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死者からの手紙

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 子供の頃からインターネットがあって、メールではなくSNSでやりとりするようになって久しい。


 そんな時代でも郵便局はまだある。主に通販の商品の流通を担うと同時に手紙も配送している。大切な文書は郵送。そのコンセンサスはまだあり、電子メールでの請求は詐欺だと未だに公的機関が通知している。


 私は同窓会の幹事を請け負うことになってしまった。面倒くさいから嫌だと言ったのに、連絡をとってるみんなから、「お前が適任だ」と言われ渋々やる羽目になってしまった。

 さて、連絡はどうしよう。ネット時代でも実名でSNSやってる人は少ない。同窓会名簿や卒業名簿で片っ端から手紙を送ってみた。


 返事が来たのが2割くらい。皆、転居したとか、都会に出て行ったとかで、住所に見当たりませんという付箋がついた手紙が返ってきた。


 でも、嬉しかったのは、好きだったA子さんから返事が来たことだ。学生時代、同じ部活でしょっちゅう話していた。彼氏がいるという話を聞いていたから、誘ったりはしなかったけど、もうちょっと強引に迫っていても良かったんじゃないかと思うことがあって、後悔していた。


 彼女の手紙には病気で同窓会に出られないけど、君が元気そうで嬉しいと書いてあった。病気? 何の病気? でも、彼女は教えてくれない。電話番号と電子メールのアドレス書いて送ったけど、そっちにはなんの連絡もなし。


 なんとかクラスの半分とコンタクトが取れたので同窓会をやることになった。

 わざわざ、東京から来てくれる奴も居て、先生はよぼよぼのジジイになっていたけど、楽しそうだった。


 やって良かったと心底思った。

 その席でA子の話をしたら、

「え? A子ちゃん死んでるよ。知らなかったの?」

 と、彼女の親友だった女の子が言った。


 そんなはずは。手紙でやりとりしているよ、今でも。とビックリして答える。

「結婚後に判明したんだけど、彼氏がギャンブル狂で借金背負って一家心中したわよ。あれはショックだったわ」


 まさか、そんな。私は誰と文通しているのか?

 まてよ。病気で動けない彼女はどうやってポストまで手紙を出しているのか? 誰かが代筆しているの?


 同窓会から帰って、さっそくその旨の手紙を書いて送った。

 返事は……


――ごめんなさい。A子の妹です。あなたのことが忘れられなくて、つい姉のフリをして書いてしまいました。傷つけてしまって悪いと思ってます。姉は死にました。悲しいことです。私は結婚に反対だったのにそれを押し通せなかったのを今でも悔やんでます。あなたがお兄ちゃんだったらよかったのに……


 妹さん? 1、2回くらい会ったかなぁ。そんなに印象良かったのだろうか?

 私は返事を書いた

――A子さんのお話を聞きたいです。あなたのお話も聞かせてください。是非一度お会いしたいです。

 よろしくお願いします。


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