじ〜っと観察していると、
「ね、ねえヤソみん。あ、あんまり見ないほうがいいよ」
隣のフェエルに注意された。
「あんなギャルみたいな娘もこの学校にいるんだな〜と思ってさ」
「エマ・フィッツジェラルドさんのこと?あの娘はあれでもお金持ちのお嬢様だよ」
「えっ?そうなの?」
「ジークレフさんみたいな名家とはまた違うけど、エマさんはフィッツジェラルドバンクの社長令嬢なんだ。なんでも学校に多額の寄付もしているんだって」
フェエルの話を聞いているうちに、ますますあのグループとは関わり合いたくない気持ちが強まった。
メンドクサイ想像しかできない。
改めて「今日からは目立たずにいるぞ」と誓いを立てた。
そのために今日は神使の白兎も部屋に置いてきたんだ。
当然イナバは不満たらたらだったけど仕方ない。
今は大事な時期なんだ。




