117 滄州の田舎道を考える
八極拳の練習会の日。
道場での準備運動、
右をみれば、馬歩している。
左をみれば、頂肘の練習をしている。
そして、向こうをみると、
K先輩が、
てくてくと、
ただ、歩いている。
てくてく、
てくてく、
てくてく、
てくてく、
旋風脚で、蹴った右足で着地できる身の軽さ、
飛檐走壁で壁を4歩駆け上がるバネを持つK先輩が、
ただひたすら。
てくてく、
てくてく、
てくてく、
てくてく、
静かに、まるで老人のように小さな歩幅で歩いている。
唐突に、私の頭の中に浮かぶ情景。
私「師匠、なんだか滄州の田舎道を歩いている老人みたいですね?」
師「あれかい?、平起平落という歩き方で、Kは足首が堅いから、歩幅が大きく取れないんだ」
多分、武術をやっている人間なら感じる、なんとなく『こわい』歩き方。
というか、
『じじいみたいな歩き方』
は、武術的にやばいのが『定説』(?)
師「ちなみに寒鶏歩はこう」
たったったっ、
たったったっ、
たったったっ、
私もまねして、
たったったっ、
たったったっ、
たったったっ、
師「一応、俺が習ったのは後ろ足の踵があがっている。」
たったったっ、
たったったっ、
たったったっ、
気が付くと、
生徒がみんな、
たったったっ、
たったったっ、
たったったっ、
小ガモの様に師匠の後を付いていく。
師「心意六合拳はこのまま足をあげて」
だん!
生徒も、
だん!
だん!
だん!
K先輩はとてもやりやすそうにしている。
師「Kのように、足首の堅い人間に向いている使い方やね」
ちなみにこの寒鶏歩も、
姿勢を高くして、
歩幅を小さくすれば、
田舎道を歩いていればあまり目立たない。
道場内が、滄州の田舎道になった。
生徒たちは農民になった。
ふと思い出して、
私は、李書分の伝説をまねて、
『八極拳の衝捶』をやってみた。
K「なんか、浮いてるなあ……」
私「ですよねえ……」
K「熊歩とか中心にして歩いてて、時々思い出したように衝捶してたってことかな?」




