四ノ話 たった一度だけの優しさ
「ふう、ここんとこ妖怪が多くなっているな。討伐を楽しめるから良いけど。さてと、ここの山からで───」
キャリン
「ここは妖怪の山、あなたのような人間が来れる場所ではありません。あなたは何者ですか。」
「その刃物を鞘に収めてくれたら、答えてやる。」
「いやですね。あなたのような人がここに何回も来ている事は分かっています。ですが、最初は見逃していました。」
「だったら、今回も見逃せばいいんじゃないの?」
「そうする訳にはいけません。あなたは見た感じですが、かなりの力を持っているようです。なので、ここは決闘といきましょう。あなたが勝てば今までやっていた事は目を瞑ってあげます。」
「俺が負けた場合は?」
「ここで死んでもらいます。」
「ほう、勝つ気満々ってところかな、魔力のオーラが大きくなった所を見て。」
「いきます!スペルカード発動 剣符『五つの剣』!!」
「ふーん、どんな物かな。」
弾幕が近づき、目の前に来たところで避けた。
そしたら、俺がいた所に弾幕は通り過ぎ、もう一度上昇し始めた。
「へえ、追尾型の弾幕か。」
「どうですか。私の自信作の弾幕なんです。」
「確かに、しつこいね。だけどしつこい奴は嫌われるぞ!」
俺は剣型の弾幕を太刀で払いのけた。
「は?なんで払い除けられたのですか。そんな容易く弾けないはず。」
「そう、君が言う通り普通の人なら妖刀でも無理だ。力が違いすぎるからね。でも、」
「まさかあなたは能力者!」
「そのまさかだよ。3つの力と4つの能力を持っている。」
「お前、魔力、妖力、霊力の3つの力と4つの能力を持っているとかあり得ない。」
「あり得るからここに俺が存在するんだよ。」
はあ、説明するの疲れたわ。
「もうそろそろ決闘に戻ろうか。」
俺は太刀をもう1つ出し、決闘の準備をした。
「スペルカード発動!!刀符『ファイアフォール』」
このスペルカードはその名の通り、火属性の広範囲攻撃をする事が可能で、地面に落ちれば水のように跳ね返り、周りにいる敵を倒すこともできる。
それでこの女は致命傷を負ったようだな。
キャリン
「死ぬのは怖いか?」
「別に怖くはない!ただ残機が減るだけだ。」
「怖くないなら、涙は出ないはずだがな。」
「ええ?でも構わないわ。」
「だったら、悪く思うなよ。」
俺は太刀を一つ大きく振りかぶった。
泣いている女に振るおうとした瞬間、何故か、誰かの泣き顔と重なった。
それは幼馴染みの泣いた顔だった。
「やめだ。」
カシャン
俺は太刀を鞘に戻した。
「えっ?」
そして、その女を優しく抱いて髪を撫でた。
「やめだって言ったんだ。分からなかったか?」
「えっ?」
「ちょっと聞きたい事がある。お前のケガの手当てもしてやるから、近くに小屋とかないか?」
「それなら、近くに私の家があります。」
「そうか、じゃあ、ちょっと腕を貸せ。」
「えっ?あっはい。」
「よし、飛ぶぞ。」
「えっそれってどういうこ────っ!」
女がそれを言い終わる前に二人は空の上に居た。