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武術覚書  作者: asada11112
94/187

094 太極拳 陰陽理論

套路の練習。

閃通背-掩手捶-抱虎帰山-単鞭-雲手。


K先輩に師匠が一言。

「お前、動きの質が螳螂拳になってるぞ」


K先輩、苦笑い。

実は先日、螳螂拳についての意見を師匠に述べて、

正解が出たばかり。

師匠は「やっとここまで来たか」

と言った。

『扉を開けた』先輩でも、扉の先に待っているのは、

長い長い階段。


あのレベルまで解って楽しいから、

螳螂拳ばかりやっているのだろう。


師匠「asada、お前の場合は手の出し方が、翻子拳の開門式になってるから」


‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

はい、その通りですっ(泣)


実は、順番を忘れないように、そればっかりでした。

師匠のとってもナイスな指摘。


というか、そんなに如実に出るものだろうかと驚く。

練習会以外に師匠とは会っていない。

(もちろんK先輩も)

私がK先輩を見ても質の違い、なぞわからない。


しかし、指摘がそのものズバリ。

K先輩は『質』が螳螂拳だし、

私は『型』が翻子拳だし。


やはり、何かを見ているのであろう。

(今に始まったことではないが、何時までも慣れる事の無いはなしであったりする)



そのしばし後、説明があった。

太極図の陰と陽。

決して交わらない、そして、二つがなければ世界が確立しないという概念。


師匠「太極拳を確立させるためには、『太極拳が無い』状態を確立させねばならない」


私「‥‥‥‥‥‥‥‥」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

?????????



師匠「‥‥‥‥解らないみたいだな、じゃあ、今から俺が套路をやるから」

と言って、立つ


起勢式-金剛搗捶-懶紮衣-抱虎帰山-単鞭

太極拳である。


師匠「次、太極拳がない状態」

起勢式-金剛搗捶-懶紮衣-抱虎帰山-単鞭

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

おや?


同じ順番なのに、

迫力が、『無い』

美しさが『無い』

あれでは武術として人を殺せ『無い』


師匠「これが、太極拳が『無い』状態、わかるか?」


中身が-無い


師匠「中身が螳螂拳でもない、中身が八極拳でもない、『太極拳が無い』、

正しくこれが理解できないと駄目。中身が別の物になっているというのは、別の物が『ある』状態。

『無い』が出来ていない。無いがちゃんと出来なければ、太極拳として有り得ない。」


だからこそ、師匠を見る。

師匠を観察する。

師匠の所に習いに来て、師匠の生徒となったからには、

太極拳は師匠だから。


自分の中には、太極拳以外のものがある。

その情報を見つけだして、

自分をフォーマットして、

師匠から情報を正しくコピーするしかない。

自分の持っているものは違うのだと、

自分の間違いを正しく見つけて、

そこからはじめるしかない。


師匠を見なければ、コピーは出来ない。

自分の中に、別の物が存在している以上、太極拳にならない。

『拳児』に憧れて武術を習いに来た。


だが、そこで自分の中にあるのは、『拳児武術』

二次元の、紙の上のファンタジー。

現実には、たった一発殴られて終わりの虚構。


正しく、自分の中から虚構を追い出して、

そこにいる師匠をきちんと見なければならない。


そのための方法論は、観察。

自分がどれだけものを見ていないかを知ること。

正しく現実世界を見つめさせるために、かつて師匠は、

飲んでいたお茶のコップを目の前に突き出した。

師匠「これは、何だ?」

生徒「?‥‥‥‥コップです」

師匠「これは、コップではない」

無いを知る為に。


自分が無知であることに気付くために。


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