094 太極拳 陰陽理論
套路の練習。
閃通背-掩手捶-抱虎帰山-単鞭-雲手。
K先輩に師匠が一言。
「お前、動きの質が螳螂拳になってるぞ」
K先輩、苦笑い。
実は先日、螳螂拳についての意見を師匠に述べて、
正解が出たばかり。
師匠は「やっとここまで来たか」
と言った。
『扉を開けた』先輩でも、扉の先に待っているのは、
長い長い階段。
あのレベルまで解って楽しいから、
螳螂拳ばかりやっているのだろう。
師匠「asada、お前の場合は手の出し方が、翻子拳の開門式になってるから」
‥‥‥‥‥‥‥‥
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はい、その通りですっ(泣)
実は、順番を忘れないように、そればっかりでした。
師匠のとってもナイスな指摘。
というか、そんなに如実に出るものだろうかと驚く。
練習会以外に師匠とは会っていない。
(もちろんK先輩も)
私がK先輩を見ても質の違い、なぞわからない。
しかし、指摘がそのものズバリ。
K先輩は『質』が螳螂拳だし、
私は『型』が翻子拳だし。
やはり、何かを見ているのであろう。
(今に始まったことではないが、何時までも慣れる事の無いはなしであったりする)
そのしばし後、説明があった。
太極図の陰と陽。
決して交わらない、そして、二つがなければ世界が確立しないという概念。
師匠「太極拳を確立させるためには、『太極拳が無い』状態を確立させねばならない」
私「‥‥‥‥‥‥‥‥」
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‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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師匠「‥‥‥‥解らないみたいだな、じゃあ、今から俺が套路をやるから」
と言って、立つ
起勢式-金剛搗捶-懶紮衣-抱虎帰山-単鞭
太極拳である。
師匠「次、太極拳がない状態」
起勢式-金剛搗捶-懶紮衣-抱虎帰山-単鞭
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
おや?
同じ順番なのに、
迫力が、『無い』
美しさが『無い』
あれでは武術として人を殺せ『無い』
師匠「これが、太極拳が『無い』状態、わかるか?」
中身が-無い
師匠「中身が螳螂拳でもない、中身が八極拳でもない、『太極拳が無い』、
正しくこれが理解できないと駄目。中身が別の物になっているというのは、別の物が『ある』状態。
『無い』が出来ていない。無いがちゃんと出来なければ、太極拳として有り得ない。」
だからこそ、師匠を見る。
師匠を観察する。
師匠の所に習いに来て、師匠の生徒となったからには、
太極拳は師匠だから。
自分の中には、太極拳以外のものがある。
その情報を見つけだして、
自分をフォーマットして、
師匠から情報を正しくコピーするしかない。
自分の持っているものは違うのだと、
自分の間違いを正しく見つけて、
そこからはじめるしかない。
師匠を見なければ、コピーは出来ない。
自分の中に、別の物が存在している以上、太極拳にならない。
『拳児』に憧れて武術を習いに来た。
だが、そこで自分の中にあるのは、『拳児武術』
二次元の、紙の上のファンタジー。
現実には、たった一発殴られて終わりの虚構。
正しく、自分の中から虚構を追い出して、
そこにいる師匠をきちんと見なければならない。
そのための方法論は、観察。
自分がどれだけものを見ていないかを知ること。
正しく現実世界を見つめさせるために、かつて師匠は、
飲んでいたお茶のコップを目の前に突き出した。
師匠「これは、何だ?」
生徒「?‥‥‥‥コップです」
師匠「これは、コップではない」
無いを知る為に。
自分が無知であることに気付くために。




