172 武術の諸事情
172 武術の諸事情
前回の3話分の投稿時に、
幾つか関連した八極拳動画において感じられる『諸事情』が有ったのでついでに。
まずは、
「韓化臣系八極拳・韓隆泉伝 小架式 呂寶春老師」
について。
初めてこの動画を見た時は、
タイトルに「八極拳 小架式」とだけ書かれていた。
師匠はこの動画が気になったらしく、
掲示板に『この動画の人は誰か分かりますか?』
と、書いた。
結局分からず、
それから私が暫く八極拳の動画探しをしているうちに、
その動画のヌシが『呂寶春老師』であると書いてあるホームページが見つかった。
そこから、
改めて私が題名と詳細を書いてYoutubeに上げた。
その時に調べた呂老師の経歴に引っ掛かったことが一つ。
『韓隆泉老師に韓化臣系の八極拳を習い、
張旭初老師に李洛能派の形意拳を習う』
と有った。
‥‥‥‥おや、確か張旭初老師って、
李書文八極拳の張立堂派の伝承者ではなかったか?、
呂老師は韓化臣の八極拳なのだが、
何故に李書文八極拳の伝承者に形意拳を?、
と思っていた。
で、前回の投稿時に最近の大陸の李書文八極拳の動画に『異端の使い方』をしている人がいないかと探していたら、
(そもそも私には見えないので判別しようがないが、
それっぽい雰囲気の動画を片っ端から師匠に見せたらと思って、
探していた)
偶々、別のホームページで、
呂寶春老師が韓化臣八極拳の他に、
張旭初老師に李書文八極拳(張立堂派)を習っていた記事が有った。
‥‥‥‥‥何故にこっちには書いてあるのか?。
また後日、
師匠に
「何故呂寶春老師が気になったのですか?」
と尋ねたら、
師匠「套路の部分ゞに李書文系の使い方してたところが有ったから」
との事。
張旭初老師の事を話すと、
師匠「あ、そういう事ね。納得した」
と言われた。
(だから何故それが観える?)
でもって思い出したのが、
李書文八極拳張立堂派の小架、
詳細はここの『141話』に書いたが、
劉氏八極拳と張立堂派でしか、
小架の第一頂肘の前に蹬脚をやらない。
そこに大きな発見があると思った。
ここからは以前は書いていない話であるが、
張立堂派八極拳の小架の動画を、
当時の練習会の中で、
師匠に次ぐNo.2 の実力を持つ『K田先輩』に見てもらった。
その時に、予想外の事を聞いた。
K田「頂肘の前に形意拳の龍形やってる!」
であった。
こと武術を観る目は、K田先輩は、
私よりも遙かに信用できる。
しかも生徒の中で一番八極拳が上手い。
私が劉氏小八極の蹬脚と同じだと思っていたものを、
K田先輩は、形意拳の龍形だと判断したのである。
『張旭初老師は呂寶春老師に、李洛能派形意拳を教えた』
もしかして、
張立堂八極拳の小架の部分は、
元は更に劉氏八極拳の小架に近かったのかもしれない、
張旭初老師がその部分に形意拳の龍形を当てはめたのではないか?、
(これも断定は出来ない。)
師匠がつい2〜3ヶ月程前に、
劉氏八極拳の、
提籠換歩からの衝捶の説明で、
師匠「この中に捨身法が入る、こんな感じで、
多分この技は形意拳の崩拳の対策たと思う、
パズルのピースでもハマる様に、
形意拳の崩拳に対して上手く機能する」
と言っていた。
拳児で李書文が劉月侠に、
形意拳の郭雲深の逸話を話したシーンがあり、
それがもし本当に李書文が劉雲樵にそう話した事がモデルになっているのであれば、
張立堂の八極拳に元から形意拳の龍形が入っている可能性もある。
ちなみに、141話の所でも書いたが、
Jさんの張立堂派八極拳の師匠である『陳項老師』は、
もとはJさんに八極拳の系統を教えず、
他の人に八極拳を見せない様に厳命していた。
私が師匠に
『陳項老師を知っているか?』
と尋ねたら、
師匠「知っているけど、
その人は陳式太極拳の馮士強老師の高弟だったはず。
八極拳をやっていたと言うのは聞いていない」
と言われた。
当時、Youtubeに『陳項老師の陳式混元太極拳』の動画が有ったので、
Jさんにそのアドレスをメールで送って尋ねると、
確かにその陳項老師がJさんの八極拳の師匠だと言う。
師匠「途中で馮士強老師の混元太極拳に鞍替えしてしまい、
そちらを名乗っていたから、
張立堂派の面子を潰さない様に配慮していた為ではないか?」
と当時師匠は推測していた。
今思い出して考えて見ると、
Jさんが陳項老師から習った八極拳を厳しく秘密にするよう命じられていたのと、
張世忠老師が許家福より習った八極拳を秘密にするように命じられていた事の私の仮説は、
近しいと感じる。
なお、
陳頃老師の今の弟子が、
混元八極拳として小架の動画を上げているが、
張立堂派八極拳の特徴である、
『両拳を前に出しての蹬脚』
の部分はカットされていた。
(この部分をカットした場合、通常の羅疃八極拳と区別が付かない。)




