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生き延びるためには食料だ。保存食を作ろう。

ともあれ、この状況で生き延びるためには様々な手を打たなくてはいけない。


 そのための最初の手を彼は取る事にした。まず最初にやるべきことは、人手……というよりは純粋な労働力である。




『とりあえず……人手が足りない!っていうか誰もいない!


 何もかも全部自分でやるのはつらい!!』




 とにもかくにも人手が足りない。自分ひとりで何もかも賄うのは手間暇がかかる。


 例えば獲物を狩ってきて、皮を剥いて、内臓を取って血抜きをして……などというのは面倒極まる作業である。


 わざわざ獲物を探し出して捕らえて、その後でそんな面倒な作業を行うのは非効率的すぎる。何とかこの点を改善しなければならない。




『確かにゴーレムは作り出すことはできるが、刃物とか持ってないしなぁ。


 獲物を捌くとかは不向きだよなぁ、どないしよ。』




 竜語魔術でゴーレムなどは生み出すことはできるが、残念ながらゴーレムは刃物などは持っていないので、獲物を捌くのは難しい。


 石を削り出して刃物にして持たせるというのもあるが、やはりすぐに刃物を持ってこちらの言うことを聞いてくれる使い魔などは欲しい。




『ううむ……そうだ。確か竜の牙からは竜牙兵が生えるんだっけ。


 それを労働力とすればいいんや。ではさっそく……。』




 そう言いながら、リュフトヒェンは自分の牙に手を添えるが、思わず突っ込み態勢に入ってしまう。




『っていちいち自分の牙を引き抜けるかーい!!そんなんしたら竜かて痛いわ!


 ん?そういえば昔ママンが生意気な竜を叩き潰して首を取ってきたような……。』




 そう言いながら、彼は自らの住処の洞窟内部へと戻る。


 元々、非常に巨大なエンシェントドラゴンが住まうこの洞窟は、山一個を丸々掘りぬいて構築されており、非常に広い。


 つまり、この山自体が一つのダンジョンとも言える竜の居住地なのである。


 その中を探し回った彼は、二つの白骨化した竜の頭骨を発見した。




 これは、彼が言う通り、彼の母親であるティフォーネが「我に逆らうとか生意気だ」という理由で滅ぼしてその首を狩り落としたエルダー級の竜の首である。


 どうやら彼の母親にはエンシェントドラゴンの風を司る竜のみならず暴風神としての側面があり、かなり気性の荒い竜だったらしい。


 そのため、気に入らない、こちらに喧嘩を売ってきた竜には喜々として戦い、これを滅ぼして縄張りを広げた……らしい。息子である自分もよくは知らないが。




『まあ、さすがに自分の子供にそんな気性を見せる親ではなかったのは幸いだったけど……。まあそれはともかく、これをありがたく使わせてもらおう。』




 そういう彼は、その竜の頭蓋骨の前にやってきて、竜の体で器用に両手を合わせると、首の骨に対してなむなむ、と念仏を唱える。まあ、竜の時点で念仏も成仏も何もないのだが、とりあえず気分という奴である。




『なむなむ、この牙はありがたく使わせてもらうでな。大人しく成仏しとき。


 この世界に成仏の概念ないと思うけど。』




 そう言いながら、彼は竜の骨から牙を残らず回収する。


 そして、そのまま洞窟の外へと出て、その牙を数個地面に落とすと、彼の知識通り武器を持ったスケルトン……竜牙兵が地面から出現した。




 ゴーレムと異なるのは、魔力を全く消費しない事、そして竜牙兵の手に武器、つまり刃物が自動的に装備されている事である。これはたいへん便利である。




『なるほど。……竜牙兵は魔力消耗がなくてただ撒くだけで生えてくる。ゴーレムは魔術を使って作り出すので魔力を消耗するという点が違うのか。


 竜牙兵の方が遥かに手軽だけど、生み出せる数に限りがあるのが問題か……。


 よし、とりあえず身の回りの事をしてもらおう。』




 竜牙兵はゴーレムと同じく、こちらのいう事を何でも聞いてくれる。


 しかも、ある程度なら自律機能もあるらしい。


 更に、手には武器……つまり刃物を持っているのは何ともありがたい。


 これを利用しない手はありえない。




 まずリュフトヒェンは、狩ってきたイノシシや鹿などを捌く作業を竜牙兵に命じる。いちいち彼自身が爪で皮を剥いで内蔵を取って……などというのは面倒くさすぎるからだ。


 せっかく刃物があるのだから、それを有効利用してもらうのは当然である。




 食事用に縄張り内で狩ってきたイノシシやら鹿やら何やらは、竜牙兵の手によってテキパキと内臓や皮を剥がされ、ただの肉の塊へと変わっていく。


 これは今まで自分の手で肉にしていた時より遥かに便利である。いわば、全自動調理器のようなものだ。(竜牙兵は全自動調理器にしては高価すぎるが)




『しかし今はいいけど、食料不足になった時の事は考えたくないな……。


 よし、余った肉で保存食作りをしよう。』




 さすがに洞窟内部で行うと煙臭いというレベルではないので、外部の木々を切り倒してその隙間を竜牙兵が取ってきた葉っぱやら何やらで埋めて、簡単な燻煙室のようなものを作り上げる。


 そして、ブナっぽい木の枝を拾い集め、それに魔術で火をつけて不完全燃焼で煙を出して肉を燻していく。


 当然の事ながら隙間だらけなので、煙がもうもうと逃げていくが、最終的に燻製できてりゃこまけぇ事はいいんだよ!な勢いである。




『食料保存と言えばやっぱり塩だな塩。岩塩がある場所を確保しておいて良かったわ……。』




 岩塩から取れた多量の塩を使い、竜牙兵がバラした肉を塩漬けにして保存用の塩漬け肉を作っていく。燻製肉と塩漬け肉さえあれば、食料保存の状況は大分改善するはずである。これで、彼の多数ある問題のうち一つはある程度解決したのだった。

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