098 最近の話、八極拳の伝系と教え方
今回、
『実名を書いた方が分かりやすいけど、どうしようか?』
と悩みました。
内容は技術的な話ではなく、
師伝・伝系的な話であり、
相手を別段非難する内容でも無く、
ただ放っておくと行き違いで諍いにらならんでもない‥‥
そんな為に少々『フォロー』を入れて置いた方が良いのではないか?
と思いました。
話はYoutubeの武術動画になります。
動画になっている人は、
互いに普通に顔出しで身分や連絡先なども公開している人物ですが、
一応、片方は相手を断定せずに言葉を濁していたので、
取り敢えずその当人お二人については仮名にして、
参考文献の作者や伝系の師範や老師などは名前を書いておこうと考えます。
まず、ネタ元になった動画は、
ある空手家が、
流派や会派を超えて色々な武術を体験していく内容のシリーズ動画で、
その中で、とある日本人の中国武術家を訪ねた時の動画になります。
そこで、空手家の人は、
中国武術家のMH師範から技を体験することになり、
その武術が八極拳となった時点で、
その動画を見た馬氏の系統の八極拳を修めているM師範は、
「小架が武壇系なのに、大架が山東国術館系になっている。何故系統が違うのだ?」
と疑問を表していました。
これに関しては、
一つ、心当たりがあります。
(果たして正解かどうかは分からない)
技術云々に関しては、
師匠より、公の場での一切の批判や反論は禁止されていますが、
今回はあくまでも、
師伝、系統に関する疑問に対する見解なので、
ぼかさずとも良いだろうと書いて行きます。
この現象(?)は、
八極拳の師匠が、
『古い武壇系の教え方』をしている場合、起きる可能性があります。
MH師範に八極拳を教えた師匠も、古い時期の武壇系八極拳を修めている人物かもしれない、
と言う事です。
MH師範が自分の師匠と言明している方は、
温 敬銘老師で流派は『綿拳』ですが、
別に『古い時期の武壇系の八極拳』の師匠にも就いていたと考えられます。
私の通っている武術教室の生徒の一人に、
昔、『松田隆智師範の最初期の弟子の一人』の開いていた教室に通っていた人がいます。
その人から聞いた話ですが、
初期の松田隆智師範の八極拳の教える套路は、
①八趙拳(『ちょう』の字がありません、本来なら右の字は尚)
②小八極(武壇での小架式の呼び方)
③八極連環拳
この三つであったとの事。
大八極(武壇での大架式の呼び方)と六大開が省略されています。
理由としては、
『大八極と六大開で学ぶべきものは八極連環拳に全て入っているから習う必要がない』
と言う事だそうな。
だから、
大架式は他の系統のものを習って補完するか、
ある程度時期が過ぎてから、
後の時期の別の武壇系の師範に習うかする形になります。
因みに、同じく松田隆智師範の最初期の弟子の中でも一番の有名人である、
山田英司師範の著書、
『八極拳と秘伝―武術家・松田隆智の教え 拝師弟子だった著者のみが知る「素顔」と「技」 (BUDO‐RABOOKS)』
の207ページにて、
八極連環拳について、
「武壇の大八極は、すべてこの套路に含まれているから、大八極は必要ない、というのが当時の松田先生の考えだった」
とあります。
(六大開については、八極連環拳の説明自体が、六大開を繋げて作った套路とありますので連環拳を教えるなら最初から省略して当然です)
おそらく松田隆智師範の考えではなく、師匠(劉老師や蘇老師)の教えだったと予想します。
日本人は、先人が習った事を、
とにかく一切変えずに伝える民族であるから、
忠実に老師の教えを守っていたのだと思われます。
でもって、この書籍にある套路は、
上記のものと同じであり、
大八極と六大開の套路は、
写真紹介を『省略』してあります。
この辺り、妄想&想像でありますが、
ひょっとしたら、
山田英司師範も、大八極と六大開は、松田隆智師範からは習っていない可能性もあります。
松田隆智師範以外の武壇系の師範から輸入する‥‥例えば台湾武壇まで『出張』した兄弟弟子などに習わせて、
戻って来たらみんなでシェアしたとかの可能性とかもあるかも知れません。
写真からでも、
見える人は、松田隆智師範の伝えた套路か、
他の人の伝えた套路かなどは分かるものであり、
だから写真を載せなかったとか妄想して見ました。
さて、有名人でもう一人、
同じだろうと考えられる人物がいます。
台湾で俳優を兼業している、
『衛子雲師範(本名は周寶富師範)』
です。
昔の師範のホームページを見たましが、
武壇の徐紀老師の名前を出していたので、
間違いなく徐紀老師の弟子だと思われます。
で、彼は八極拳の教則DVDを出版しているのですが、
小架は武壇系小八極、
大架は山東国術館系、
でもって最後に武壇八極連環拳、
やっぱり大架式は別系統のものです。
小架(小八極)の套路は、
徐紀老師が現在出版している八極拳のDVDの『八極架』と比べて、
簡素化されていない武壇の古い小八極であるので、
衛子雲師範が、徐紀老師に就いていたのはかなり初期だと考えらます。
つまりは、
大架(武壇大八極)や六大開は、
初期の徐紀老師も省略していたと見て間違いないでしょう。
MH師範がおかしな八極拳の習い方をしたのではなく、
彼の武壇系の師匠が、そういう教え方をした、
そしてそれは古い時期の武壇系八極拳の、
ちゃんとした教え方だった、
という訳です。




