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「それでも君が気になっているのは、音のことと言うからには、カセットテープに何かがあるのではないか、ということか」

 マダムが言った。

「ええ、そうなんです。僕も後夜祭でのBの顔を見てなかったら、悲しいことではあるけれど、ただの事故だと思うのです。でもBのあの顔を見て、Bが渡したカセットテープの音楽を聞きながら事故に遭ったのは、本当に偶然かなあと」

「でも警察が聞いて、異常は感じられなかったんでしょう?だったらねえ」

「ええ、ですから、音楽で人を殺すことなんてできるのでしょうか?それも百人が聞いて九十九人が、千人が聞いて九百九十九人が何とも思わず、特定の人だけを殺すことができる曲があるのかなぁと、気になっているんです」

 マダムが呆れた顔をした。でも仕方がないんだ、マダムだけでなく世界中の誰もが気にとめないようなことでも、気になってしまうと振り払うことができないのが僕の考えや行動の基準なんだ。


「条件が上手く揃えば、不可能ではないかもしれません」

 黙って聞いていた彼の言葉に、僕もマダムも固まる。そして

「それ、いつ頃です?」

 ずっと黙って話を聞いていた“専門家”の言葉である。

「あ、いつ頃って、何年頃です?」

 え?そこなの?という顔をマダムはした。

「受験の年ですから1992年です。入学試験や卒業や大学入学は年が明けて93年ですけど」

「それが関係するんですか?」とマダム。


 その人はようやくお酒に口を付け、一口飲んでから話し始めた。

「私はA君もB君もマドンナさんもどんな人なのか知りませんし、その歩道橋がどんな歩道橋なのかも解りません。ですからお話し頂いたことに関しては、〝解らない〟としか言いようがありません。けどお話しを伺いまして、思い出すことがあります。これは私が実際に体験したことで、私の話です。それがこの件に通じるものがあるのかないのか、それは解りません。それでもよろしいでしょうか?」

「ええ、よろしいもなにも、お願いします」

 もともとはただ聞いてもらえればいいと思っていたんだ。マダムの案件を解決したこの人が、どんなことを言い出すのか、そりゃ聞きたい。マダムもにやりと笑って聞く気満々だ。小走りでもう一杯用意しに行った。

 マダムが戻ってくるのを待って、話が続く。

「ええと、私は「前置きが長い!」とよく言われるのでなるべく手短に済ませますが、まずコンピューターの歴史というものがありましてね」

 何を言い出すんだこの人。

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