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昔話:上下の上

 僕の高校生活は絵に描いたようなというか、物語の常道のような毎日でしてね、頭脳明晰、容姿端麗、性格温厚、正義をこよなく愛する男子高校生の生徒会長Aと、少し斜に構えていて物事を俯瞰で見て、適切な助言をする、これまた男子高校生の副会長Bのコンビを中心にした生徒会があって、お嬢様のマドンナがいて、全校生徒が学業に励みながら面白い毎日を過ごせるよう活躍する一団がいたんです。悪人は、いません。

 物語と微妙に違うのは、僕はその一団のレギュラーメンバーではなくて、Bの幼馴染みで、家で彼の愚痴を聞く役回りなんです。

 別に、実はBがAを嫌がっていたってことはありません。

 視野を広く持って見るべきものを取りこぼしていないか気にするBだからこそ、冷静な判断ができる第三者に意見を求める必要を感じ、その役目に僕を選んだんです。万が一Bが判断を誤ったら、被害が拡大してしまいますからね、念には念を入れるということで。

 その流れで普段BがAやみんなに見せない顔を見ていたんですけど、Bはいい奴なんです。誰かを嫌っていたとか陥れようなんてことを考える奴じゃ、ないんです。

 だから僕もそういう話に普通に接するというか、相づちを打つことはあっても、意見を言うことなんて滅多にありません。Bはぼやきながら考えをまとめているだけで、相手がぬいぐるみじゃしっくりこないから僕に語っていただけなんだと思います。

 でもまあ呪いの言葉でも嫌悪の言葉でもなく「仕方がないよなぁ」という言葉だったんで聞くのは楽しかったですし、直接会うことが少ない生徒会やマドンナがどんな人か、Bがどんな人だと見ているのかが解って、面白かったです。

 Aとマドンナは別に恋愛関係ではないし、お互い好みではないからいい友人関係だとか、マドンナの取り巻きはどういう人達で、どんな性格だとか。

 そして聞いているうちに、どうやらBはマドンナの取り巻きの一人が好きなんじゃないか、という気がしてきました。

 その子は控えめで、見た目は地味だけど読書好きで知性や教養があってマドンナが迷うときにぽそっと一言助言をする、マドンナがその助言を受け入れたら問題は劇的に解決するのだけど、聞き逃してしまうと解決にとても遠回りをしてしまうことになる、しかしあまりに自然な助言なので、マドンナのグループ全員がその子の力に気がついてないようだ、等々。

 B自身が気がついてない熱い説明に、へーと思ってそれからのBの行動を見ていると、そう思ってしまうからなのかもしれませんが、Bのその子を見る目が他の人のときと違うように見えてしまうんです。

 でも毎日は穏やかに過ぎ去っていきました。

 あの日までは。


 いや、何か劇的なことがあったわけではありません、学園ドラマの一コマがあっただけです。

 文化祭がありましてね、あ、僕たちは三年生です、文化祭が終わりまして、体育館で後夜祭が始まりました。全校生徒参加のダンスパーティーが始まったんですよ。

 さっきも言いましたとおり、Aとマドンナは恋人でもなんでもありませんし、思い人でもありません、普通の友人です。

 そこでAは、マドンナとその取り巻き一人一人と、ダンスをしたんですよ。

 時間にしてみれば一人当たり五分とかそんなものでしょうか、Aにしてみれば文化祭を成功させるために協力してくれたみんなに感謝の意を伝えるために、一人一人と踊ったんです。マドンナだって五分くらいです。

 女の子たち、みんな喜んでましてね…Bが思いを寄せていた女の子も喜んでました。

 ええ、この子は本当はこんなに可愛い子だったのか!と解る、満面の笑みを浮かべていまして。

 へー、人は見かけによらないな、と思って、なんとはなしにBを見てみましたら…いやー、怖い顔してましたよ。別に怒りの表情を浮かべていたわけじゃありません、無表情の怖さです。Bもまたスポーツ全般をこなしていましたが、ダンスだけはダメだったんです。それも“近寄りたくもない!”って感じで避けるほどに。

 もちろん僕の思い過ごしかもしれません、他の人は誰も気がついていないようでした。といってもみんなAの見事な踊りっぷり、エスコートぶりに目を奪われて、周囲を見回すことなんて忘れてしまっていたでしょうし、Bもまた僕が見ていたなんて気がついていません。その子の笑顔を無表情で見ていました。

 …ええ、公平に言えば、全部僕の考えすぎで、別にBはその子のことを何とも思っていないのかもしれない、その子がAと踊って嬉しそうだったのは確かですが、Bはその光景を見て何も思わなかったのかもしれない、そうかもしれないことは考えておかないとダメでしょう、それは解りますけどね。

 後夜祭が終わって、いつもの日常に戻りました。

 Aは次のイベントに向かって全校生徒の幸せのために奔走しますし、Bは他の生徒会メンバーとともにそんなAを支える毎日です。僕が聞かされる愚痴も今までと何の変わりもありません、このまま面白おかしい毎日が続いて、僕は生徒会の人達とも、一般生徒とも違う立場で毎日を送って卒業するんだろうなぁと思っていましたら、Aが死んだんです。

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