018 隠す技術
老師留一歩
『老師留一歩』
という言葉が中国武術に有ります。
日本武術では似たような事例として、
A道のS師範が師匠の膝の動きを観察して極意を得たというエピソードがあります。
(袴で膝の動きを隠しているという事)
中国武術はズボンを履いており、膝の動きを隠す事が出来ない。
それが故に歩法そのものを隠すと云う事です。
外観からは解らないように套路の中に隠して伝えられている技法を、
『隠蔵式』
と呼ぶそうです。
先日の練習会では歩法の隠蔵式を一例、教えてもらいました。
これもまた、師匠が生徒の動きを見ていて、
何故自分の真似をして動いている筈の生徒が、
自分のように出来ないのか、何が自分と生徒では違うのかを調べていて気がついたとの事です。
(師匠の場合、套路をやっていて無意識に出来ようになっていたそうです。)
しかし、師匠からは一つの問題点が提示された……。
それは、
『その歩法の名前が解らない』
隠蔵式として秘密にされている為、
当然の事ながら、何処にも名前が載っていない。
私「隠蔵式だから‥‥隠歩、はまずいですねー」
師匠「当たり前だっての」
もう一つ隠されているのは、
肘の動き。
元々、中国武術の技の『六合を合わせる』の中には、
外三合(手先と足先を同じタイミングで動かし、肘と膝を同じタイミングで動かし、股関節と肩関節を同じタイミングで動かす)がある。
その為、日本で言うところの膝を隠すと同じく、
肘も隠さなければならない。
螳螂拳の上級套路は『八肘拳』
八極拳は上級套路に『六肘頭』がある。
カタパルト
拳足の速度を上げる為に、
皆んなが考えるのはカタパルト方式、
胴体のスピードの上に拳足のスピードを重ねれば速くなるんじゃないかと『皆んな』考える。
こう書いたという事は、
この方式では上手くいかないという事である。
実際に対人訓練で、その方式を試しても、
容易く相手の拳足を止めることができる。
相手もこちらの拳足を簡単に防ぎ切る。
師匠より、
人体の構造上カタパルト方式は速くならないとの事。
別の方式を師匠から習う。
対人訓練にて、
こちらだと相手の拳足を防ぎ切れない事が多くなる。
こちらからやっても、相手は防ぎ漏らす事が多くなった。
理由は
師匠「分からん」
との事。
タイミングはかなりシビアである。