ep106 潔いやつ
「あ、あ、あ......」
眼の光を失ったマッキンリーは、まもなくバタッと地に崩れた。
次の瞬間、あっとなる。
「お、おい!!」
一目散で倒れたマッキンリーに駆け寄った。
大丈夫か?大丈夫だよな?
「マッキンリー!」
「う、うるせーな」
マッキンリーは、ぐぐぐぐっとなんとか上体を起こして、俺に顔を向ける。
「し、死んでねーから、安心しろ」
「そ、そうか。良かった」
心の底から安堵した。
もちろん力の制御はしていたけど、それでも不安は拭えなかったから。
「や、ヤソガミ。ひとつ訊いていいか」
ダメージを隠せないマッキンリーは、苦しそうに訊ねてきた。
「い、今ので、どれぐらいの加減だ?」
答えにくい質問だった。
それこそ数値化して言うことはできない。
けど、イメージとしては......。
「かなり、加減したつもりだけど」
「かなり、か」
マッキンリーは目を伏せて押し黙った。
プライドを傷つけただろうか。
でも、ここで嘘を言うのは違うと思うから正直に言った。
「くっくっく......」
なぜかマッキンリーは奇妙に笑い出したかと思うと、そのうち顔を上げて大声で笑い出した。
「ハッハッハ!マジか!ハッハッハ!」
「マッキンリー?」
「ハッハッハ!ヤソガミ!お前、マジでスゲーな!」
「はあ」
「さすがはあのジェットレディにスカウトされた特待生だ!ハッハッハ!」
しばらく笑ったあと、おもむろにマッキンリーは懐から石を取り出して見せてきた。
それはマッキンリーの簡易アルマ。
「それがどうしたんだ?」
「持ってけよ。十体、捕獲してある」
「いや、俺は別にお前からそれを奪おうとして戦ったわけじゃないが」
「いーから持ってけ。正面から闘って敗けたのに持っていけるかよ。そんなの男じゃねえ」
マッキンリーは無理矢理俺の手に石を握らせてきた。
なんて潔い奴なんだろう。
暑苦しいのは苦手だけど、やっぱり悪い奴ではなかったんだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「なんだよそれ。強いのに変なヤツだな。いやそれよりも」
「なんだ?」
「早く仲間のとこに戻ってやんな」
「どういう意味だ?」
「ナイフ使いのノエル。あいつは性格悪いぞ」
「それはフェエルたちが危ないってことか」
「それともうひとつ。おれがお前に簡易アルマを渡したのは、必ずしも良いことじゃねえってことだ」
「奪われたら結局ゼロだもんな」
「たぶん生徒会長は、お前を狙っている」
「一年生主席のシャレク・タウゼンが、俺を?」
「お前は話題の特待生なんだ。良い意味でも悪い意味でも、あの生徒会長が放っておくわけねえだろ」
「初対面なうえ敵なのに随分と親切に教えてくれるんだな」
「戦えば相手がどんな奴かは何となくわかる。おれの斧攻撃を初戦で正面から受け止めるバカなんざほとんどいねえんだ」
マッキンリーはふっと笑みを浮かべた。
なぜだか俺は好印象を与えたらしい。
こういう肉体系の男の思考は俺にはよくわからないが、恨みを持たれたり因縁にならないなら良かった。
「小僧。早く移動した方が良いぞ」
イナバがぴょんと頭に乗ってきた。
「お主を狙っている輩はその生徒会長とやらだけでもないはずじゃ」
そのとおりだ。
ここで長く留まっていれば、複数から狙い撃ちにされる可能性もある。
「フェエルたちも心配だしな。とりあえずさっきの場所まで戻る。て、場所わかるかな」
「道案内はオイラがしてやる」
「さっさと行け、ヤソガミ。おれはしばらくここで休む」
マッキンリーは、スイッチが切れたように再び体を寝かせた。
ダメージはまだまだ残っているようだ。
俺はマッキンリーを一瞥してからその場を後にした。
「あっちの決着はついたんだろうか」
つぶやきながら、途端にフェエルとミアのことが心配になってきた。
急がないと、と小走りになったのも束の間。
「ヤソガミ〜!」
「ヤソガミ氏〜!」
この声は...エマとライマス?
こちらに近づいてきている。
「あっ!ヤソガミ!」
「ヤソガミ氏!」
視線の先にふたりの姿が現れた。
全速力でこちらに向かって走っている。
どうしたんだ?と思ったが、すぐに状況を理解した。
「あーしらじゃムリぃ!」
「ヤソガミ氏!助けてくれぇぇ!」
エマとライマスは後ろに魔犬二体を引き連れていた。
息つく暇もないな。
でも、今やマッキンリーに比べたら魔犬二体など取るに足らないと思えてきた。
「とにかく、あいつらを助けないと」
さっさとあれを倒して、ふたりを連れてフェエルたちのところへ急ぐぞ!
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