銀の精霊と森の祈り
エンリリアの北方には悪しき魔のものが住まう。
その地は暗黒の地と呼ばれており、邪の力が常に虎視眈々と世界の破滅を狙っている。
ザランは、かつては唯人の魔術師であったが、ある悲劇によって心が歪み、力への渇望に取り憑かれたと言われている。
その悲劇の詳細は不明で、ザラン自身も語ることはなかったため、知る者はもはや誰もいない。
彼は力を求めて暗黒の地へ渡り、自らの魂を贄として、多くの魔物や悪しき精霊と契約を交わした。
永遠の森には、古代からの魔法の力が宿っている。
精霊ルナエルは、永遠の森の調和と平和を保ち、森に関わる生命を護る存在として知られている。
ザランは永遠の森の魔法の力を我が物にしたいと欲した。
彼は悪しき魔の力を用いて永遠の森に侵入し、森の力を奪い支配するために、自らの力を増す贄としようと多くの魔法生物を襲った。
ルナエルは彼の邪悪な意図から森を守るために立ち上がった。
月の瞳には決意の光が宿り、銀色の髪は風に舞い踊った。
「貴様の邪悪な野望はここで終わりだ。森も、生命も、すべて貴様には渡さない!」
ザランは口を歪めて嘲笑う。
「お美しい精霊風情がのこのこ出向いてくるとは愚かなり。しかしその力は美味そうだな。お前の力も我が贄としよう」
戦いは熾烈を極めた。ルナエルは自然の力を操り、光の力を駆使してザランに立ち向かった。
ザランもまた、悪しき精霊との契約で得た魔法で反撃し、二人の間には壮絶な魔法の戦いが繰り広げられた。
森は揺れ動き、大地は割れ、水は渦巻いた。
ルナエルの魔法は純粋で美しく、ザランの魔法は歪で邪悪だった。二人の力がぶつかり合い、時には空に火花を散らし、時には大地を揺るがせた。
森に住まうものたちは、皆、ルナエルのために祈った。
「護り手様に我らの力を」
「森を、生命を護る力を、護り手様に」
祈りは渦巻く光の奔流となり、それらはルナエルに流れ込み、邪に抗う力となった。
そしてついに、ルナエルの純粋な意思と森の祈りがザランを打ち負かした。
ルナエルに敗北した瞬間、ザランと悪しき精霊との契約は破られた。
契約を結んだ魔物や悪しき精霊たちが彼のもとに集い、彼に宣告する。
「契約どおり、代償として貰い受ける」
彼の身体は灰となりさらさらと崩れて風に散り、彼の魂は永遠の闇の中で魔物や悪しき精霊たちに食らわれ続ける。
彼の邪悪な魔法はルナエルの光の前に消え去り、ザラン自身もその闇の中に消えた。
かくして永遠の森は守られた。しかしルナエルもまた力尽きた。
ルナエルはもはや姿を保っていることすらできずに、黒い小さな塊になって落ちていった。
このあと、子供時代のアルディウスに救助されます。
月の約束→ https://ncode.syosetu.com/n0159ij/
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