054 運び屋
運び屋
これは主に師匠が霊能者と仲良くなり、
ちょくちょく練習会に遊びに来る様になってから起きた内容である。
練習会が終わって、真夜中の公園で集まってだべり合いをしている時に、
霊能者が一人の生徒(A)に言った。
霊能者「君の頭の上に何か乗ってる」
との事。
その生徒Aは、休日に旅行で京都のある寺院に行ったとの事。
霊能者「黒い蛇‥‥いや、龍だね
これは」
生徒A「旅行から帰ったら、物凄く身体が重いのですが」
霊能者「でしょうね」
生徒A「取れないのですか?」
霊能者「これは神仏が何らかの意図で乗っかったものだから、その意図に沿わないと離れてくれないよ」
との事。
霊能者「これから貴方が行く何処かに関係している筈だから調べてみて」
生徒Aは、家に帰ると、
『黒龍』と自分の以後の予定、京都で立ち寄った寺院の事を調べた。
翌週の練習会後のだべり、
生徒「7月に練習会の合宿で長野県の◯×村に行きますよね」
師匠「そうだね。」
生徒「そこの練習会場のすぐ側に『黒体龍王』の住む沢があり、祠もあるそうです」
霊能者「ああ、それで正解みたいです」
で、7月。
武術合宿になり、
◯×村に辿り着くと、そのまま黒体龍王の住むと言われる沢の祠に行く、
みんなで祠を拝む。
霊能者「うん、ちゃんと離れて沢に入った」
との事で、生徒Aの『運び屋』としての役割は終了した。
暫くの間、毎年の夏に同じ所で合宿を行うついでに黒体龍王の住む沢に様子を見に行くのだが、
順調に龍王は成長して行って、
霊能者が沢の中に見られる大岩を指差して、
霊能者「あれが龍王の胴体の一部分だよ」
と教えてくれた。
さてその後、生徒Aがより詳しい理由を見つけた。
長野県◯×村の黒体龍王の祠であるが、
生徒Aの立ち寄った京都の寺院にて、
数年に一度、◯×村から使者を寺院に送り、
黒体龍王を勧請してその沢まで運び入れる儀式をやつていたそうである。
村の過疎化でその儀式が行われなくなって久しく。
生徒Aの寺院への立ち寄りは丁度良い運び屋の来訪となったとの事。
生徒A「これでこちらには何かのメリットはありますか?」
霊能者「何もないよ〜、せいぜいあの世に行く時に三途の川の渡し舟の先頭に乗せてもらうぐらいかな〜」
私が運び屋をやってみたいと言うと、
霊能者「自分でやりたいと言う人間は却って選ばれない、やりたくないと言う人の所にくる。」
との事。
そしてその通りに、
私は『やりたくない運び屋』
を刀剣絡みで行う事になった。
(せっかく買ったばかりの剣を安く売ってしまい、損害は20万円ほどに)
命には変えられないけれど。




