129 暗勁の実験台になった話。
暗勁の実験台になった話。
先日、師匠の暗勁の練習、と言うか実験に付き合った。
人体に打つのは初めてと言う事。
普通に食らうのは命が幾つあっても足りないので、
キックミットを手に持って腕を伸ばして胸から離した位置で構えて、
そのミットに軽く打つと言う方法でやった。
師匠は拳をミットに着けて、
軽く動く。
次の瞬間ーーー、
グニョリ、と異様な感触と共に、
異常な曲がり方をするミット。
上体が吹っ飛ばされ、
足が置いてけぼりになり、
ヤバい!、
と思った次の瞬間、
床に尻を、壁に後頭部を思いっきりぶつけて転がる。
慌てて同僚と師匠が近づく。
師匠「すまん!、大丈夫か?」
私 「し、尻がものすごく痛いです‥‥」
寝たまま答える私。
同僚「頭打ってなかったか?」
私 「頭は痛く有りません、尻です、右の尻が‥‥」
師匠「悪かった。まさかあんな事になるとは全く予想出来なかった‥‥10%ぐらいの力で打ったんだが」
暫くして、尻は相変わらず痛いままだが、
なんとか起きられるようになる。
起きて上記の感想及び感触を伝えると、
師匠「そんな悠長なスピードじゃ無かったぞ?、物凄い速さでコケて行ったぞ」
との事。
しかし、確かに見て感じた事である。
師匠「ひょっとして、食らった瞬間に走馬灯が走ったんじゃ無いのか?」
と言われる。
その後、師匠は、
別の日の練習会で、
他の練習生に、
今度は後ろで受け止める人を待機させて打って実験。
やっぱり同じようにコケていったが、
練習生は皆、
「一瞬であっという間に飛ばされた」
と言っていたそうで、
どうやら私は走馬灯状態‥‥以前書いた、
『040 『領域』(ゾーン)』
の状態に入っていたっぽい。
ちなみに三週間ほど、
尻の打撲の痛みで胡座がかけなかったし、
寝る時も右を下にすると痛くて眠れなかった。
しかし、師匠に言わせると、
あれだけの勢いで尻の真ん中から落ちたら背骨とか骨折していたかも知れないと言う事で、
まだ不幸中の幸いだったのかもしれない。
(密かにここのネタになるとも、思ったり)
なお師匠はその時、
『やっちまった!、業務上過失致死か?!』
と思った程だったらしい。
それは置いといて、
やり方の説明を受けた。
以前B壇系のS老師が秘伝誌に書いた、
『一腕・一肘・寸腕(一拳)』
の中の『一肘』のやり方だそうである。
(因みにあれはもう出来ている人には分かり、出来ない人にはサッパリ分からない表現にしてあるらしい)
一応、書いてあったのは、
一腕(肩から拳先迄の距離)の打ち方、
一肘(肘から拳先迄の距離)の打ち方、
寸腕(一拳‥‥手首から拳先迄の距離)の打ち方がある。
寸腕の距離で一肘の打ち方をすると透過勁となる、
と言う記事。
寸腕は『一拳』と言った方が分かりやすいのだが、わざと寸腕と書いているのは何か意図があるのだろうか?
読んでもサッパリだと思う。
私も意味が分からなかった。
師匠は、八卦掌をやっていて気が付いたそうである。
何を意味しているか?、
これは、
『伸筋抜骨の第二段階』の事であるそうな。
①『一拳』の範囲(つまり、指〜手首にかけて)で伸筋抜骨の第二段階が出来れば、『長勁〜尺勁』が使える。
即ち、基本的な衝捶で発勁を使う事が出来る。
長砲遠撃の発勁。
相手の所に遠距離から飛び込んで打つ、螳螂拳等が得意とする。
②『一肘』の範囲で伸筋抜骨の第二段階が出来れば、『尺勁〜寸勁』が出来る。
(約30センチ〜10センチの距離で発勁が出来る)
B壇のR老師の衝捶は八極拳でありながら、形意拳の崩拳に近いのは、
『一肘』の打ち方を衝捶でやっている為と師匠の説明有り。
③『一腕』の範囲で伸筋抜骨の第二段階が出来れば、『寸勁〜分勁』(暗勁)が出来る。
(10センチ〜0センチの距離で打てる)
因みに『一腕』の打ち方では長勁は打てない。




