002 風使い
風使い-と言っても魔法ではないー
風使い-というと、まるでRPGの様で格好いいが、
芸事に関わる話。
RPGを思い出して題名にしたが、
実際は力学。
電波と思われても困るので説明。
要は運動の質と言うことになる。
それも、超精密機械並の。
ただ、手を振り降ろすだけの動作、
誰がやっても変わらない、
あくまで見た目は。
しかし、質の上で、
師匠のそれと、生徒のそれとは、
圧倒的に異なる。
ティッシュペーパーを一枚、
1㎝角に切り取り、
真ん中から90度に折る、
横から見てL字型の形を作る。
畳の稽古場に置く。
それに手を振り下ろす動きで仰ぐ。
手の平から風が起きて、
ティッシュが動く。
生徒がやると、
その小さな紙片はパタパタと大きく動く。
師匠がやると、
紙片はただ一度、ぱったりと動く。
」の紙がLに90度。
ころりん。
生徒がやると、
ころころ、ふわり、するするする。
師匠の手からは、
あおいで出た風が、
手先から出る風が、
その風量が完全にコントロールされる。
即ち、
仰ぐ動作の質が圧倒的に異なる。
質の違いを可能にするのは、
『意』
つまりイメージ。
それは身体に纏い付く空気。
身体を巻く風。
それを意識することで、
外見が同じでも、
完全に質の異なった動きを可能とする。
だからこその、風使い。
日本の居合術においては、
『鞘の中から風が鳴る』
と言われたり、
『剣風』
などと言われる。
超精密な動きは風により産まれる。
運動を導くための、先人の努力の結晶。
本当は、説明なぞ要らない。
こんな解釈も不要。
師匠が風と言ったら風。
そんな世界。
ただ、芸事の紛う事なき『技術』を、
電波だとバカにされたくないと思った私の、
無駄な説明。