2.インプットなくしてアウトプット出来ず
さてちょっと時間が空いてしまったが、コロナのせいで高熱でどうしようもなかったのだ。
ようやく、真っ当に頭が動き出したのでリハビリついでにエッセイを書こう。
という訳で、息抜きの時間だ―!
さてタイトルであるが、そのままである。要するに、自分の好きな作品ばかりを見ていると主義・思想が偏り、正常な判断が出来ない事が多い。
なろう系を愛読するのは、50近くのおっさんと20代前後の若者だと思う。おっさんなら、色々なジャンルの作品を読んでいるかと言うとそうでもない。
評論系のエッセイなどを見ていると、明らかに歳を取った人物がある作品を批評する際に必ずと言っていい程、ジョジョの話しかしないのだ。
……他にも作品は山の様にあるだろうに、よりによってジャンプ系の話しかしない。後はベルセルクとか、良くてエヴァンゲリオン、ゲームもドラクエにファイナルファンタジー位しか出てこない。
そんな狭い料簡での批評なんか聞いた事が無い。少なくともハリウッド映画とか、昔のライトノベルとか色々とあるだろうに。これが主義・思想が偏っているという現象である。
お粗末な事にその評論は、ほとんどの場合「萌えを連呼するおっさんの気持ちの悪い妄想」と吐き捨てる。
……それはただの悪口では?
自分の知っている批評と言うのは、少なくともその作品の良い点・悪い点を纏めながら、~の流れがあってとか、この作品のオマージュでといった話の持って行き方をすると思っている。
要するに『文句だけ言って終わりでなく、きちんと改善策や代案を出せ』という事である。
「暗いと不平を言うよりも、進んで明かりを付けましょう」と言うテレビ番組があったなぁ。あれは良いスローガンである。
でタイトルの内容となるのだが、読者の方がどういった経緯を以てなろう系を読むようになったかは分からない。だが、なろう系ばっかりを読んで頭が変になる前に普通の小説もマンガもちゃんと履修する事をお勧めする。
余計なお世話だとは思うのだが、実際問題オタクと呼ばれる人は別に「萌え~!」とか「女体化来たー!」とかを叫ぶ人の事では無かった。
そもそもオタクの定義とは「面白いと思った作品を論理的・体系的に語る事が出来る人々」の事であった。そして、そう言った古いオタクは既に殆ど死んでしまったのだ。
だから、年配のオタクは「あの作品を読め」とか「その作品を見る前にこちらの作品から見ておくように」といった指導をしていたものだ。かつては、自分も「好きな作品位自由に読ませろよ」と思った事もあった。
……だが、その人達の言う事は正しかった。物語を作る立場になると分かる。
アイデアと言うものは、勝手にポンと生まれるものではない。いろんなジャンルや作品を好き嫌いなく網羅して、きちんと自分の中でインプットしてあるから出てくるのだ。
よく創作論でありがちな「とにかく書け」とか「単語からお話を思い浮かべる」という説明がある。
だが、それが上手く行くのはきちんとインプットがされている場合だ。特に自分の好きなジャンルや作品だけしかインプットしていない場合は、どこかで見たような展開しか出てこない。
まだ、なろう系しか読んだことのない若い人がいるのなら、他の小説も読んでみると良いと思う。ジャンプだけでなく、ちょっと独特なセンスのある漫画などを見るのも良い。
思い切って古典とも呼べるような、古いアニメや漫画に目を通すのも良い経験になるだろう。
ともかく、作家の個性の大部分を占めるのはその「インプット」の質と量である。何でも良いから、知識を得るだけの為に色々と調べるのも良い。きっかけが何であろうとも、それは財産になりうる。
じゃあ、具体的に拙作で過去のインプットを活用した事例を説明しよう。
その物語では、ストーリーの根幹にあたる部分に「魔導石」と言うものを用意した。いわゆる魔法を使う時に必要な触媒みたいなものだ。
これが無いと、魔法を活用する事が困難になる位の扱いだ。当然、その取扱いは国際的な市場があって、品質や価値の付け方がある筈である。
……普通のなろう系なら「ウルトラレア級」だの「SSS級」だのと言った格付けを考えるのだろう。
だが、私には過去のインプットがあった。ここでダイヤの格付け方法を使おう、と。
ダイヤの格付けには「カラット:重さ」「カット:研磨」「カラー:色」「クラリティ:透明度」と言う四つの基準がある。
この中から「クラリティ:透明度」を使って「魔導石」の質を主人公に説明させたのだ。
さて、どうしてそんな物を知っているのか。FSS物語には、ファティマの格と強さと言うものがランクになっている。
そこでFSSの作者は、ダイヤの格付けというものをそのまま使ったのだ。ただの「A級」や「特級」では、納得が出来なかったのかもしれない。
……もちろんあの「永野護」と言う男は、そう言う説明を一切しないのだが。
もし「フーン」で済ましていれば、それを使うという発想にはならなかっただろう。FSS物語を読んで、興味を持ってネットで調べたのだ。
丁度、結婚指輪を買う事になったこともあって、別の方面で有用ではあったのだが。
ともかく、ダイヤの価値を決める様に「魔導石」を扱えば、リアリティが出ると思ったという事だ。
一事が万事、このような感じで各エピソードを出来るだけガッチリと説得力を持たせる為だけに使った。
それが良かったかどうかは分からないが、他にはない「作家の個性」にはなったと思う。
ゲームで学んだ帆船の種類で大航海時代をリアル体験させたり、普通はやらないであろう「オスマン帝国」の架空戦記をやったりした。
……他の人には真似できまい。これは30年以上、様々な作品に触れて思いついたアイデアなのだ。
それだけインプットがあるから、簡単にアウトプットが出来る。少なくとも物語の進め方で悩む事はあっても、アイデア不足で書けなくなった事は無い。
まとめになるが、やはり自分の好きなものばかりを選んで視野狭窄になるよりも、様々な作品をとりあえず触れてみるのをお勧めする。
なにより、作品を書く際のバックボーンとして話に奥行きが出る。どっかで聞いた事が有るような何か、と言うのは物語を読んでいても気が付く物だ……。
人間と言うものは、体験した事しか書く事が出来ない。小説や漫画、ゲームと言った娯楽作品は、体験しなくてもある程度の経験を学ぶ事が出来る。
架空戦記を書くならせめて歴史系の書籍を、ミステリーを書くなら古典推理小説を。SFやファンタジーを書くなら、そう言った古くから親しまれている作品を読んでおくのは必要な事なのだ。
もちろん、なろう系とは言え一応ライトノベルなのだから、そう言ったライトノベルの文法を学ぶために読んでおくことは必要だと思う。
特に最近のなろう系を読んでいて思うのだが、序盤の所に色々と詰め込み過ぎて読むのもままならない事が多々ある。まともに読む事も出来ない。
せめて、軽くで良いから世界観やら登場人物の説明はお願い。いや、設定集を付けろと言う意味ではない。ストーリーの中で、登場人物の会話から軽く触れる程度で良いのだ。
それすらも無く、いきなり放り出された世界観の中で戸惑う暇すらなく、当然の様に異世界に飛ばされても、読者的には困るのだ。
「普通の」ライトノベルを少しでも読んだ人なら絶対にしないであろう、序盤の世界観や構成をあらすじに書いて終わり! と言う作品が多すぎるのだ。
あれはいけない。作者的には全て知っているのだろうが、読者には理解出来ない。あらすじはあらすじであって、世界観の説明の場所ではない。
世界観やキャラクターの性格などと言うのは、登場人物から語らせなければいけない。特に何らかの形で文明が滅んだ後、みたいな状態ならなおさら。
登場人物がその世界観をどこまで理解しているかを伝えなければ、文明が滅んだ後どういう風に生きてきたのか、登場人物がどういうポジションにいるのか分からないではないか!
作者として一読者として、ああいう書き方は本当にやめて頂きたい。
それこそ、なろう系以外の小説をきちんとインプットして貰いたいのだ。
個人的にはジャンプ系しか出てこない、その批評で「ダイの大冒険」について語られていた事が衝撃的であった。レオナやマアムのお色気を楽しむもので、ダイについて感情移入出来ない、魔王軍側の方が魅力的だという内容であった。
馬鹿野郎! あれはポップに感情移入して、その成長とガキから大人になる事への苦悩を楽しむ作品だろ!! 何が批評だ、作品の内容を改竄するんじゃない! と言うか、ポップの存在意義ってエロ要員だと思っているのか? ふざけるな!
……結論ありきで書いているから、そんな基本的な事も無視して批評できるのだろう。
ああいう奴は、本当に信用できない。
※補足
あくまで個人の感想です……などと言うのが良いのかもしれません。ですが、私は謝らない。
それが私の提唱する「情報主義」の本質だからです。
当時、リアルタイムで読んだ私にとっては、あの物語の解釈はそれで間違っていなかった。当時は、そう言う世界だったのです。マスコミが言う価値観だけが本物だったから。
今、後から読んだ人が違う解釈をするのは、価値観が変わってしまったから。
それが「パラダイムシフト」なのです。皆が各々の情報を出し、各々が好きに受け取る。
人によっては、賛否あるでしょう。そんな個人が互いの情報で殴り合う。
今、この国はそう言う価値観で動いているのですよ。
情報で殴る資格のある奴は、情報で殴られる覚悟のある奴だけだ。
そして、私は情報で殴り合いがしたい。それこそが新しい価値観なのです。
さあさあ、こそこそ陰口を言っていないで感想やレビューを書いて下さい。お互いの価値観を情報にしましょう。そして、ぶん投げちゃいましょう!!
不特定多数の見ている所で、議論しましょう。きっと楽しいですよ、そう言う行為って。