6:雲。
thx
「それにしても暑いな。ムシムシしてる。
だが、悪くはない。俺は冬より夏のほうが好きだしな」
俺は額にしたる汗を服で拭く。時々俺の髪を少し揺らしてくる風がこれまた心地よい。
「ここはこんだけ晴れてるのに向こうは黒い雲だらけだな。これ明日ぐらいに流れてきそうだな」
ここがこれだけ雲一つないのにあそこに雲があることで快晴とは言えないことに少し悔しさを覚えた。
日光に気が済むまであたった俺はまずホテルを借り、風呂に入った。
ポイントはたくさんあるので普段いかないような少し高めのホテルだ。家を買うのもいいかもしれないが流石に家は買えないだろうとあきらめた。
「やはり風呂はいいな~疲れが吹っ飛ぶ。それに当たり前だけどここの風呂俺の家のより広いな。」
俺は浴槽の上にボタンを見つけた。俺は試しに押してみる。
「おお~!赤色に光った!面白れえ。大富豪になった気分だ!」
もう一度ボタンを押すとオレンジに光った。
「もしかしたら!」
やはり予想通りだ。今度は黄色に光った。この浴槽は虹の色の順番に光るみたいだ。
俺は調子に乗ってボタンを押しまくっていると湯船に浸かり過ぎてしまい、のぼせてしまった。フラフラした俺はベッドに寝ることにした。
目を覚まし、時刻を確認するともう夜おそくになっていた。
「結構寝ちまったな~。お腹も空いたしそろそろ飯を食いに行くか」
貧乏舌な俺は無難に飲み屋に向かう。飲み屋の中はたくさんの人がいた。やはり今朝の1万人が効いたのだろうか、騒いでる奴は一人もいない。だがこれがずっと続くとは思えないな。
俺は肉や酒を思う存分平らげた。だがポイントは全然減らない。でもポイントの手に入れにくさから考えたらこれが妥当だよな。
「すみません〜」
追加で頼んだデザートを食べていると急に後ろから声をかけられた。女性の声だ。振り返ると顔立ちが整っている俺と同じぐらいであろう女性が立っていた。どちらかというと可愛いより綺麗系だ。ぶっちゃけると俺は可愛い系のほうが好きなん……失礼なのでここらへんで止めておこう。
「どうしましたか?」
「すいません、いきなり声をかけて。良ければ私のクランに入りませんか?」
「クラン?ああ、クラン戦のやつか」
俺がそう聞くとその女性は微笑みながら答えてきた。
「そうです、それです。クラン戦はクランごとで戦うんですよ」
チーム的なやつだよな。存在は知っていたが内容は知らないな。そういえば時間がなくてソロ戦のルールしか見てなかったしな。
「申し訳ないけど詳しく教えてもらえないか?」
「分かりました!説明させていただきますね?
ご存じの通りソロ戦は名前の通り一人で戦うモードですが、クラン戦は複数人数で戦うモードで、クランに入らないと出来ません。
つまり、このゲームをクリアするにはクランに入ることが欠かせないのです!
また、クラン戦で得たポイントはチームで分けることが出来ます。もちろんクランに入っていればソロ戦期間内でもできますよ?ですから、弱くてもポイントを安定的に得ることが出来るんですよ。ポイントに関してはリーダーが管理するんです。
どうでしょう。魅力的ですよね?入りませんか?」
「俺なんかが入っていいのか?」
俺はお世辞にもうまいとは言えない。認めたくはないが……足手まといにならないだろうか。
「大丈夫ですよ!私たちメンバーを探していたので!是非是非です!」
そう言うことか。わざわざ声をかけてくれてるんだしメンバーが足りないなら断る理由がないな。
「わかった。入らせてもらうことにするよ。」
その女性は飛びはねて喜んでいる。これはこれでいいかも……?
「ありがとうございます!それではライフウォッチで登録をお願いします!」
俺は言われたとおりに操作する。俺は機械の操作が得意じゃないからな。
「よし、完了です!私はこれから予定があるので、今日はお暇させてもらいます!じゃあ、明日からよろしくお願いしますね!」
「また明日~」
俺は女性に手を振る。すると女性も笑顔で返してきた。気のせいか女性の頬は少し赤みを帯びているように見えた。
俺はこれはこれでいい綺麗な女性がいるクランに入った。喜んでいいのだろうか。仲間が増えたんだからいいよな。
「よし、明日から頑張るか!」
俺は、明日に備えて寝ることにした。