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第15話 ダークドラゴン襲来



『すにゃぴすにゃぴ……。ああ、バブってオギャりてぇ……。ずっと平穏にまったり暮らしてぇ……。』




 朝早くすやすやと熟睡しているリュフトヒェンだったが、いきなり猛烈な魔力の波動に飛び起きる。




『ふみゃあっ!?何事やで!?』




 確認すると縄張り近くに植え込んだ鱗が激しい反応を示しているらしい。


 それは、つまり巨大な魔力を有する存在がその上を通ったという事。


 つまり、ダークドラゴンがついにこちらに侵攻してきた、という事である。


 慌てたリュフトヒェンは何とか洞窟から出ると、村に向かって咆哮を上げる。




『総員起床ー!!速やかに洞窟に避難する事!!敵ドラゴンがこちらに近づいているぞ!!』




 リュフトヒェンはそう村に対して叫ぶと、自分は洞窟から出て敵竜を迎撃するために飛翔する。これから強大な敵と正面切って戦う際に彼らを気遣う余裕などない。


 いつ戦闘になるかも分からない状況なので、仮想エンジンと円錐状の魔術障壁を瞬時に展開して、鱗を埋めた縄張りの境界地点へと飛翔する。




 そして、飛翔を続けた結果、こちらに接近してくる黒い飛翔体が視認できる距離まで来た。朝焼けの光に照らされた漆黒の竜。その姿は禍々しくも同時に神々しさを感じさせた。




 大気を引き裂きながら巡航状態でこちらに接近してくるリュフトヒェンに対して、向こうも気づいたのだろう。こちらは仮想エンジンを停止して滑空状態に、向こうは翼を使ってホバリング状態のまま魔術通話を使用して、漆黒の竜もこちらに対して話しかけてくる。




『ふん、あのクソ女の息子か。礼儀故一応は名乗っておこう。


 妾の名前はアーテル。誇り高きダークドラゴンの末裔であり、貴様の命を奪う者である。死ぬまでの短い間、妾の名前をとくと刻み込んでおくがいい。』




『……それはどうもご丁寧に。我の名前はリュフトヒェン。


 どうやら、ママン……もといウチの母上と因縁がおありのようだが?』




『ああ!あるとも!あのクソ女、『退屈だから玩具になってもらいます』などとほざいて妾に何度も襲い掛かってきおって……!妾が生き残るためにどれだけ苦労したと思ってるんじゃ!!その恨み、息子の貴様に払ってもらうぞ!!』




 ママーン!!何やっとるんじゃーい!!とリュフトヒェンは心の中で盛大に突っ込みを入れた。なるほど、確かに壊れない玩具扱いで襲い掛かってくるとなれば彼女の不満もよく分かる。というかこれは母親が全面的に悪い。許されるのなら土下座したいぐらいである。




『それは……何というかすまなかった。本当にすまない。こちらとしては許してほしいが……それでは気が済まないんだろう?』




『済むわけあるかボケ!貴様のそっ首を叩き切ってあのクソ女の前に突き付けてやるわ!そうすれば妾の気もすむであろうよ!生き延びたければ戦って勝利してみせろ!


 勝者こそが全てに優先される!竜族の掟よ!!』




 そう叫ぶと、彼女はホバリング体勢から戦闘態勢に移行する。もはやここに至っては戦うしかない。戦って生き残る。そして帰る。


 リュフトヒェンの行うべきことはそれだけである。


 リュフトヒェンは停止していた仮想エンジンに魔力を注ぎ込み再起動させ、アーテルはホバリング状態から飛行状態に移行する。




 ジェットエンジンなどと異なり、仮想エンジンはあくまで魔力の変換機。


 瞬時に魔力を推進力へと変換させ、水平に滑空状態だったリュフトヒェンの飛行が再開される。


 戦闘時に常に超音速でいるのは、魔力消費も激しいし、こちらから相手に対する狙いも付けづらい。猛烈な推進力によって亜音速に到達したリュフトヒェンは、そのままアーテルのさらに上空を旋回する。


 だが、これはアーテルにとって最大の挑発行為ともいえるものだった。




『こ、このクソガキぃ……!妾の上を行くじゃと……!?妾より速く飛ぶじゃと……!?ド許せぬ!!ブチ殺してその首をあの女の前に突き付けてくれるわ!!』




 空は我らの領土と考える竜族において、その上空を旋回する、相手の竜より速く飛行するというのは、最大限の挑発行為である。


 それを行うという事はその命を奪われても何ら文句は言えない。


 言うなれば宣戦布告行為にも等しい。




 リュフトヒェンは無意識ながらも、ダークドラゴンに対してそれを全て行ってしまったのである。それはマジ切れされても仕方ない。




 戦闘機の戦いはファーストルック・ファーストキル。


 遠方から真っ先に敵を発見し、その敵に攻撃を仕掛けた方が勝利する。


 だが、竜としての彼にフェイズドアレイレーダーなど存在するはずもない。


 魔力波を発信して敵を探知するレーダー魔術も開発中ではあるが、現状では目視の戦いとなる。


 つまり、簡単に言えば必然的にドッグファイトにならざるを得ない、という事である。




 機体……もとい、体を傾けてバンクさせ旋回するリュフトヒェンに対して、怒り狂ったアーテルが竜語魔術による攻撃を仕掛ける。


 アーテルの周囲に黒い光によって形成された黒球が出現し、そこからおよそ十もの漆黒のレーザーと言えるべき光が射出される。


 恐らく、暗黒魔術というよりは自らの魔力を直接収束・射出させて相手にぶつけるという戦法なのだろう。


 亜音速で朝焼けの空を飛行しながら、リュフトヒェンは体を傾けてさらにバンクさせてその光を回避しようとする。




『妾を舐めるなよ!クソガキが!!』




 ダークドラゴンが放った漆黒のレーザーは、今までと異なり高速で飛行するリュフトヒェンを追跡して追いすがっていく。


 それは、いわゆるホーミングレーザーにも等しい。


 恐らく、ただの攻撃魔術ではなく、敵の魔術波長を読み取って追跡する追跡魔術も併用されているのだろう。




『ッ!!』




 リュフトヒェンは速度を緩めると、自分の尻尾を自分の胴体にこすりつけて、剥がれた鱗を空中にばらまく。


 すると、空中に散らばってキラキラ光るその鱗に対してレーザーが反応して、あらぬ方向にレーザーが曲がっていく。そして、その鱗に当たったレーザーは目標に当たったと誤認し、天空に何十もの爆発する花火をまき散らす。




 これはつまり、自分の鱗を使用したチャフである。


 魔力波長を読み取って追跡するのなら、自分の鱗でもごまかせるのではないか、と判断した彼のとっさの案だったが旨くいったようである。




 だがそれでも完全に回避しきれずに、漆黒のレーザーが数発リュフトヒェンに命中してしまう。


 とっさに防護結界を張って軽減させ、さらに鱗の防御力もあってダメージはそれほどでもないが、明らかなダメージを受けたことは事実である。




 さらに分かっていた事だが、リュフトヒェンの戦い方はふつうの竜より遥かに魔力消費が激しい。予想はしていたが激しい空中戦を行いながら体内の魔力がガリガリ減っていくのは予想以上につらいものがある。




 リュフトヒェンは攻撃を受けたのを利用して、わざと多大なダメージを受けた振りをして速度を低下させる。


 その苦しみを間近で見るために接近してくるダークドラゴンに対して、竜語魔術を使用して数十もの雷球を作り出し、そこから発生した数十もの雷を一気にダークドラゴンに叩きつける。




『小賢しいと言ったはずじゃ!』




 その雷を防御結界で全て防ぎきるアーテル。戦いはまだ始まったばかりである。

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