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Page 01 クビ通告の召喚士

それは酒場での突然の宣告だった。


「悪いがジル、お前は今日をもってこの攻略メンバーから外れてもらう。」


<ジル>。それがたった今クビを宣告された僕の名前だ。歳は十七。僕は今まで<召喚士>として、<カボ>と名付けたカーバンクルと共に、ダンジョンを攻略する味方の支援をしてきた。

支援といっても味方と共にモンスターを攻撃する、といったような役割ではない。僕が召喚するカーバンクルは他人を強化するのが主な役割なんだ。


カボは戦う彼らに対して強化魔法を掛ける。すると、対象の身体能力は大きく上昇する。そうすることでモンスターとの戦いをもっと有利に進めることが可能になるんだ。


カボはとても可愛く、お利口なカーバンクルだ。初めて魔導書から召喚した時は中々僕に懐いてはくれなかったが今では自分によく懐いてくれている。世界で一番大好きな存在がカボ。早くして両親を亡くした自分にとっては大切な友達だ。


いつどんな状況で誰に対し、どんな魔法を掛けると効果的か、それを考えてカボに指示するのは僕の役割だ。攻撃をもっと鋭くしたいのなら攻撃力や魔力を高める魔法を、敵の攻撃で味方が傷つきそうなら防御力を高める魔法を、というように臨機応変に命令を与える事で味方はよりモンスターと戦いやすくなる。そうすることで僕たちはいくつかのダンジョンを攻略してきた。だが……


「お前のカーバンクルの魔法はほとんど効果が無いじゃないか!俺達が数々の難関を潜り抜けてきたのは俺達の実力によるものだ。お前のカーバンクルはちっとも役に立ってない。」


そう言い放つのは僕が共にダンジョンを攻略してきたメンバーのリーダー格を務める<ネオス>。

大柄な彼は常に前衛の<戦士>を担当しており、モンスターと最前線で戦ってきた。もちろん彼に対しても強化魔法を掛けている。でも彼は自分の力を過信しているのだ。


「そうさ、別にお前もカーバンクルも大した働きはしていない。強くなった実感がほとんど感じられないのだからな。」


ネオスに同調して言葉を続けるのは同じく前衛を務めている<ロビン>。

ズオスよりは少し小柄な体格であるが前衛を務めるには十分ではある。彼の役割は<騎士>。剣を使いつつも回復も可能、そんな感じだ。


「別に貴方がいなくなったところで私たちの戦力が変わる事はないわ。」


さらに続くのは自分を含めた4人の中の唯一の女性である<アリア>。

後衛を務めており、持った杖を使い火球や氷柱を出すことでモンスターを攻撃する<魔法使い>だ。

彼らに対して僕は反論する。


「違う!僕のカーバンクルはちゃんと君たちに対して魔法を掛けて、確かに君たちの能力を強化しているんだ!これは紛れもない事実のはずだ!」


「じゃあどうして今俺達が攻略しているダンジョンのモンスターに対して中々歯が立たないんだ?」


何故かって?そんな事は決まっている。彼らが弱いからだ。

彼らは三人とも少し前までは見習いの、いわゆる<Fランク>の冒険者だった。リーダーのネオスですらFランク最弱のモンスターといわれる<ゴブリン>に対してはほとんど歯が立たないぐらいの弱さだった。

でもそんなメンバーに誘われた僕がカボに命令し強化魔法を掛ける事で彼らはモンスターと戦えるまでに強くなり、いくつかのダンジョンを攻略するまでに至った。


しかし彼らの強さはあくまで状況に応じたカボへの指示と、カボによる強化魔法によるもののはず。彼らは強化魔法の掛かった自分をあたかも自分の実力だと勘違いしているんだ。

ゴブリンを倒せるようになったのもネオス達は武器を新調したからだと未だに信じている。僕がいて初めてモンスターを倒せるようになったのにこれである。


現に僕たちは今攻略している<Dランクダンジョン>である<オルビスの洞窟>の攻略に未だ至っていない。というかまだ入り口付近にも関わらず苦戦しているのだ。

元々は<Fランクダンジョン>から攻略していき、少しずつ経験を積んでいくことでFランク、Eランク、Dランク……といった風にキャリアアップしていくのが普通だ。


しかしまだ冒険者としての経験が浅いにも関わらず今僕たちはDランクダンジョンに何故か来ている。それは何故か?ネオスの鶴の一声ってやつだ。「Fランクダンジョンを余裕で攻略できるんだから、Eランクを飛ばしてDランクまで行けるだろう!」という浅い考えによるもので自分達は今この状況に陥ってしまっている。

当然Fランクダンジョンを余裕で攻略できるのも自分の補佐あってのことだ。なのに自分が弱いのを自覚しようとしない。


僕もまだ召喚士としてはまだ未熟な方だから人の事は言えないのは分かってる。でも流石に限度がある!現に今僕はオルビスの洞窟を攻略できない事への責任を何故かいっぺんに負わされているのだ。

少し前まではゴブリンにすら苦戦してたのにもうDランクのダンジョンに行こうなんていう考えを持ち出すのはあまりにも無謀すぎる。


「俺達はDランクダンジョンでやっていく器がある!でもジル、お前とお前のカーバンクルが役に立たないせいで俺達は今こうやって立ち往生しているんだよ。分かるか?」


「違う!ちゃんともっと弱いモンスターのいるダンジョンで経験を積んでから攻略を進める方がいいはずだ!」


「何言ってるの?私たちはもう十分強いわよ。貴方を除いてね。」


だがいくら説得したところでネオス達の頭には入らない。いや、入るはずもない。ネオス達は決して僕の言葉には何一つ耳を貸さないのだから。彼らは自分達の実力を信じてやまない。でもそれはあくまで自分とカボのサポートあってのものだ。

それを断じて認めようとしないネオス達にはずっとついていっていた。それは何故かって?ずっと頑張って彼らをサポートし続けていればいずれは自分とカボの事を認めてもらえると信じてきたからだ。でもそれは無駄だったという事がとうとうはっきりした。


「お前が弱いのを認めやがれ!お前と他の強い奴を入れ替えれば俺達はオルビスの洞窟なんざ簡単にクリアできるんだよ!」


「そうよ。貴方がネオスの強さに見合う訳がないもの。」


「お前に分配する報酬など無駄でしかない。」


ネオス、アリア、ロビンから口々に発せられる罵倒の言葉を聞くたびにうんざりする。自分の実力を見誤って自分に対して態度を大きくする三人には嫌気しかささない。僕が直接戦闘には参加せずバッファーとして働いているからってあまりにも酷い仕打ちだ。

怒りを募らせる僕に対しネオスはさらに口を開く。


「もう一度はっきり言わせてもらう。お前もペットも何の役にも立たないにも関わらず報酬だけは一丁前に貰っているから目障りなんだよ。お前達はクビだ!」


僕がネオスから分配される報酬は他の三人よりもずっと少ないものだ。なのにこの言い分である。

それを受けてとうとう自分も怒りが頂点に達した。こんなリーダーに自分はついていけない。ネオスに対抗するように自分も彼に対して吐き捨てる。


「僕をクビにしたからって後悔しても知らないぞ!」


「お前をクビにする事で後悔する?ハハッ!面白い冗談じゃないか。お前なんていらないお荷物なのによぉ!」


「確かに後悔するかもしれないな。お前なんて早いうちに切り捨てておけば良かったと。」


ロビンも彼に対し同調する。リーダーがリーダーならメンバーもメンバーだ。こんな奴らに僕はこれ以上ついていこうと思わない。誰がついていくものか。


「もういいさ、お前達にはうんざりだ!喜んでクビになるよ。」


僕はそう言うと荷物をまとめ酒場から出ていく準備を始めた。ふと顔を上げるとこれ以上見たくもないネオスのにやにやした顔が目に入る。気持ち悪いったらありゃしない。

荷物をまとめて立ち上がるとネオスが口を開く。


「それじゃあ今日をもってお前とはさよならだ。餞別にこれでも受け取ってくれや。」


そう言うとネオスは小袋を自分の方へと投げ渡した。僕は渋々それを掴む。


「精々頑張れよ!モンスターに出くわしてお前のペットちゃん共々食われないようにな!ハハハハハ!」


僕をあざ笑うネオスの言葉に僕は応えず、酒場を後にした。ネオスが投げ渡した小袋の中を見ると数枚の銅貨と見慣れない小さな小箱が入っていた。でもネオスの事だ。どうせ小箱の中にも大したものは入っていないだろう。

自分の力を過信した者は遅かれ早かれ、いずれは哀れな末路を辿るんだ。きっとそうに決まってるさ。例えば、今僕をクビにしたアイツらのように……。


カバンに入っていた魔導書を取り出して軽く念じるとそこからカボが現れた。小さなカボの姿を見るとすごく落ち着く。僕の唯一の心の拠り所だから。

僕は可愛らしいカボを優しくなでると力強くカボに対してこう言った。


「いつか一緒に見返してやろう!そうだろ?カボ。」


カボはその自分の言葉に応えるように小さく「きゅう」と鳴いた。

そう、僕らの旅はまだまだ始まったばかりなんだ。

ここまで御覧いただくなんて!ありがとうございます('ω'*)

初投稿なんで分からない事ばかりなんですが評価?して頂いたり感想だったり書いていただけるとめっちゃ嬉しいと思います!(まだ一話なんで書く感想も無いとは思いますが…)

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