153 マインド・意念−③、師匠の言葉
153 マインド・意念−③、師匠の言葉
さて、前回は身体への意識を捨てて、
武器を味方につける事で、
武器の持つ『自然の法則』を使い、
武術的に相手より優位に立つ方法論を書いたが、
次が、武術の師匠が教える事を、
どうやったら弟子の身体で実現出来るかと言う事について書いていきたい。
これは、師匠が言う、
「俺の言った通りにやれ」
のただ一言につきるらしい。
で、たった一言だと思うなかれ!、
これには幾つもの添付された意味があるらしい、
(なお、これは只今自分が絶賛試行中の事なので要領を得ないかも知れないがご理解いただきたい。)
師匠の言った通りにする。
これをどうやら、
『普通に思っているのと段違いのレベルでやらないといけない』
らしい。
例えば、
ある姿勢で相手に左手を押さえて貰う。
相手は両手で全体重を乗せて私の左手の掌を押さえる。
普通なら左手は上がらない。
両手対片手なので当たり前である。
それに対して、私は右手である場所に文字を書く。
師匠「右手でシャープペンを持ってるつもりで平仮名の『あ』の字を書け」
すると、
私は左手を全体重を乗せている相手ごと持ち上げる事が出来た。
文字は、元々が『象形文字』であり、
森羅万象の自然を表すものとして使われた。
甲骨文字は、
占いで動物の骨や亀の甲羅を焼いた時に出来る線を神のお告げとして、
その線を神の言葉
つまりは大自然の象徴として人間は捉えていた。
つまり文字=自然、
文字を書く事も『自然』であり、
武術として使えば相手はそれに従うという事。
さて、これを実践するに当たり、
師匠から生徒に幾つかのダメ出しが出た。
師匠「お前、いま何やった?」
生徒A「はい、言われた通りに平仮名を書きました」
師匠「違う!、お前が書いたのは『い』の字だ!」
生徒A「???」
師匠「俺はわざわざ研究して『あ』の字が、直線も、曲線も、円形も、全部兼ね備えた一番効果的な文字として見つけたから『あ』の字を書けと言ったんだ、何故俺の言ったことと違う事をする!」
師匠が『あ』の字を書けと言ったら『あ』の字を書かなければいけない。
それを何故わざわざ生徒が勝手判断で違う文字を書くのか?、
それは『師匠の言った通り』ではない。
師匠「こら待て!、お前は何をしている!」
生徒B「はい、ちゃんと『あ』の字を書こうと‥‥」
師匠「違う!、それは書道の筆で書く動きだ!、おれは『シャープペンで』と言った!、何故お前らは師匠の言葉をそこまで蔑ろにする?」
皆、結構師匠の下に就いてから長い。
それなのにこの様な間違いをする。
師匠「‥‥お前、俺が言った事を復唱してみろ」
生徒C「手で文字を書くんですよね?」
師匠「違う!、俺は『右手でシャープペンを持ってるつもりで平仮名の『あ』の字を書け』と言った!、一言一句変えるな!」
師匠の言った言葉を言い換えない。
自分の解釈をしない。
師匠の言った通りの事を一字一句変えずに復唱する。
師匠「あのなぁ、お前らの脳から出る指令で俺の動きをやるのは『絶対に不可能』なんだよ!、
唯一、俺の動きをお前らが『出来る』様にするのは、
『俺の言った通りにする』事なんだ!、
俺はお前らの脳に向けて、
俺の動きが出来るためのプログラムをずっと考えて、
お前らの脳に向けてプログラムを入力しようとして、
言葉を出している。
それをお前らが余計な事を考えるから、
プログラムが変わって出来なくなるんだ」
出来れば、脳内で師匠の言葉を再生して、師匠の声色、師匠のテンポ、師匠の抑揚で正確に再現する。
当然、言葉の一言一句を変えてはならない。
師匠「俺の言葉以外は何も考えるな、あとは自分の思考を一切入れずに動け」
それを実行して、
師匠の言葉以外をできる限り排除して、
師匠が構えているミットを目掛けて打つ。
そして3週間目に、
ようやく、良しが出た。
師匠「良し、3点!」
因みに今まではゼロかマイナスであった。
しかし、
それが分かっても、
出来ない事がとても沢山ある。
今までの人生で積もった自分の経験による解釈が、
無意識レベルで『師匠の言葉』に邪魔をする。
それを悩みながら排除する事に試行錯誤を繰り返している。




